週刊READING LIFE vol.156

仕事が続かない原因を考えてたら分かった。上司の言うことを真に受けなくていい理由《週刊READING LIFE Vol.156 「自己肯定感」の扱い方》

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2022/02/08/公開
記事:池田義国(READING LIFE 編集部ライターズ倶楽部)
 
 
僕は逃げ続けていた。
 
何度も何度も。
 
「もう無理だ」
 
そう思って、何度辞めたことか。
 
でも、もうすぐ僕も30歳。
 
いつまでもこんなことしててはいけない。
 
今度こそは続けよう。
 
そう心に決めて、新しい会社で働き始めたのだった。
 
それまでの僕は、いわゆるジョブホッパー。
 
1社目は、やりたいことがあるから辞めた。
 
2社目は、社長との考え方の相違から辞めた。
 
3社目は、怪我をして辞めた。
 
4社目は、ストレスに耐えきれず辞めた。
 
大学卒業してから30歳になる前までに、いろんな会社で働いた。
 
全て正社員というわけじゃないけど、どれも最初に入社したときは、長く続けようと思って入った。
 
それなのに続かなかった。
 
辞めて良かったと思ってたし、辞めたことに後悔はない。
 
けど、何か引っ掛かっていた。
 
何かに正面から向き合っていないような気がした。
 
だから、次に入った会社では、長く続けることを目標にした。
 
幸い、給料も底辺ではないし、残業もあまりない。
 
あっても、サービス残業にはならない。
 
零細企業ではあるけど、ブラック企業ではなかった。
 
だから、これから働かせてもらう会社では、長く続けられない自分と向き合おう。
 
そう心に決めて入社した。
 
そして5年目に入る今、僕はその会社で働き続けている。
 
自分と向き合うのはとても辛かった。
 
うまくいかなくてイライラして、上司に楯突いたこともある。
 
けれども今では、1日の4分の3で仕事を終わらせられる日もあるくらい、早く仕事をこなせるようになった。
 
上司との関係も良好で、自分の意見も通りやすくなった。
 
入社した当初に毎日抱いていた
 
「こんな会社辞めたい」
 
という思いはない。
 
もし今、仕事のストレスがすごくて、辞めたくて辞めたくて仕方がない人がいたら、ぜひとも読んでほしい。
 
ブラック企業にいたり、ブラックな上司の下で働いてる人に参考になるとは言えないけど、何かのヒントになるはずだから。
 
今思えば、何個も職を変えたのには理由があると思っている。
 
それは、結果を出せないことに対する恐怖に、耐えられなかったから。
 
上司の求めるものを、完璧に成し遂げられない恐怖から、逃れたかったから。
 
このまま成長しないで、怒られ続けるのではないかという恐怖に耐えられなかったから。
 
少しでもできなくて、上司に怒られると、自分はダメな人間だって思ってしまう。
 
そんな苦痛に耐えられなかったのだ。
 
仕事では、成果は出せていた。
 
営業ではトップになったこともあったし、マネージャー的なポジションを任せてもらえたこともある。
 
そうやって成果は出せるけれども、その成果を上げ続けられないのでは、という恐怖に耐えられなかった。
 
上司の期待に完璧に答えられないことが、僕には耐えられなかった。
 
だから、上司の期待に応えられなさそうになると、
 
「もう辞めよう」
 
って思ってしまっていた。
 
でも、なんでそんな気持ちが強かったのか。
 
理由は、自己肯定感の低さと、幼少期の頃のトラウマにあると思っている。
 
昔から自分は、調子に乗らないことを意識してきた。
 
テストでいい点数をとっても、これで満足しちゃだめだと言い聞かせてきた。
 
人から褒められても、その言葉をちゃんと受け止めず
 
「まだまだ自分はレベルが低いんだ」
 
と思い込ませてきた。
 
そんな癖があったからか、自己肯定感はかなり低かった。
 
誰かと比べては、
 
「自分はあの人よりできてない」
 
と思って、満たされない気持ちであふれていた。
 
あえて人よりも低いと思わせて、もっと成長しないといけないという気持ちを、自分に持たせようとしていたのもある。
 
そのおかげで、早く成長できる時は早い。
 
でも、長期的に見ると、満たされない気持ちでいっぱいで、自分の心が苦しくなっていくことが多かった。
 
さらに、怒られるということに、かなりの拒否反応があった。
 
というのも怒られると、たぶん無意識に、幼少期の頃の嫌な記憶を思い出すのだ。
 
記憶を思い出すというよりも、怒られると自動的に心臓がドキドキしてしまって、嫌な感情が湧いてくる感じかもしれない。
 
小学生の頃は、親に怒られてばかりだった。
 
箸の持ち方が悪い、勉強ができない、そのたびに怒られて、叩かれた。
 
教育熱心な親だったから、毎日勉強をさせられた。
 
それで、うまくできないと、怒られて叩かれた。
 
怒られることは恐怖だった。
 
怒られないように頑張っても、答えが間違っていれば怒られる。
 
僕は覚えはそんなに良くない人間だから、親にしてみれば
 
「何ですぐ覚えられないんだ」
 
とイライラしてたのかもしれない。
 
いずれにしても、僕にとってみれば、怒られることに対する恐怖心はすごかった。
 
また、両親はよく喧嘩をしていた。
 
一度、夜寝ている時に、酔った父親が帰ってきて、両親が 手を出すほどの喧嘩になったこともある。
 
「離婚する!」
 
なんて言葉は、当たり前のように出てきた。
 
ゴミ箱は蹴飛ばされ、机はひっくり返された。
 
自分の部屋がないほど狭い家に住んでいたから、逃げ場がなく、かなりの恐怖だった。
 
しかも、なぜか二人の間に入って、どちらの味方もしなければいけなかった。
 
そんな時のドキドキ感が、今でも残っている。
 
今思い出すだけで、心臓がドキドキする。
 
