週刊READING LIFE vol.165

思い出の目印《週刊READING LIFE Vol.165》

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2022/04/11/公開
記事:篠原蘭(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
思い出の目印

篠原蘭(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

最近、我が家には大きな変化があった。家族が増えたのだ。
栃木県北部のどこかの山産まれの、子犬が家族になったのだ。
どこかの山産まれというのは、その子犬は元野犬だからだ。愛護センターの譲渡会で、お迎えした子犬なのだ。
 
我が家の家族は大人だけで、さらに家族の半数が高齢者といった状態だ。特に最近は、話の噛み合わない事にイライラすることが増えた。とはいえ、本人にあたることも出来ない。では、私のストレスはどうなる?たまる一方だ。家にいると疲れるなんて。家は疲れを取るべき場所だ。
 
「やっぱりペットがいないと耐えられない」
そう思った私は、母と相談し犬を飼うことにした。次に犬を飼う時は、ペットショップで買うのではなく譲渡会に参加しようと決めていたので、譲渡会へ参加することにした。仕事のスケジュールの関係で、譲渡会への参加条件の事前の説明は母が受けてくれた。譲渡会では、子犬の倍以上の希望者がいたので抽選だった。私達は運良く、2回目の参加で子犬を迎えることとなった。
 
幼いころ私は動物全般が苦手だった。特に、30年ほど前は田舎には野良犬も多く子供のころ何度も追いかけられて泣いていた。こんなに怖いのに、ペットで飼う人たちの気持ちがわからん。そう思いながら、避けて過ごしていた。
しかし、大きくなるにつれ、苦手な物が多いと不便だと感じた。
例えば、私は食べ物の好き嫌いも多い。野菜は葉物以外は基本苦手だ。しかし、仕事の付き合いで食事をする時やお祝いの席など食べ物を自分で選べない場面や、残しにくい場面も増え始めた。無理な食べ物と、苦手だけど無理じゃない食べ物や調理法を自分なりに考えてみた。そして、無理な食べ物以外は食べるようになった。
そして、これを食べ物以外も考えてみた。自分にとって無理だと思うことと、苦手だけど無理じゃないことを考えてみた。その苦手だけど無理じゃ無いことに「動物」は分類された。
 
では、どうやって動物への苦手意識を克服するのは考えた時、動物との接し方がわからないから怖いんだ。と、いうことに気が付いた。じゃ、何か動物を飼えばいい。そんなシンプルな考えに辿り着いた。
しかし、生き物を命を預かるので、最期まで面倒が見れないといけない。当時、私はミニブタが飼いたかったがサイズがミニではなくなる場合もあると知り、大きくなってしまった場合の面倒がみれないと心配になった。それに、餌の準備や診察してくれる動物病院があるのか? 初めて飼うには少しハードルが高い気がした。結局、犬と猫がペットとして多いのは飼いやすい環境が整っているのだと感じた。そこから、さらに犬と猫、我が家で飼うならどっちがいいのか、種類は何がいいのか、色々調べた結果、犬でミニチュアダックスフンドを飼うことにした。犬を飼うと決めたころ、家族が病気にかかり、家は暗くなっていた。
我が家には、新しく、明るい話題が必要だ。今だ。そして、犬を飼い始めた。私の読み通り、私は動物への苦手意思を克服し、家は明るくなった。
 
それから、15年が経ち、昨年秋、先代犬のミニチュアダックスフンドは亡くなった。
そして、先代犬がまだ元気だった頃から「次にまたペットを迎えることがあれば、ペットショップで飼うんじゃなくて譲渡会に参加しよう」と決めていた。
一通り教えてくれるので、初めてならペットショップで買うのも良いと思うが、飼い慣れたら保護された犬を迎えたいと思っていた。
先代犬はミニチュアダックスフンドだったが、この犬種を選んだ理由としては飼いやすさだった。小型犬は散歩が少なくてすむ事や、犬種がわかっていればかかりやすい病気や注意する点など情報が集めやすかったからだ。
しかし、譲渡会となると雑種が多く、最終的な大きさや、注意すべき点もわかりにくいかもしれない。
それでも、大切にできると思った。だって、もう犬が大好きになっていたから。
 
