週刊READING LIFE vol.188

神様が教えてくれたこと《週刊READING LIFE Vol.188 「継続」のススメ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

2022/10/03/公開
記事:丸山ゆり(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
「こういうことって、辞めるとバチが当たるのかな」
 
ずっとずっと、もうずいぶんと長く通うその道を一人歩いていると、ふとそんな思いが頭をよぎった。
いつの頃からか、知らずそんな思いがどこかに湧いてきたんだと思う。
ということは、私自身がもうそろそろ、「辞めたい」と思っていたんだろうな。
でも、それと同時に不安を抱いたのも事実だった。
ああ、いつもそうだけど、なかなか決められないのだ。
特に、こんな、お参りに通うというような行動は。
 
関西に住む人ならば誰もが知る有名なお寺、清荒神。
古くから、「荒神さん」と呼ばれるほど親しまれ、信仰されている人が多いお寺だ。
有名なのは、火の神様、かまどの神様ということで、台所にこの清荒神のお札を祀る家も多い。
私も知らなかったが、この清荒神はかまどの神様でもあるが、「女の守り神」とも言われているらしい。
そのことを教えてくれたのは、今から20年以上前、何かとお世話になった年長者の女性だった。
 
2000年の春、突如自分の身に降りかかってきた、大きな問題。
でも、自分自身ではどうすることもできないのだが、まるで事故にでも遭ったようなそんな心境に陥ってしまっていた。
そんな時、その年長者の女性が、清荒神へのお参りを勧めてくれたのだ。
そう、「女の守り神」だから、きっとあなたの気持ちの支えになるはずだ、と。
何をどうしていいのかわからず、動きすら止まってしまっていた私にとっては、出来ることがわかっただけで嬉しかった。
それに、清荒神の神様にすがりたい気持ちも大きかったのだ。
 
当時まだ30代だった私は、それほど信心深いわけでもなく、お寺にお参りに通うことも初めてだった。
なので、その年長者の女性が教えてくれた通り、素直に実行したのだ。
まずは、毎月、清荒神へお参りに行くこと。
お札を受けて、自宅でも祀ること。
毎月のお参りは、ずいぶん長い間、実家の母と一緒にお参りに行っていた。
最初に清荒神へお参りに行った際、母と一緒にお札を祀るお社やお供え用のお水や洗い米、お塩やお酒の神祭具を揃えた。
その日から、私は教えてもらったように毎朝、お水やお塩を祀り、手を合わせるようになった。
実家にいた時は、仏壇や神棚のお世話は全て母がやっていて、何をどうするのかも知らなかった。
家庭を持ち、自らが神棚を祀り、手を合わせるようになるとは思ってもいなかった。
 
ところが、実際にやってみると、これがとても気持ちがいいのだ。
お札を収めるお社や神祭具を揃えたお店のご主人が、親切にもお祀りの仕方を絵で描いて教えてくれていた。
お水と洗い米は毎日取り替えて。
お酒とお塩は、1日、15日に取り替える。
花瓶には荒神松と呼ばれるモノをお供えして、枯れてくる前に買い替えて。
朝起きて一番にこの清荒神のお水やお塩、洗い米を用意して礼拝すると、頭も心もスッキリしてとても清々しい気持ちがするのだ。
短い時間だけれど、礼拝に集中して、神聖な気持ちになることは、一日の生活の始まりの時間ということもあって、とても意欲的なスタートへと繋がるのだ。
 
毎朝の礼拝、毎月一度のお参り。
これが新しい私の習慣となって、それが生活の一部となっていった。
当時、清荒神へのお参りには、往復2時間以上はかかった。
それでも、お参りの日には実家の母と待ち合わせをして一緒に長い参道の坂道を登って行った。
今月もお参り出来たね、と思うと何かしら達成感に似た感情も湧いてきて、それも満足感となっていった。
そして、何をして良いのかわからなかった私が、こうしてやることを見つけられて、それを真摯に続けていることで少しずつ気持ちも軽くなっていった。
これが何かしらの信心の気持ちを持った者が感じる思いなんだろうか。
自らの心を穏やかにしてくれるのが、こうした信仰なんだろうか。
とにかく、言われた通り、毎日続けるということは私の得意技でもあった。
コツコツと継続することは、難しいことではなかった。
 
