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週刊READING LIFE vol.178

人間の最大の罪は不機嫌である《週刊READING LIFE Vol.178 偉人に学ぶ人生論》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

2022/07/25/公開
記事:丸山ゆり(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
「なんでそんなに、いっつもイライラしているの?カルシウムが足らんのと違う?」
 
娘が幼かった頃、娘に対していつもキツく当たる私に、実家の母が言っていた言葉だ。
やんちゃで走り回る男の子を2~3人育てているわけでもなく、一人っ子の娘に対して私はいつもイライラして叱ってばかりいた。
 
私の特技は、物心ついた時から整理整頓が上手く出来ることだった。
小学生の頃、実家が家を建て直し、初めて子ども部屋を与えられた。
勉強机とベビーダンス、そして妹と二人で使う二段ベッドがあるその部屋は、まるで私にとってはお城のような嬉しい場所となった。
勉強机の引き出しの中は、お菓子の空き箱や缶を使ってテトリスのようにきれいに敷き詰め、そこには鉛筆や消しゴム、定規やセロテープなどの文房具をきれいに収納していた。
ノートを入れるのは、一番下の引き出しで、そこには立てて収納していた。
モノを失くすことも、壊すこともなく、きれいに整頓し、丁寧に使う、そんな子どもだった。
反対に、昭和一桁生まれの母は、モノの整頓が全く出来ず、家の中の私の部屋以外には、母のモノが溢れているような状況だった。
そんな母は、大事な書類、失くしてはいけないモノがあると、必ず私に保管してほしいと持ってくるくらいだった。
 
生まれつき、整理整頓が出来ていた私は、皆、誰もがそうであることで、何でもないことだと思っていた整頓が、実は私自身が持つ、特殊な技術だとわかったのは、子どもが出来てママ友との付き合いが始まってからだった。
 
「片づけができない」
 
それが、現代の、特に主婦の三大悩みの一つのように感じるくらい、どのママ友も片づけに悩んでいた。
ところが、わが家を訪れたママ友たちは、いつもきれいにしていることに驚き、皆が褒めてくれた。
そこでやっと、整理整頓が出来る私って、本当はスゴイんだ、そう思うようになったのだ。
そういえば、実家の母も学校の先生も、整理整頓が出来るといつも褒めてくれていた。
ただ、私の中では成長するとともに感じるようになった、あるモヤモヤがあったのだ。
母や先生、ママ友など、外側からはいつも褒められているのだけれど、自分自身はどうだったのだろうか。
新築のマンションに引っ越しても、友だちに遊びに来てもらおうと積極的には思わなかった。
読みたい本があると、駅前のカフェに行って読んでいた。
一人娘に対しては、毎日イライラして叱ってばかりいた。
どうも、家が好きでなく、居心地が良くなかったのだ。
そんな外側と内側のギャップにいつもモヤモヤしている自分がいたのだ。
 
その答えがずっとわからなかったのだが、ある時、偶然、書店で見かけた「断捨離」の本との出会いから、その答えにたどり着くことができたのだ。
その本にかかれていたのが、「モノをたくさん持っているのが幸せではない。お気に入りのモノを側に置いて暮らすのがごきげんで幸せ」
そのような言葉だったのだ。
 
私は、この文章に衝撃を受けた。
まず、お気に入りがわからなかったのだ。
自分の手元にやって来たモノは全て保管して、従姉や兄からのお下がりの服をいつも着ていて、結婚するときも、お互いの家に残っている引き出物などを寄せ集めて生活をスタートした。
「これが好き」と言って、モノを選んだ記憶があまりなかったのだ。
 
さらには、ごきげんではないということに気づいた。
家は片づいているのに、毎日イライラしていた自分。
ちっともごきげんではなかったことがわかり、ハッとした。
その本との出会いから、直感でこれまでの私のモヤモヤの答えが、この、「断捨離」を知り、やってゆくことで得られるような、そんな気がして飛びこむこととなったのだ。
 
断捨離が私の未来の希望のようにも思えて、私は実際に断捨離を学ぶセミナーというものがあると知り、すぐに申し込んだのだ。
そこから、さらに断捨離を進め、モノの片づけのみならず、やがては断捨離トレーナーを目指す講習を受けるまでにもなっていった。
そして、学びを深めるために、トレーナー講習生となってからもセミナーを受けることとなった。
 
