週刊READING LIFE vol.201

今年もアイドルで心に潤いを与えます宣言《週刊READING LIFE Vol.201 年末年始のルーティン》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

2023/1/23/公開
記事:川端彩香(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
23時45分、テレビを毎年お決まりのチャンネルに合わせる。
特別オタクなわけでもないし、ファンクラブに入って課金するほど彼らに入れ込んでいるわけではないが、私は毎年『ジャニーズカウントダウンライブ』、通称『カウコン』を見て年を越す。
 
私がジャニーズに本格的に興味を持ったのは中学1年生の時だった。これまで脱退が相次ぎ現在3人のメンバー構成になってしまったNEWSがデビューした年だ。
バレー部だった私は、当時「メグカナ」が有名だった女子バレーの世界大会を熱心に見ており、そのサポーターをしていたのがNEWSだった。山Pを中心としたメンバー構成だったが、私が当時からずっと好きなのは「まっすー」こと増田貴久だ。彼のクシャっとした笑顔に、中学1年生思春期真っ只中の乙女(と言えるほど可愛くはなかった私)のハートは見事に撃ち抜かれてしまったのだ。それまで女性アイドル(モーニング娘。)にしか興味がなかった私だが、初めて男性アイドルの生写真を買い、『Myojo』『Wink』『POTATO』など、ジャニーズグループのインタビューが掲載されている雑誌を、KAT-TUNが好きだった妹と一緒に手分けして買い、毎月の楽しみとして読み込む。まっすーが「虫が苦手」とインタビューに答えていると、「私は虫苦手じゃないから一緒にいても大丈夫だよ! まっすーに群がる虫は、私が退治してあげるよ!」と一緒の空間にいること前提の妄想をしたこともあった。あれから17年ほど経過したが、未だまっすーと同じ空間にいたこともないし、実物をお目にかかったこともない。
 
高校に行くと少し熱も冷め、雑誌を買うこともなくなったが、CDはたまに買っていたし、別のバンドにハマるまではNEWSの曲をよく聴いていた。クラスにジャニオタがいて「ジャニーズやったらまっすーが好きやなー」と言っただけで少し変わり種扱いされてしまった時は必死にまっすーの良さを説いた。その力説具合から「ジャニオタやん」と言われた時は、またもや必死に自分は決してジャニオタではないことを説いた。ジャニオタほど彼らにお金を落としていないし、ファンクラブにも入っていないし、ライブにも行かない。でも一般の人よりもジャニーズについては知っているし、デビュー組のメンバーの名前は全員言えるし、リリースされた曲はほとんど知っているしなんなら歌える。そう、私は「オタク」と呼ぶには浅すぎて、「ファンではありません」と言うにはジャニーズに関する知識が豊富という、いかにも中途半端な奴だったのだ。
 
2023年現在、私は今も変わらずジャニーズに関しては中途半端な奴である。まっすーは相変わらず好きで、出演メディアを追うほどではないが、テレビに出ているとなんとなく見てしまうし、雑誌に載っているとなんとなく立ち読みしてしまう(決して購入しないところが中途半端さを強調している気がする)。そして最近はなにわ男子にも手を出していて、中でも大橋くんがお気に入りである。どうやら私はクシャっとした笑顔の童顔男子が好きなのかもしれない、と17年越しに自覚をした。なにわ男子に関しては、NEWSのようにCDや雑誌を買うことはないが、ローソンで対象商品3点購入すると、なにわ男子の限定クリアファイルが手に入るキャンペーンには参加し、欲しくもないハイチュウをたくさん買った。しばらくハイチュウの消費に必死になり、ハイチュウを食べると少し気分が悪くなるという謎現象が起こってしまった。
 
とにもかくにも、私は今も中途半端なジャニーズファンなのだ。
 
どっぷりと浸かることはないものの、私はなぜ思春期から現在に至るまで、ジャニーズの魅力に細く長く惹きつけられているのだろう。それはやはり、私に足りていない「キラキラ」を求めるがゆえのような気がする。
 
30歳独身、一人暮らし、彼氏なし、もちろん結婚予定もなし、仕事は最近特に楽しく感じない、というのが私の現実だ。毎日疲れて帰ってきても1人で、話す相手もいない。適当にテレビをつけて、明るい気分になるためにチャンネルを数秒単位で切り替え、だいたいはお笑い芸人の出ているバラエティ番組で落ち着く。帰宅してから誰とも喋ることない、乾いた生活を送っている私にとってはお笑いで笑うことでも十分潤うのだが、なんだかこう、キラキラしたものが見たくなる衝動がたまにやってくるのだ。そして、そういう時にぴったりなのがアイドルなのである。
 