そんな荒神さんをお祀りし、礼拝する日々は18年半ほど続いた。
お参りするきっかけとなった、大きな問題は、やがては私自身の問題ではないと切り離して考えることが出来るようになっていった。
そして、その根本原因を作った人との関係も断つことが出来たのだ。
それでも、荒神さんにお参りすることは気分も良いことなので、ずっと続けていたのだ。
 
ところが、ある時から、その清々しかったお参りが、行かなくてはいけない義務のようなモノへと変わっていったのだ。
「今月も行かないといけない」、そんな思いとなっていったのだ。
けれども、神棚に礼拝すること、お参りに行くというようなことを辞めてしまうことは最初は考えられなかったのだ。
ただ、そこから自分の気持ちに向き合ってゆくと、やはりもういいのかな、という答えが新しく出て来たのだ。
 
でも、続けることは得意なのに、それを辞めることが苦手な私。
特に、このような信仰についてはそのハードルはさらに高くなっていたのだろう。
正直、なかなか決められなかったのだが、いよいよ「お終い」の日を迎えた。
私の場合、この清荒神へのお参りは最初は何かにすがりたいような思い一心で始めたモノだった。
だから、年長者の女性のアドバイスに従い、お参りを始め、ずっと継続してきた。
 
これまでは、お寺や神社にお参りするというと、何かしらお願いをすることが多かったかもしれない。
 
ところが、この清荒神にお参りし、家でお祀りする日々は、ただただ、私の心の安寧のためだったように思う。
そして、その気持ちがやがて落ち着いてきたことが、何よりもこの荒神さんが私にもたらせてくれたモノだったように思うのだ。
長い間、お参りすることで私の気持ちの持ち様は変わってゆき、かつてすがりたい気持ちで一杯のとても弱い私はもうずいぶんと成長出来たのだろう。
それだったら、その感謝の気持ちを伝え、一旦、このお参りの日々を終えることは悪いことではないし、バチが当たることなんか一切ないだろう。
そんな思いもはっきりと心の中から湧き上がり、そう信じられるようになった時、私は18年半のお参りを辞めることが出来た。
家の中でのお祀りは、さらに続けていったのだが、こちらも約2年後には終わることにしたのだ。
 
何かを続けるということは、その大きなきっかけがあるはずだ。
健康を意識して運動をするとか、資格を取るために勉強するとか。
やみくもに動くのは、どこへ向かって行っているのかがわからないと動き方も定まらないし、その動きにも不安がよぎり、やがて止まってしまうこともあると思う。
「このために」という自分の強く、熱い思いがあれば、それに向かう行動は一ミリの無駄も迷いもなく続けられることが気持ちいいと私はいつも思うのだ。
 
やがて目標が達成できたとき、それまでの行動を褒め、労うことでまた心の達成感も味わえるはずだ。
私が18年半通い続けたお参り、さらに20年に渡る朝の礼拝は、私の人生において間違いなく多くのモノをもたらせてくれた。
心の安寧と、気持ちを向ける方向、さらにはどのように人生を生きてゆくのか。
でも、それはきっとお参りや礼拝で自分に集中することで、きっと神様が自らの中から答えを見つける力を授けてくれたのだと今は思うのだ。
継続するからこそ、達成できること。
継続するからこそ、学べること。
そんな大きな経験が、必ずあると私は信じている。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
丸山ゆり(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

関西初のやましたひでこ<公認>断捨離トレーナー。
カルチャーセンター10か所以上、延べ100回以上断捨離講座で講師を務める。
地元の公共団体での断捨離講座、国内外の企業の研修でセミナーを行う。
1963年兵庫県西宮市生まれ。短大卒業後、商社に勤務した後、結婚。ごく普通の主婦として家事に専念している時に、断捨離に出会う。自分とモノとの今の関係性を問う発想に感銘を受けて、断捨離を通して、身近な人から笑顔にしていくことを開始。片づけの苦手な人を片づけ好きにさせるレッスンに定評あり。部屋を片づけるだけでなく、心地よく暮らせて、機能的な収納術を提案している。モットーは、断捨離で「エレガントな女性に」。

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2022-09-28 | Posted in 週刊READING LIFE vol.188

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