メディアグランプリ

忙しくないリモートワークは、老後生活のリハーサル


 
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記事:えみちゃん(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
私は今年の8月まで自宅勤務の会社員をしていた。いわゆるリモートワーカーだ。会社は東京にあり、私の勤務地は地方都市の自宅である。9時から18時のみなし労働だか、仕事量はほとんどなく、勤務管理もなく、ほぼほぼ自由気ままな毎日だった。社内会議もほとんどなく、なんにも縛りのない状況である。
 
そういう環境を知人に話すと、必ず羨ましがられた。私も在宅勤務に切り替わった当初は、なんて極楽な毎日なんだ、理想的な日々だと、喜んでいた。というのも、以前の会社では、残業は当たり前であり、出社時間も朝からと、人生の大半は会社で過ごすというごく一般的な会社員スタイルだったからである。その当時は、会社に出てくる必要性はあまり感じず、リモートで仕事をすることを切に望んでいた。
 
朝きまった時間に出社するのも辛く、特に私の住む地域では冬場は雪がつもり、寒い日に出かけると思うだけで憂鬱な気分だった。職場に行っても、私の仕事は誰かと話し合うという必要がないもので、黙々と作業をするため、職場の存在意義は何なんだろうかと疑問に思っていた。
 
実際リモートでの仕事は、もちろん出社の必要はなく、気分転換にカフェなどでも仕事ができ、なんなら旅行先でも業務内容をしていたら会社的に問題ないという、環境への制限がほとんどなかった。
 
とはいえ、リモートでの仕事開始当初は、環境に自由が与えられたということに対して、何故か罪悪感を抱き、神経質なほど丁寧な仕事をして、会社に対して努力していますPRをしたいた。しかし、そういった罪悪感は日を追うごとに薄まったようで、怠惰な生活になっていった。
 
怠惰な生活、つまりネットサーフィンばかりする生活になっていった。ただただぼーっとネット見て、ときにワイドショーや、平日午後のサスペンスドラマの再放送を楽しみ、そうしているうちに、夕方の情報番組が始まり、おわるとともに就業時間が終了する。このような生活は、たまの休みならばリラックスできるのかもしれないが、それが日々続くとなると、終わりのない毎日に感じられ、気分がどんどんふさぎがちになっていった。
 
会社へ出社していた時は、仕事で直接関係しなくとも、同僚との会話があった。会話といっても上司の悪口や社内の噂話など当時はくだらなさや、周りと調子をあわせる煩わしさも感じていた。しかしいざひとりで自宅で仕事するとなると、社内での連絡はチャットやで業務内容のみとなる。自宅で作業している私は、誰とも話すことなく日々が終わっていく。これもリモート当初は全く気にならなかったが、半年経過したころには、孤立感が強まり、寂しさが募り不安までになるほどだった。
 
当時私は会社以外のコミュニティには属しておらず、それほど仲の良い友だちもおらず、家族とも疎遠であり、人間関係から切り離されているようだった。出社していたころは煩わしさでしかなかった人間関係は、会社が終わり帰宅しひとりの時間によってリセットされ、また出社するというサイクルで回っていたように思う。意味がないと感じ悩みの種であった人とのつながりはとても大切な要素であったことにはじめて気づいた。この時私は、まるでサラリーマンリタイア後の老後の生活に入ったような気分になった。もちろん全てではないが、テンプレ的に流布されている、会社以外に人間関係がなく、退職後時間を持て余すサラリーマンである。実際にそういう人がいるかどうかわからないが、それはさておき、とにかく仕事以外に人とのつながりと生きがいをみつける必要があると思った。
 
そこで私はまずスポーツクラブの会員となった。ほぼ毎日エアロビやヨガなどレッスンを受けた。身体も動かし、同じ空間に多くの人とご一緒し、知り合いも増え、心地よい時間をすごし、なんとなくの充実感があった。しかし、なんとなくそれだけでは満たされない気分で、お茶、長唄三味線、囲碁などの習い事や、婚活などやってみた。どれもそこそこ楽しかったが、やはり私にはライフワーク的な生きがいが必要な気がした。
 
出社して仕事していたときは、平日はほぼ仕事に費やされ、それをこなすことに達成感や充実感があったように思う。そのため、休日はオフとして自分の時間を楽しむことに専念できていた。しかし、リモートワークにより仕事はそれほどなく、オンオフが曖昧な状態となり、一体自分が何をしたいのか、どこに向かっているのか人生の迷子に陥った。生きがいや展望を失うことで、無気力状態にもなっていった。未だに人生の迷子状態であるが、忙しくない類のリモートワークを通じて、仕事をしない生活という老後生活のリハーサルをしたような気がしている。人生100年だとすれば、先の長い人生。もっと自分自身を知って、充実した日々を過ごしたいと思う。
 
 
 
 
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2019-09-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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