週刊READING LIFE vol.145

お金への片想いから一歩、進展するために考えたこと《週刊READING LIFE Vol.145 きっと、また会える》


2021/11/01/公開
記事:にじの 青(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
「あー、お金が欲しい」
 
そう思ったことは皆さん、数知れずあると思います。
私も以前はよく口にしていました。
 
お金は、いつも気まぐれで
一瞬大勢で近寄ってきてくれたように思えるけれど、
気が付くと、必要な時にちょっと姿が見えなくなったりする。
 
「もう少しお金があればなぁ……」
 
お金を理由に諦めてしまった行動は数知れずあります。
欲しいと思ったものを買うことを諦めたり、
参加したいと思ったセミナーを金額で断念したり、
悔しい思いをしたこともたくさんあります。
 
最近ふと、こう考えたのです。
 
お金への感情って、まるで、強烈な一目惚れをして、
寝ても覚めてもついつい、相手のことを思い描いてしまう片思い中のようだな、と。
 
 
お金 = 片思い中の相手
 
そういう前提で考えてみると、いろんなことが見えてきました。

 

 

 

そもそも、片思いというのは「相手に過剰な期待をしている状態」とも言えます。
 
「恋は盲目」「あばたもエクボ」
 
というように、片想い相手の良い部分だけを膨らませたり、
自分の理想を勝手に押し付けたり、
「相手も自分を同じように好きでいるはず」
という過剰な期待をしたりします。
 
お金にも同じような過剰な期待を持っていると
 
「お金があれば、幸せになれる」
 
「お金がすべて」
 
ついつい、そんな期待をして
 
「これさえやれば、あなたも月収一千万円!」
 
みたいな儲け話を信じてしまいそうになるでしょう。
宝くじで一攫千金! という期待をしたことは、私もあります。
 
でもそれって、恋愛に置き換えるとこういうことではないでしょうか?
 
「恋愛さえ叶えば、幸せ」
 
「恋がすべて」
 
そういう判断基準で
 
「これさえマスターすれば、絶対に恋人ができる究極のモテテクニック!」
 
というようなハウツー本や雑誌特集記事を読みまくったり、
恋愛依存症に陥った時に出てくる言葉と似ていると思いませんか。
 
 
 
「お金だけが人生じゃない」
 
これもよく聞き覚えがある言葉ですし、私も以前よくそう言い聞かせていましたが、
 
「恋愛だけが人生じゃない」
 
こう、置き換えてみると、
 
自分がモテないことを棚に上げて、
 
「恋愛なんてくだらない」
 
恋愛を批判する時に出てくる言葉と似ているのです。
いわゆる「めんどくさい奴」状態ですよね。
 
極めつけはこれです。
 
「お金の話ばかりするのは下品」「お金は汚い」
 
「性の話をするのは下品」「性のことは汚い」
 
 
これって、つまりお金も性や恋愛のどちらも、
自分の欲や願望を色濃く映す鏡のようなものだからではないでしょうか。
 
お金も性のことも、人間として生きていくためにとても重要なこと。
 
だから必要以上に、欲を見透かされるような気がして過剰に反応してしまうのではないでしょうか?

 

 

 

では、お金と恋愛が根底では似ているという前提で、
 
「理想の恋人とお金ってどういう関連性があるか?」について考えてみたいと思います。
 
 
私が理想の恋人に求めるものをいくつか挙げてみます。
 
・物知りである
 
・人間的な魅力が高い
 
・向上心が高い
 
・人を見る目を持っている
 
・芸術を敬う
 
・旅が好き
 
・食の趣味嗜好があう
 
・最大の理解者である
 
・自由を愛している
 
私は、性別よりも相手の知性に対して、恋愛スイッチが入るサピオセクシャルというマイノリティですので、世間一般に出てくる「理想の恋人」に求める外見的要素という部分は、正直、あまり重視していません。
 
「この人素敵だな」という部分には多少の外見的好みが左右しますが、
恋愛において一番重要なのは
 
「お互いに共通の話題で会話を楽しみ、共に学び成長しあえる」
 
という関係なのです。
 
触れ合ったりすることは、相手が同性でも異性でも「肌と肌を直接触れ合わせたい」と思えば、どちらでもよいのです。
 
では私がお金に求めるもの、お金との理想の付き合い方について書き出してみます。
 
・知識を得る手助けをしてくれる
 
・行きたい場所へ行く手助けをしてくれる
 
・人間関係を取り持ってくれる
 
・芸術を楽しむことを手助けしてくれる
 
・自由に生きることを手助けしてくれる
 
・主体的にいることを手助けしてくれる
 
・心の安定を保ってくれる
 
・美味しいものを食べることを叶えてくれる
 
 
なんだか、そのまま理想の恋人へ求める条件と重なる部分が目に付きますね。
 
 
では、もし、私の理想に当てはまる人がいたとして、
今の自分はその相手から魅力的なのだろうか? という質問をしてみます。
 
おそらく、知的好奇心が強くて、自由を愛する人は、恋愛に夢中になるよりも他にたくさんの興味関心が多いのではないかと予想されます。
 
ということは、かなり人間としての魅力が高くないと、お眼鏡にかないそうにありませんね。
 
では、私とお金という関係ではどうかと考えたとき、
お金の側からして、私は「何かを手助けしたい」と思わせられる人なのか?
 