次に、どこで犬の譲渡会が行われているか調べてみた。生き物なのでわからないが、飼ってすぐにお別れは寂しいので、できれば若い犬を迎えたいと思っていたで「栃木県動物愛護指導センター」が行う、子犬の譲渡会に参加することにした。希望した決めてとしては、組織がしっかりしていると感じたからだ。譲渡後もしつけ教室なども行っているというのも、ポイントだった。
センターの譲渡会に参加する子犬は、栃木県内で保護された子犬が参加するそうだ。しかし、譲渡会に参加する子犬の数は多い時もあれば少ない時もある。実際、10匹の子犬に対して40人以上の希望者という月もあった。センターの譲渡会では、希望者が子犬を第二希望を提出し、希望者多数の場合は抽選を行う。子犬の数と希望者の数が合わないので、ほとんど抽選になるそうだが、倍率はかなり差があるらしい。
私たちが参加した回でも、子犬が並んだなかでも圧倒的にイケメンな子犬がいた。多分、あの子は人気だったと思う。我が家は女の子を希望していたので、イケメンは希望には出さなかったが、もし、犬の世界にもバレンタインデーの文化があるとしたらあのイケメンはかなりの数のお菓子を渡されると思う。
そんな激戦の抽選会を我が家は運良く、2回で終えたのだ。中には半年以上かかる場合もある、とスタッフから説明されたがラッキーだった。何度か神社に「我が家にあう犬をお迎えできますように」とお参りに行って良かった。
 
こうして、我が家にやってきた子犬は推定3ヶ月の女の子、「栞」と名付けた。本を読んだ目印になる、栞のように家族の思い出の目印になると良いと思った。と、いう意味もあるが、高齢の家族が先代犬と名前を間違えないように先代犬と違う響きで、漢字は自分と同じ左右対称の名前にしたかったという意味もある。色々な条件や意味をもって、「栞」と名付けた。
 
栞が来てからの我が家は、明るくなった。世話をする時間があるので、自分の自由時間は減ったのだが、家が楽しくなった。これまで、口を開けばお互いの不満が多かった家族の会話も「今日の栞ちゃん」の話をするようになった。ご飯を残さず食べた、昨日より長く待てができた、今日はこのおもちゃとよく遊んでいた、など、栞の話をする嬉しい。
私は家だけでは足りずに職場でも、栞ちゃんの話ばかりするようになった。
 
これから栞がどんな犬に成長するかはわからない。譲渡会に参加した時にセンターのスタッフが教えてくれたが、保護される時、お母さん犬は近くにいることもあるが、お父さん犬は近くにいない場合が多く、譲渡会に参加した子犬たちが最終的にどのくらいの大きさになるかわからないらしい。センターとしては、恐らく15キロから20キロくらいの中型犬になるだろう、とのことだった。
先代犬はミニチュアダックスフンドの中では大きめで成犬時7キロ近くあったが、栞は推定4ヶ月の現在で5キロになった。飛びつく時の力も強い。これは成犬時、一緒に遊べるのだろうか?と、心配になる。私も栞と元気に過ごすため、体力作りをする必要があるかもしれない。一緒にたくさんお出かけしたい。
 
家に帰っても楽しくないからと、家に着いてからもしばらく車の中でスマホを眺めることはもう無い。今日も栞のに早く会うために、早く帰るのだ。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
篠原蘭(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

2021年8月、連休も旅行にも行けないし、何か学んでみよう。と、ライティングゼミの夏季集中コースを受講。派遣社員として働きながら、占い師、カメラマンとしても活動している。自分の好きなものを自分の言葉で広めたいとライターズ倶楽部へ参加。

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2022-04-06 | Posted in 週刊READING LIFE vol.165

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