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これからのビジネス書の話をしよう。〜Autumn 2012〜


オリンピックも終わり、ほとんどの方のお盆休みも終わったのではないでしょうか。

まもなく、高校野球も優勝校が決まり、海水浴場ではクラゲが出るようになり、夏休みも終わりが目前に迫り、子どもたちは読書感想文を慌てて書く。

そう、夏の終わりでございます。

やがて、朝が涼しくなってきて、日が短くなり、秋が訪れる。

寂しいような、それでいて、ふつふつとやる気が湧いてきて、改めて何かを始めたくなるような。

ロンドンオリンピックでは女性陣のめざましい活躍もあり、過去最高のメダル数を獲得しました。あんなに小さかった卓球の愛ちゃんも銀メダリストとなり、なんだか元気と勇気をもらい、誰もが自分も「がんばらないと!」と思い始める季節なのかもしれません。

 

僕は今、この瞬間が、書店・出版業界、もっといえば、ビジネス書にとって、大きな潮目になるのではないかと考えております。

 

年初から春にかけて、「失敗」というキーワードがビジネス書の業界で、ある一つの盛り上がりを見せました。いうまでもなく、その背景として去年の3.11があって、防潮堤の壊滅、原発の安全神話の崩壊や政治的なミステイクなど、これまでの常識が覆され、人々のマインドの中で、「失敗」という言葉が大きな興味の対象となったからでしょう。

『「超」入門 失敗の本質』(ダイヤモンド社)のヒットが、まさにその代表です。また、『リーン・スタートアップ』(日経BP社)や『小さく賭けろ!』(日経BP社)も、失敗をどう活かすのかという論点がメインなので、この流れの中にあったと思います。

3.11以降、焼け野原から奇跡の復興を成し遂げた、戦後間もなくとなぞらえて、ここから日本は強くなるという論調が多くみられましたが、どうも、様子がおかしい。危機の際のリーダーというものは、第二次世界大戦時のイギリスのチャーチルにせよ、9.11の際のニューヨーク市長ジュリアーニにせよ、関東大震災時の後藤新平にせよ、求心力を増して、強大な力を有するようになります。ところが、菅直人首相はそうはならずにこれまで通り、野田首相にすぐにリーダー交代となりました。

電力が足りずに節電をしなければならず、円高も収まらず、借金が増える一方で、景気は持ち直す気配もなく、本当の意味でのリーダーも不在である。

国民の中に、茫漠とした不安が徐々に積み重なった行ったのではないでしょうか。

このままでいいのだろうか。国や会社に頼っていても、幸せになれないのではないだろうか。

そんな想いが、多くの人の心に人知れず蓄積されていったのかもしれません。

こういった背景があって、春以降、ビジネス書の業界において「働き方」という大きなトレンドが形成されました。「ノマド」という言葉が一人歩きし、容赦なく非難される一方で、そんな自由な働き方に憧れる若い世代がいる。経済の停滞や就職難もあって、若い人たち、いや、その上の世代も、これからの新しい働き方をそれぞれ考えるようになりました。

『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか』(星海社新書)がスマッシュヒットした背景には、そんなトレンドがあったのだろうと思います。

この春からの「働き方」のトレンドは、一時的な流行ではなく、これからも長く続くのだろうと思います。なぜなら、これからの日本経済がそう劇的に伸長するとは到底思えないからです。書店においては「働き方」という棚を用意してもいいように思います。

また、一方で、これから秋に向けて、もう一つの大きな流れが生まれるのではないかと僕は見ています。

春から、読書におけるいわゆるアーリーアダプター的な層は、「働き方」に関する本を十分に読み、自分でも考えたことでしょう。次に彼らが向かうのが、このような思考だろうと思います。

 

「働き方が変わってくるのはわかった。では、実際にこれからどうすればいいのだろうか」

 

すなわち、こんな働き方になってくる、働き方をもう一度考えてみようという「総論」から、明日、使えるスキルをどうすれば習得できるのかという「各論」に、トレンドは推移するということです。

今がまさに、そのトレンドが生まれる境目なのだと思うのです。

すなわち、今年は、「スキルの秋」がトレンドになる。

もっとも、例年、読書の秋と言われるくらいですから、春と並んでそのような流れが形成されるのは間違いないのですが、3.11やオリンピックからの流れで、その流れは、例年にも増して強くなり、トレンドという大きな流れとなるのだろうと思います。

 

実を言えば、これは、春の深い段階から想定していたことで、僕はその流れに沿うような作品が世の中に必要になるだろうと考え、早い段階から、このトレンドに対応すべく、参加するプロジェクトを選ばせていただいておりました。

 

CORE1000系のプロジェクトとして『ビジネススキルイノベーション』(プレジデント社)に関わらせていただき、コードメイキング系のプロジェクトとして『僕たちはアイデアひとつで未来を変えていく。』(アスコム)に関わらせていただいたのは、この「スキルの秋」を見越してのことです。*ともにこれからの発売です。

これらの作品については、「READING LIFE」において、詳しく書かせていただこうと思います。

また、このほかにも語学や文章論、マーケティングなど、また理工の分野になるでしょうが、インターネットやソーシャルメディアの具体的な使い方と言った「スキル」系の本が、今以降には売れ始めるだろうと思います。

この「スキル」のトレンドの到来は、書店界や出版界からすれば、実に喜ばしいことです。なぜなら、スキル系の本は比較的に価格が高く、また複数冊まとめて買われる傾向が高いからです。つまり、客単価が上昇し、売り上げに寄与するだろうと思います。

 

すなわち、これからビジネス書は面白くなるということです。

 

それに対応すべく、天狼院書店でも、様々なプロジェクトを打ち出していきますので、乞うご期待でございます。

 

 

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》》書店劇場化プロジェクト

 

 


2012-08-20 | Posted in ニュース

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