そういう視点で、自分の言動や感情を見つめてみるようになりました。

 

 

 

以前、朝のウォーキング中にある一言を聞いて、思わず一瞬足が止まったことがあります。
その時、私の足を止めたのは、こういう言葉でした。
 
 
「お金は、富ではない」
 
 
これを先ほどと同じように恋愛で置き換えてみると、こう言えるのではないでしょうか。
 
 
「恋人は、人生のパートナーではない」
 
 
もちろん、恋人同士が一生涯のベターハーフになることは、過去沢山のカップルが証明してくれます。
 
でも、人生のパートナーとなるのは、恋愛関係から始まる場合だけではありません。友人や肉親、上司と部下、師匠と弟子という唯一無二の人間関係が、その人の人生において重要な場合はいくつもあります。
 
「お金がたくさんあることが富や豊かさとは限らない」
 
ということを聞いてから、
 
「富とは何か」
「富ではないものは何か」
 
 
その質問を自分の行動に対して繰り返してみました。
 
そうすると、この言葉に明確な意味を感じるようになったのです。
 
 
「感謝しながら、お金を払う」
 
 
この言葉は、お金に関する自己啓発本や生き方についての本などでよく紹介される言葉です。文字で読むと、そんなの当たり前だと読み流したり、耳で聞いても聞き流してしまうのですが、当たり前だからこそ出来ないし気が付きにくい部分だということが段々わかってきました。
 
よく、金運を上げる言葉遣いとして、紹介される言葉にこういうものがあります。
 
・お金を払う時に、「ありがとう」という
 
・「たくさん友達連れて戻ってきてね」とお願いして、お金を使う
 
・「出せば、入る」と信じて、お金を使う
 
 
これって、人間関係と似ていませんか?
 
お金を払うということは、何かしら「自分の欲しいものを手に入れる」という交換です。
 
何か欲しいものがあって、誰かと交換してそれを手に入れたとき、
交換してくれた人に何というでしょうか?
 
「ありがとう」「嬉しい」という喜びや感謝でしょうか?
 
以前の私は他人から何かをしてもらった時、
 
「ごめんね」「迷惑かけてしまった」「気を使わせてしまった」
 
という言葉や思いがついつい、先に立っていました。
 
「してもらって当り前」「当然のこと」「余計なお世話」
 
そういう風に思ったことも、かなりの回数ありました。
 
他人に何かをした時に、喜ばれたり感謝されたら嬉しいのに。
ひょっとして、お金も同じではないかな?
そう思いいたった時に、「お金に感謝する」という言葉に意味が見えてきたのです。
 
そうなってくると、お金を払う時に、こう思っていることにも気が付きます。
 
「無くなる」「使うの嫌だな」
 
これも恋愛に例えると
 
「付き合ってるのに一緒にいてくれない」
「ほかの人と会わないでほしい」
 
という風に考えているのと似ていますね。
 
さらにその発展形が
 
「お金持ちは不幸になる」
「盗まれたらどうしよう」
「無くなる心配するなら、最初から無いほうが楽」
 
 
これもこう置き換えられます
 
「恋愛は不幸の始まり」
「浮気されたらどうしよう」
「いつかいなくなるなら、恋愛なんてしないほうが楽」
 
お金にも感情があれば、自分がそう思われていると知ったら、どうするでしょう?
 
喜ばれると、嬉しい。
 
嫌がられたら、悲しい。
 
いなくなるなら、最初からあてにしない。
 
 
その思いが、お金そのものに限らず、そのお金を介して行われるすべての人とのやり取りや人間関係に影響するとすれば、
 
お金は富の一部であって、すべてではない。
 
 
その意味が、徐々に理解できるようになっていったのです。

 

 

 

銀行残高が何億あっても、だれも信用できない孤独な人がいるように、
無一文でも、皆が喜んで何かを差し出す人徳を持っている人もいます。
 
 
でも、多くのひとは
 
「自分にはほかに富と呼べるものなんてない」
 
「自分には大した価値がない」
 
という思い込みで、お金に対して過剰な期待をしながら生きているのではないでしょうか。私もそうでしたし、時々まだそこに立ち戻ってしまうこともあります。
 
 
だから、心に余裕があるときにはお金に向かってこう言うようにしています。
 
「きっとまた会えるよね」
「いってらっしゃい」
 
何かの対価でお金が私のところに来てくれた時、
 
お金を払うことで何かしらの願いがかなった時、
 
お金が私の手助けをしてくれた時、
 
素直に心から「ありがとう」と言う習慣を、今身に着けている真っ最中です。
時々、何の気なしにお金を使ってしまうこともありますが、
自分が何に、誰に対してお金を払いたいのか、という目線で買い物をするようになりました。
 
