メディアグランプリ

小さな頃の体験からの大切なギフト


 
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事 野村光恵(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
クライアントさんと電話でミーティングをしている時に
「おばあちゃんは、ご存命?」
と聞かれ、祖母の写真とほおづきを見ながら、小さな頃のことを思い出していた。
 
私の幼少期。祖母のいない家族旅行の写真から、笑顔が消えてしまうほど、祖母と一緒だと私は幸せだった。
 
子どもの頃に両親が共働きで忙しく、あまり一緒に遊んだ記憶がない。
そのかわりに一緒に暮らしていた祖母が、毎日遊んでくれていた。
 
幼少期は、祖母と過ごした楽しかった思い出で溢れている。
 
4歳か5歳ぐらいの頃、祖母が親戚の家に泊まり行っていて
しばらく会えないのを寂しく思い、母には「公園で遊んでくる」と言って、そのまま祖母に会いに出かけたこともある。
 
それは、小さな女の子にとっては大冒険。
子どもが歩いたら30分ぐらいかかる駅まで出かけ、そこから電車を乗り継いで1時間ほどの親戚の家に居る祖母に会いに行く。
 
今思い返せば切符のいらない年齢だったのに、
一人で電車に乗るために切符売り場で、背伸びをしながら切符を買う。
 
唯一、覚えている駅の名前をそばにいた大人に伝えると、すごく親切に案内をしてくれて安心できた。
 
人生ではじめて一人で電車に乗ってようやくたどり着いた親戚の家。
駅にたどり着いた時には、喜びで駆け出す。
早く会いたいにも関わらず「そうだ、お土産買おう!」と思って、祖母がいつも吸っているタバコを1箱、自動販売機で買った。
 
ずっと会いたくて、ようやく会うことができた祖母にタバコを渡す。
 
「お父さんたちは?」と聞かれ
「一人で来た」
と言っても、なかなか信じてもらえない。
 
だけど、本当に一人で来たとわかった時に、
親戚のおばちゃんが気を利かせて、自分が迎えに行ったとかばってくれた。
 
車でしか行ったことのない親戚の家に、電車でたどり着けるなんて両親も信じられず、一体誰が本当のことを言っているのかわからず不機嫌な父。
怒られないように……叔母さんが嘘をついてくれたにも関わらず、
父からはゲンコツをもらった。それでも、私は祖母と一緒で幸せだった。
 
祖母との遊びは、
折り紙、編み物、ミシンで縫い物、お菓子づくり……
 
ほおづきでも、よく遊んだ。
丁寧に柔らかく揉みほぐして、中身を取り出し、笛にする。
なかなかうまくいかず、何度も挑戦していて出来た時はとても嬉しかった。
 
たくさんの折り紙で『くす玉』を作った。
それを部屋に飾ったり、誰かにプレゼントしていた。
 
大好きな祖母とも、小学校の高学年になる頃、別々に暮らすようになる。
「作ること」が好きなことになっていたから、中学では衣装をデザインして制作し、高校の入学祝いはミシンを買ってもらった。
 
ときどき、祖母に会いに行くと、必ず小さな私の冒険物語を嬉しそうに語っていた。
祖母の人生にとっても、忘れられない出来事だったのだなぁ…とちょっと自慢でもあった。
 
私の生活の中心が仕事一色になってしまっていた頃に、
大好きだった祖母の危篤の連絡が入った。
 
仕事ばかりしていて、あまりに会いに行かなかった自分を後悔した。
今できる限りの時間を使い一緒にいたいと思い、
調整できる全ての予定をキャンセルし、ほとんどの時間を病室で過ごした。
 
意識のない祖母。手や足をさする。
寝たきりでいても、意識が戻った時にまた歩けるようにと祈りながら。
 
そして、病室では折り紙で『くす玉』をたくさん作った。
静かな病室で、黙々と手を動かしている時間……
ずっと頭の中は仕事のことで忙しく、焦りを感じる日々だったのに。
手を動かし続ける時間は、不思議と心が落ち着いた。
 
折り紙をしながら、子ども時代のことをよく思い出していた。
お見舞いに来る親戚たちと久しぶりに会うと、
相変わらず私の冒険の話が出てきた。
 
私は、どうしてもほおづきが大好きな祖母に見せてあげたかった。
あまり病室から離れたくなかったけど、浅草のほおづき市に行き、ほおづきを枕元に飾る。
 
そして、その日が祖母との永遠のお別れの日になった。
 
あれから、もう8年。
毎年のように、必ずほおづきを祖母の写真のそばに飾っている。



電話で祖母が存命かと聞かれて、
「残念ですが、もう亡くなっています。」と伝えた。
 
「生きていらっしゃったら、
小さい頃どんな遊びをしていたかを聞きたかった」
 
それは、私の情報処理の量と記憶力に驚かれて、
どうやったらそういう脳になるのかに興味を持たれての言葉だった。
 
そのクライアントさんは、
乳幼児期の遊びで、お子様の能力が最大限に発揮できる育児法を伝えている。
 
幼少期の脳は、スポンジのように吸収していき、
3歳までに人の脳の80%が完成するとも言われている。
 
お子様が夢中になって、やり遂げることで達成感を味わうと、
能力がぐんぐん発達するのはもちろん。
お子様が楽しく遊ぶ経験の中から、成功体験を積み重ねていくことで自信を育み、挑戦できる心も育てる。
 
実は、小さな私が祖母と楽しく遊んでいたこと全てが、
脳の発達に必要なことばかりだったと気づいたのは、最近のこと。
 
折り紙で手指を使うのも
ほおづきの笛の遊びも
昔の遊びの中には、育脳の要素がいっぱい詰まっている。
 
何よりも祖母にとても愛されて育ち、いつも満たされておだやかだった。
 
大好きな祖母から、受け取ってきた大きなギフト。
それに、その電話を通して改めて気づけて嬉しくなった。
 
小さな頃の経験すべてが、私の脳のつながりとして、
これからもずっと可能性を広げ続けてくれている。
 
 
 
 
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2019-09-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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