なんで僕ばっかりが「秘伝のレシピ」を教えねばならないのだ!《天狼院通信》
記事:三浦崇典(天狼院書店店主および『殺し屋のマーケティング』著者)
昨日のことである。
僕は、珍しく体調もよろしくなく、「自分の仕事を創るゼミ」の講義の前にトイレに長時間こもっていた。
体調もよくなかったためもあり、非常にイライラしていた。
というか、釈然としない思いに囚われていた。
その後の講義で、僕は「A3オールイン・シート」の書き方を教えることになっていた。
このシートは、ビジネスをする上で、とんでもなくメリットを得られるものだ。
決算書が悪くても、天狼院が金融機関から融資を得られていたのは、毎回、この「A3オールイン・シート」で大逆転していたからだ。
ディベロッパーさんから、どうしても一緒にやりたいと思ってもらえるのも、このシートがあるからであり、大事な融資を一度もしくじったことがないのは、この「A3オールイン・シート」のせいだ。
大げさに言ってしまうと、天狼院の成長は、この「A3オールイン・シート」によるといってもいいかもしれない。
つまり、天狼院の秘伝中の秘伝で、しかも、スタッフにもこの書き方を明かしたことがないし、元データを誰にも渡したことがない。
ジブリ映画の『天空の城ラピュタ』で言えば、ラピュタの球体の中に隠されていた巨大な飛行石に当たるのが、「A3オールイン・シート」である。
なんと、どういったわけか、どうしてか、カリキュラムを見るとその日の「自分の仕事を創るゼミ」で、この「A3オールイン・シート」について、話すことになっていたのだ。
なんたることだ!
なぜ、秘伝のレシピを教えなければならないのだ!!
前に、同じような「うっかり失敗」をした苦々しい記憶があった。
あれは、まだ天狼院が生まれて間もないことだっただろうと思う。
お客様に、なぜ、天狼院には文才がある女子大生が集まってくるんだろう、うらやましい、と言われたことにカチンと来て「うっかり」こう言ってしまったのだ。
「実は、文章を読まれやすくなる秘伝のレシピを彼女たちに教えているんですよ」
言ってしまってから、あ、と思った。
冷や汗が出た。
案の定、その方は、こう言った。
「そうなんですか、それなら、ぜひ、それを教えてください」
その話が、お客様から人伝に広がってしまい、1回だけですよ、本当に1回だけですよ、とその秘伝のレシピを教える講座は、何度も開催されることになり、今では延べの受講者数5,000名様をゆうに超える講座に成長してしまった。
そう、僕からすると実に不本意に成長してしまった、のだ。
それが、「人生を変えるライティング・ゼミ」であり、その秘伝のレシピこそが、僕が独自に開発した「ABCユニット」だった。
あの後悔があってから、決して、「A3オールイン・シート」だけは、誰にも明かさないと決意していたはずなのに……。
講義は、半ば、ヤケクソだった。
もう、もってけドロボー!
気づけば包み隠さず、なぜ「A3オールイン・シート」が成功するのか、その理論体系まで、熱を込めて説明していた。
ああ、やってしまった。
また、やってしまった。
それにしても、なぜ、僕だけが秘伝のレシピを公開せねばならないのだろう。
なんで、教えないといけないのだろう。
たしかに、受講料は払ってもらっているが、そのメソッドは僕の人生であり、血肉である。
10年の経営の中で、ようやく編み出したものなのだ。
ところが、そのケチな想いは、翌日の受講生の方の投稿をみて、すっと、消えた。
「三浦社長の講義は、すごく内容が濃かった」
その方は、とても世の中にとって有意義なビジネスを創ろうとしていた。
もし、僕の「A3オールイン・シート」がその方のビジネスに役立てられるのなら、それも素晴らしいことなのではないかと思った。
そして、ちょっと、恥ずかしくなった。
ケチに思っていたのは、どこかで「盗まれる」と思っていたからだ。
誰かを通して、「世の中の役に立つ」と思えば、すばらしいことだ。
これまでの考えを、ちょっと変えなければならないと思った。
役立ててもらえるのなら、それ以上に幸せなことはないではないか。
■ライタープロフィール
三浦崇典(Takanori Miura)
1977年宮城県生まれ。株式会社東京プライズエージェンシー代表取締役。天狼院書店店主。小説家・ライター・編集者。雑誌「READING LIFE」編集長。劇団天狼院主宰。2016年4月より大正大学表現学部非常勤講師。2017年11月、『殺し屋のマーケティング』(ポプラ社)を出版。ソニー・イメージング・プロサポート会員。プロカメラマン。秘めフォト専任フォトグラファー。
NHK「おはよう日本」「あさイチ」、テレビ朝日「モーニングバード」、BS11「ウィークリーニュースONZE」、ラジオ文化放送「くにまるジャパン」、テレビ東京「モヤモヤさまぁ〜ず2」、フジテレビ「有吉くんの正直さんぽ」、J-WAVE、NHKラジオ、日経新聞、日経MJ、朝日新聞、読売新聞、東京新聞、雑誌『BRUTUS』、雑誌『週刊文春』、雑誌『AERA』、雑誌『日経デザイン』、雑誌『致知』、日経雑誌『商業界』、雑誌『THE21』、雑誌『散歩の達人』など掲載多数。2016年6月には雑誌『AERA』の「現代の肖像」に登場。雑誌『週刊ダイヤモンド』『日経ビジネス』にて書評コーナーを連載。
この記事は、天狼院書店の講座・4ヶ月で新しく”自分のビジネス”を創り上げる超実践「仕事を創るゼミ」講師、三浦が書いたものです。
http://tenro-in.com/zemi/67213