そうすると、大きく変わったのが
 
「お金が減る」という恐怖が薄くなっているということです。
 
「いつかいなくなる」という不安ではなく、「また帰ってきてくれる」という信頼。
 
お金との片想いではなく、それぞれが自由を尊重した穏やかな両想い関係であろうとするには、
 
「おいていかないで」
 
「いつ帰ってくるの?」
 
という束縛するような粘着質よりも、
 
「また、あおうね!」と笑顔で別れられる関係のほうがずっとずっといいなと思えるようになりました。

 

 

 

恋に落ちるのは、思いもよらぬ一瞬だったりします。
 
そして、片想いが成就するのも、大概、「えー!? 今!?」みたいな時だってあります。
部屋が散らかっているから、という理由で進展できず、
無かったことになってしまった両片想いも世の中には腐るほどあるでしょう。
 
「今日こそ!」と意気込んで、いろいろ準備万端でデートに行ったのに振られることだって同じくらい起きていることでしょう。
 
恋愛に限らず、松任谷由実さんの歌のように、
「今日に限って、まさか……」ということが起きるのが人生です。
 
でもそれは、100%自分だけの都合やタイミングであって、
相手にもテンションやタイミングというものがあるし、
少々部屋が散らかっていようが、安いサンダルを履いていようが
「今でしょ、今!」ということだって実はたくさんあるから、
人生はドラマよりもドラマティックなのです。
 
 
同じことが、お金や富と自分との間でも起きているとするなら、
 
いつもお金と気持ちよく過ごしていくこと、
 
いつ思いもよらないお金のラブコールを受けても、
全力で「ハイ、喜んで!」と受け入れられる自分でいること、
 
そんな心の準備をしているのもお金と両想いになる近道なのかもしれないなと思うのです。
 
こういうことを書くのは、月収1億円という人のほうがより納得されるのかもしれません。
 
けれど、これまでお金との付き合い方に何度も失敗してきて、延々と片想いをし続けているからこそ、今までの付き合い方を反省して、少しづつお金との関係を見直しているからこそ書けるのかなと思います。
なんだかこれも、恋愛下手の人が失恋直後に言い訳する内容と似ている気がしますが、そのあたりは察してください。
 
なにせ、「お金は富ではない」という事実を知ったのが、ちょうど一年前のこと。ようやく、その裏付けが自分の中で確証に変わっていっている途中なのですから。
 
ただ、自分の人生を振り返ってみて感じるのは、
お金を得る以上に、お金では手に入らないものを手に入れてきているという事実です。
 
他人から指摘されて気が付きましたが、人脈だったり、貴重な体験だったりはわりと多いですし、お金を使わなくても、何かを叶えてもらえたり、自分の持っているスキルで何かと交換できるという経験については、結構恵まれてきたかもしれません。
 
もしいきなりすべての貨幣制度が全く使えなくなっても、
なんとか生きていくことはできるでしょう。
 
ひょっとしたら、物々交換社会の方が生きやすいかもしれません。
 
とはいえ、今現在、社会で生きていくにはお金をうまく循環させていくことが重要です。
 
だからこれからもお金を払う時、
行ってらっしゃいという気持ちと感謝を込めて
 
「ありがとう」
 
と送り出します。
 
そうすれば、きっとまた会えるかもしれないからです。
自分が快く送り出したお金と、そのお金が連れてきてくれる富や豊かさに。
 
そして、今度こそお金と両想いになって、
お金も私も周りも喜ぶ使い方ができるハッピーエンドを迎え、
本当の意味で豊かな人生を過ごしたいと思います。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
にじの 青(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

解放セクソロジスト。性に関するすべての感情を解放することを目指し、性と身体の仕組みを科学的に考えるセラピスト。ノンバイナリー(精神的両性具有)でサピオセクシャル(知性愛者)というLGBT以外のセクシャルマイノリティ。国際アロマセラピストでもあり解剖学、東洋医学、薬草学、色彩学、西洋占星術、個性心理学、発達心理学などにも造詣が深い。
6歳で男女という2つの区別だけしかないことに疑問を持つ。10代の終わりには、今までの枠組みとは違う自分の恋愛パターンや性に関する好みについて考えるようになる。BDSMという性的倒錯の世界に長年かかわった経験から、LGBTに含まれないセクシャルマイノリティやセクシャリティの悩み、性に関するトラウマ、深層心理での思い込みなどに向き合うセラピーやカウンセリングを専門に活動中。『学校では教わらない性教育』をテーマに2018年から身体と性に関するセミナー、イベント企画、メルマガ、ブログなどを発信している。

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2021-11-01 | Posted in 週刊READING LIFE vol.145

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