それを、上司から怒られる時も感じてしまうのだ。
 
上司から怒られたところで、身の危険はないにも関わらず、つい反応してしまう。
 
そんな気持ちになるのが本当に嫌だった。
 
だから、そこから逃げたいと思って、ちょっと仕事がうまくいかなそうになると、辞めるという選択をしてしまっていた。
 
そんな中、4社目の会社を辞めた時に、僕は引きこもりになった。
 
ストレスをうまくコントロールできなかったからだ。
 
でも、そうやって引きこもったことが、転機になったと思っている。
 
引きこもったことで、もう何もかも諦めた。
 
お金を稼ぐことも、成果を出すことも、上司に気に入られることも。
 
もうどうでもよくなった。
 
そんな状態で、5社目の会社へ就職した。
 
とにかく今度は、普通に仕事をして、長く会社にいようと、そんな目標を立てた。
 
ところが、成果を出すことも、上司に気に入られなくてもいいと思っていたけど、本心は違ったようだ。
 
やっぱり仕事ができるようになりたいとか、上司と良い関係を築きたいというのは、心の中では思っていた。
 
だから、教わったことはちゃんとメモして覚えるようにしたし、家に帰ってから勉強をすることもあった。
 
でもそんな状態はよくないと思った。
 
なぜなら今までみたいに、自分がまだ仕事できないと思って、その欠けたものを満たすために、遊ぶ時間をなくして 勉強している感じがしたからだ。
 
それだと、今までと何も変わっていない。
 
結局ストレスが溜まって、どうにもならなくなるのが目に見えていると思った。
 
だから、思い切って、休みの日は休むことにした。
 
次の週どんなに仕事がうまく進まなくて、上司に怒られるというイメージがあったとしても、とにかく休むことにした。
 
昔の自分だったら、こうはいかなかったと思う。
 
引きこもって、いろんなことを諦めるということができるようになったから、そういう選択ができたんだと思う。
 
また、休むこと以外に、自分に言い聞かせることにしたこともある。
 
それは、まだ今の自分は成長途中なんだということ。
 
一日一個でも、一週間に一個でも成長していれば、必ず仕事ができるようになっている。
 
そう自分に言い聞かせるようにしたのだ。
 
でも、不安だった。
 
上司に怒られる度に、
 
「やっぱり自分はできない人間なんだろうか……」
 
って思って不安だった。
 
それでも貫き通せたのは、諦めることができたからだと思う。
 
諦めると言うと、世間的にはネガティブなイメージがある。
 
でも、諦めることは決して悪いことじゃない。
 
もし同じように、今苦しんでいる人がいたら、是非とも諦めるという選択もできるようになってほしい。
 
入社してから3年間は、ずっと怒られ続けていた。
 
なかなかできるようにならない自分に、自信を持てなかったし、このままで大丈夫なのかと不安になることが多かった。
 
そんな中でも、少しずつできている部分もあった。
 
上司は、そういうところを褒めてはくれなかったけれども、自分で自分に、それを褒めるようにした。
 
「ちょっとずつ成長しているよ」
 
と自分に言い聞かせるようにした。
 
そうやっていくうちに、できるようになることが増えていった。
 
できないものにフォーカスするのではなく、できることにフォーカスした。
 
そうするうちに、上司から怒られる頻度も少なくなっていった。
 
その度に、自分を褒めるようにした。
 
「できるようになってるじゃん!」と。
 
そしたらいつのまにか、仕事を早く終わらせるようになっていた。
 
さらに、上司との関係も良くなっていった。
 
以前は上司と笑って話せなかったけど、今では笑顔で話せるようになった。
 
仕事がうまく進まなくても、そんなに怒られないぐらいにもなった。
 
自分の要求も通るようになった。
 
それほど信頼されていると思っている。
 
こうして振り返ってみて分かった。
 
昔の自分は、怒られるという恐怖に逃げていたんだと。
 
上司が怒るからと言って、それが自分の身を危険にさらしているわけじゃない。
 
また、成長を否定してるわけでもない。
 
ただ感情的になって、怒っているだけのこともあったと思う。
 
というのも、今振り返ってみると、仕事をたくさん経験してもないのに、最初からできるなんてことはない。
 
できない部下に対して上司は怒っていたけど、それは上司の上司からプレッシャーをかけられてたということもある。
 
だから、上司に余裕がなかったのかもしれない。
 
それで部下に当たってしまったとも考えられる。
 
そう考えると、上司の言うことをあまり真に受けなくてもいいのだ。
 
もし、真面目に上司の言うことを受け止めて、その言葉で苦しんでる人がいたらこう言いたい。
 
上司のその言葉、本当に現実的なの?
 
ただ無理難題を押し付けているだけじゃないの?
 
もちろん、無理難題を言って成長することもある。
 
けど、少しずつ工夫していれば、必ず成長する。
 
そういう自信を持って欲しい。
 
怒られているからといって、成長してないわけではない。
 
できない自分を責めて、休みもなく仕事のことばかり考えないでほしい。
 
毎日一個、一週間に一個でもいいから改善し続けていれば、
必ず成長する。
 
その改善は上司には見えないことも多いだろう。
 
だから上司から
 
「何で成長しないの?」
 
と言われることもあるだろう。
 
でも自信を持って欲しい。
 
改善し続けていれば、必ず将来一目おかれるような人間になっているから。
 
 
 
 

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2022-02-02 | Posted in 週刊READING LIFE vol.156

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