切迫流産はサバイバル
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記事:岩根かな子(ライティング・ゼミ日曜コース)
「切迫流産の可能性があります。しばらく寝たきりで生活をしてください」
そんな風にお医者さんから宣告されたのは、妊娠16週目のときでした。
「え……。でももう安定期のはずですよね?なんでそんなことに……」と私が問いかけると
「切迫流産になるかどうかは個々の体質によります。安定期だから大丈夫なんてことはないのです。あなたの子宮頸管は通常4センチは欲しいところ、2.8センチしかありません。このまま普段の生活をしていると間違いなく流産になりますよ」
いきなりの宣告に私の頭は真っ白になりました。流産という言葉は私には全く関係ない話で、きっと無事に出産できるだろうと勝手に思っていたのです。
診察が終わったあと、これからのことを考えトイレで泣きながら、
「なんでこんなことに……。私の何が悪かったの……」と絶望していました。
その日から始まった寝たきりの生活はかなりの苦痛を伴うものでした。急なことだったので、もちろん仕事は休職となり、引き継ぎをする暇さえありませんでした。
家でも一人で生活をすることは出来ず、両親に頼りきる生活になってしまったのです。
自分にとってそれはまるでサバイバルのような生活でした。
いつ終わるか、無事に出産できるかもわからない寝たきりの生活です。自分では動くことが出来ず、無力を感じながら周りの人達に全てを託して待つだけの日々でした。
薬の副作用から常に嘔吐し、何が食べられるのかも探り探りやっていかないといけません。
「自分はなんて無力なんだろう。赤ちゃんは無事に出産できるんだろうか……」
そんな不安を抱えながら過ごしていましたが、ふとあることに気づきました。
「悲しんでいても何も始まらない。支えてくれる周りの人たちに感謝して、今自分にできることをやっていこう!」
ただ悲しみに浸るだけでは何も解決しないことに気づいたのです。
「迷惑をかけてごめんね。こんなことになるくらいなら、妊娠中もっと気をつけていればよかった。でも今更悔やんでも寝たきり生活は変わらないし、今はとにかく赤ちゃんのことだけを考えて、これから先役立てることをするよ」
そう家族に伝えて、より一層家族一丸となって出産までを乗り越えることにしました。
母は私のために、毎日吐かずに食べられるものを探し、父は私を気遣い寝たきりの私に面白い話題を提供してくれました。
夫は赤ちゃんのことについて調べ、流産で安静状態になった人でも出産となった例はいくつもあると私に希望を与えてくれました。
私は私で、出産後に備え、育児の情報を集めたりと、今の自分自身の状況を嘆くことなく過ごすことが出来ました。
「きっとこの寝たきり生活は、赤ちゃんが私に無理をしないよう、早く休みなさいと言ってくれているんだ。だから今は焦らずゆっくり赤ちゃんを育てよう。」
そう考えながら、寝たきりの生活を3ヶ月過ごしました。
3ヶ月立って病院に通院した時、先生から
「子宮頸管の長さが3センチまで回復してきています。28週で3センチであれば、無理をしなければ少し動いてもいいですよ。ただし、出歩いたりはしないようにしてください。」
という風に診断をされました。
出産まであと約1ヶ月半、やっとここまでくることが出来たと感慨深く思いました。
3ヶ月の寝たきり生活は解除されましたが、無理をすればきっとまた寝たきりの生活に戻ってしまうことでしょう。
そう考えた私は出産までの残りの時間も、母や父の世話になりながら、少しでも赤ちゃんがお腹の中で成長できるよう、家で安静に過ごしていました。
そして出産しても問題ない時期まで、赤ちゃんを守り通したのです。
その後、出産時にも色々あったものの元気な男の子を無事出産することが出来ました。
今元気に走り回る息子を見て思うのは、切迫流産という自分にとって絶望の縁に立たされるような状況があったからこそ、今をとても大事に思うことができるのだろうなということです。
その時期があったからこそ、私の父母とより深く仲良くなることができ、夫とも話し合いの時間を持つという習慣が産まれました。
支えてくれた家族に感謝し、今を大切にするのは、当時のサバイバルのような生活があったからだと感じています。
息子の命がかかった状態でいかにみんなと協力して、出産まで過ごせるか。その心情は本当にサバイバルのような時間だった思います。
とても大変な時間でしたが、障害があるからこそ人は成長でき、大切さを学ぶことができると感じた出来事でした。
みなさんも色々な状況に直面することがあると思いますが、どんなことも支えがあれば乗り越えて行くことができるはずです。全て自分の成長やこれからに必要なことなのだと考えれば、今を頑張ることが出来ますよね。ぜひ前向きに考えてサバイバルを楽しんでもらえたらと思います。
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