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すべては、あそこで語り合ったことから始まった

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東京国際ブックフェアに向かう途中の電車内で、いただいていた『海賊とよばれた男』を読みながら、今日も国岡鐵造に勇気をもらい、ふと、昨日の会を思い出す。

 

そもそもは「北の仕掛け人」こと、さわや書店フェザン店の栗澤さんから、こう頼まれたのが始まりだった。

 

「7月5日に、東京国際ブックフェアを見に行くので、東京で集まりませんか。三浦さん、スーパー幹事をお願いします!」

 

そこで、主にフェイスブックで参加を呼びかけた。ただ、呼びかけるのでは芸がないということで、会の題名をちょっと工夫してみた。

 

書店と出版の未来を「超」前向きに考える会!@池袋

 

最初は、40名くらいだろうと思っていた。業界のことを前向きに考える人は、そう多くはないだろうとどこかで思っていたのだ。ところが、昨日、その会に集まったのは、じつに103名。

書店人、取次人、出版人、そして著者の先生方と、見事に本の執筆から販売までの線が、まるで惑星直列のように一本に連なった。

出席率は、驚異の107%。土壇場でのキャンセルもほとんどなく、思いがけず、早い時間に多くの方に集まって頂いた。

じつは、僕は念のため、保険をかけておいた。盛り上がらない場合に、話の端緒になるようにと、「もしあなたが書店か出版社の社長になったとしたら、どうしますか?」という設問を書く用紙を用意したのだ。時間前に来て頂いた方には貴重なご意見を書いて頂いたが、会が始まるやいなや、ゴングがならされたように、会場は熱気に包まれ、その用紙は必要なくなった。

 

最初に設定したルールは2つ。

1、「超」前向きな話題で盛り上がる。

2、「超」前向きに、自ら未来への「つながり」をつくる。

 

それで、十分だったのだ。

3時間いっぱい話してもなお話し足りなかった方が多かったように思う。考えてみれば、当然のことだ。みんな本が好きで、この業界が好きなのだ。前向きに話したい人だけが集まれば、話が尽きるはずがない。

 

今日、ふとそれを思い起こし、来年夏にオープンさせる天狼院書店の輪郭が、また定まったように思える。

書店も著者も取次ぎも版元も読者も関係なく、本が好きな人が集まって、明るい未来を語れる場にすればいい。

いつも、「今日は誰かいるかな」とちょっとわくわくしながら天狼院の入り口を入り、ちょっとどきどきしながら、そこにいる人に話しかける。そして書店と出版の未来について、好きなだけ語り合えばいい。

そこから新しい本のプロジェクトが始まったり、そこで明日へのヒントを他の人から得られればいいと思う。

 

ただし、入店ルールを決めておく必要がある。

と言っても、別段難しい話ではない。昨日と同じ。

 

1、前向きな話題で盛り上がる。

2、前向きに、自ら未来への「つながり」をつくる。

 

ソーシャル・メディアは便利である。ただし、僕はこれを「リアルなつながりを補完するためのツール」だと考えている。リアルが充実している人ほど、ソーシャルは充実する。また、リアルに可能性を秘めている人ほど、ソーシャル・メディアからより大きな恩恵を受ける。

どうやら、ここ数年で一気に伸張したこの新しいメディアには、そんな特性があるようだ。

それは、つまり、ソーシャル・メディアが普及すれば普及するほど、以前にもまして、よりリアルな場が必要とされるということである。

みんな明るい未来について、語り合いたいのだ。

語り合える仲間を欲しているのだ。

 

天狼院書店は、その受け皿となろうと思う。

 

たとえ、大風呂敷を広げたっていい。

「無理」というのは実にまっとうで容易いことだけれども、たいてい、真剣に実現するものだと信じて、真剣に考えれば、実現の道は拓かれるものである。

 

来年の夏に、天狼院書店をオープンすることによって、それをひとつの証左にしたいと思う。

 

オープンした後には、天狼院書店を、未来を実現させる強力な「磁場」にしたいと思っている。前向きで性善で、どこかそう、「チャイルド・マインド」ともいうべき、色あせない童心を抱き続けた大人たちが集い来て、だれよりも若々しく、未来を語り合えればいい。やがて、それはひとつひとつ現実のものとなって、20年後にふり返ったときに、それぞれがこう思うだろう。

 

すべては、あそこで語り合ったことから始まった、と。

 

そんなことを夢想しながら、東京国際ブックフェアの会場に着いた。

辞書のように分厚い『海賊とよばれた男』のプルーフは、ほとんど読み進められなかった。


2012-07-06 | Posted in ニュース

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