ジャニーズだけでなく、K-POPや日本の女性アイドルのPVをYouTubeでひたすら流し続ける。彼らがトーク番組で喋っているところを見るのも好きなのだが、やはりアイドルは歌って踊っている時が一番キラキラしていると思うのだ。バキバキでキレキレのダンスを踊っているのも好きだが、「これぞ、ザ・王道アイドル」というような、キラキラした笑顔を振りまきながら楽しそうに踊っている曲の方が私は好きだ。
楽しそうだな、この子の笑顔素敵だな、可愛いな、あの子はスタイルがいいな、など、頭の中をキラキラのアイドルたちのことでいっぱいにする。そうしていると、気持ち悪いことは重々承知だが、私の顔も自然と緩んでニヤニヤしてしまうのだ。ただアイドルが歌って踊っているところを見ているだけなのに、なんだかとても幸せな気分になってしまうのだ。
 
ここ数年、オーディション番組が日本だけでなく世界で流行っている。ジャニーズに関しては広く浅い知識ながらも網羅しているが、それ以外に関しては正直、ほとんど網羅できていない。わかるのはTWICEとNiziUぐらいな気がする。歌を聴けばわかるけれど、街中ですれ違っても気が付けないと思う。それでも、そういうアイドルたちのパフォーマンスを見たとしても、私の脳内はキラキラとした潤いに満ち溢れるのだ。私は自分で思っているより「アイドル」という存在が好きなのかもしれない。
 
今回のカウコンは、Sexy Zoneメンバーのラストステージであったり、King&Princeが5人で出演する最後のカウコンであったりと、最後の見納めが多く、少し寂しい気持ちにもなった。彼らのファンからすると、例年のように純粋な気持ちでカウコンを楽しめない人もいただろう。私も生粋のファンというわけではないのだが、彼らをテレビで見て、曲も知っているものが多いため少し複雑ではあったが、そのパフォーマンスにはやはり、いつも通り惹きつけられた。やはり私は、アイドルがパフォーマンスしている時が一番好きだなと思ったし、いつまでも見ていたいと思った。それくらい、私にとってアイドルは心を満たしてくれるものだと気付いたのだ。
 
1年間、楽しいことばかりではなかった。正直、2022年はしんどいなと感じることが多かった。特に下半期、自分なりに楽しい予定も詰め込んでいたつもりだったが、仕事や社内の人間関係で上手くいかないことが増え、ストレスは確実に溜まっていった。心身のバランスが崩れたこともあった。前より自分があまり笑わなくなってしまったような気もした。
 
そんな時でも、アイドルの歌を聴いて通勤して元気を出した。休憩時間や帰宅してからは彼らのパフォーマンスも見た。決してラクな職業ではないアイドル。歌やダンスレッスンに励み、歌番組でのパフォーマンスでは「口パク」と言われ、そのくせ生歌唱で少し音程を外すと「音痴」と言われ、スタイルも少し崩れると「太った」「デブ」などと心無い言葉もネットで飛ぶ。アイドルだって疲れているだろうに、その疲れを見せてしまうもんなら「態度が悪い」だの「生意気」だの言われる。アイドルというのは、決してキラキラしているだけの職業ではないのだ。
 
それでも彼らは歌って踊って、私たちにキラキラを届けてくれる。日常生活に疲れ切った私たちに、キラキラを通して潤いを与えてくれる。アイドルは大変な職業だが、それ以上に、彼らのパフォーマンスを見ただけで人を元気にすることができるという、素晴らしい職業の人々なのである。現に、私は彼らに助けられている1人だ。
 
2022年も無事に、ジャニーズアイドルたちのキラキラした笑顔とパフォーマンスと共に、新年を迎えることができた。今年も頑張るぞー! と意気込んだのも束の間、仕事が始まると途端にそんな勢いも失速し、「休み……早く私に休みを……」と平日は常に瀕死状態だ。
 
ああ、今年も早速、アイドルたちのお世話にならなければ……!
 
私はリモコンを手に取り、画面にYouTubeを開く。
さて、今日はどのアイドルを見ようかしら。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
川端彩香(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

兵庫県生まれ。大阪府在住。
大阪府内のメーカーで営業職として働く。コロナ禍で当時付き合っていた彼氏に振られ、見返すために自分磨きを開始し、その一環で2021年10月開講の天狼院書店のライティング・ゼミに参加。2022年1月からライターズ倶楽部に参加。文章を書く楽しさを知り、振られた頃には想像もしていなかった方向に進もうとしている。

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2023-01-18 | Posted in 週刊READING LIFE vol.201

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