あるセミナーを受けたとき、私が出会った言葉があった。
 
人間の最大の罪は不機嫌である
 
これは、ドイツの詩人、ゲーテの言葉であるとその時に私は知った。ただ、この言葉を読んだ瞬間、私は疑問が湧いてきた。
 
「えっ、何か違うよね」
 
そう、私が想像する、最大の罪とは、戦争であったり、大量殺人であったり。
とてつもなく凶悪な犯罪を起こすことこそが、最大の罪と呼べるのではないか、と。
ところが、その時にこの言葉の持つ意味の説明を聞いたとき、私はハッとした。
 
「ごきげんな人は戦争を始めようとは思わないし、罪もない人に対して凶悪な犯罪を起こそうとは考えないよね」
 
確かにそうだ。
そういった最悪な事件の引き金になるのは、それらを実行しようとする者の心持ち次第なのだ
もしも、ごきげんで日々幸せに暮らしている人が、何の罪もない他者にたいして、そんな残酷なことをしようと思うだろうか。
ごきげんな人は、他者のことを云々と批判することなく、まずは自分自身のやるべきこと、やりたいことに夢中になっているだろう。
日々の生活や環境に対して何かしらの不満があると、その目線は他者へと向いてゆき、妬みや不公平さに気持ちが集中し、やがてはその不満を誰かにぶつけてゆくことに発展するのかもしれない。
やっぱり、そもそもの原因は、大事な礎となっているのは、その人の気持ちなのだと思う。
 
そう思ったとき、私が飛び込んだ「断捨離」の世界は、まずは今の自分の目の前の環境に意識を向け、自分に出来ることを一つずつやってゆくことなのだった。
そうすることで、これまで他者に向けて注いでいたエネルギーを自分に向けて注ぐことへと変わってゆき、そうすることで自己探求を進め、自己肯定感を育んでゆくことへと繋がってゆくのだ。
そんな実践を積み重ねてゆくと、ごきげんな自分に変わっていっているのがわかる。
 
そうすると、ちょっと壮大な表現になるかもしれないが、世界平和を望むならば、まずは自分のごきげんな環境づくりが大切だと確信したのだ。
整理整頓が出来ることが周りからいつも褒められ、特技だと自負していたところ、内面の自分自身が真逆の気持ちだった過去。
そのギャップのモヤモヤ感は、偶然出会った「断捨離」の世界に飛びこむことで、その解消の糸口に出会えた。
必要かどうかも考えず、ただ自分の所へ来たモノを無意識、無自覚に整理整頓していたことは、自分よりもモノを主役にしていたのだった。
そして、すでにもう関係なんて終わってしまった、必要でもないようなモノを身の周りに置いていることで、自分の家でありながら居場所を見失っていたのだ。
見た目には片づいていた家だったが、本来の意味での片づけをしていなかったのだ。
自分の家をただ倉庫のようにしてしまっていたことに、断捨離が気づかせてくれたのだ。
そこから断捨離によって私の人生はモヤモヤを解消するだけではなく、180度違って行ったのだが、さらには人生の支えとなる言葉にも出会った。
 
人間の最大の罪は不機嫌である
 
私が今、断捨離トレーナーとして仕事をしていることは、目の前のクライアントをサポートし、ごきげんへと入れ替えてゆくお手伝いだ。
それがさらに広がってゆくことは、つまりは世界平和のお手伝いをしているとも言えるのだ。
私の人生とともに、周りのご縁ある人たちの人生をも入れ替えてゆけること、それはとても誇りに思える仕事となっている。
200年ほど前、ドイツの詩人、ゲーテが発した言葉は、今の私の仕事の根っこを支えてくれている、とても大切な言葉だ。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
丸山ゆり(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

関西初のやましたひでこ<公認>断捨離トレーナー。
カルチャーセンター10か所以上、延べ100回以上断捨離講座で講師を務める。
地元の公共団体での断捨離講座、国内外の企業の研修でセミナーを行う。
1963年兵庫県西宮市生まれ。短大卒業後、商社に勤務した後、結婚。ごく普通の主婦として家事に専念している時に、断捨離に出会う。自分とモノとの今の関係性を問う発想に感銘を受けて、断捨離を通して、身近な人から笑顔にしていくことを開始。片づけの苦手な人を片づけ好きにさせるレッスンに定評あり。部屋を片づけるだけでなく、心地よく暮らせて、機能的な収納術を提案している。モットーは、断捨離で「エレガントな女性に」。

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2022-07-20 | Posted in 週刊READING LIFE vol.178

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