週刊READING LIFE vol.204

脳みそフル回転からの?!《週刊READING LIFE Vol.204 癒される空間》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

2023/2/14/公開
記事:大池牧子(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
ぎゅーっと抱きしめる。耳を胸にあて「ドク! ドク!」心臓の鼓動を聞く。
あー、ちゃんと生きているなぁ。としみじみ思い、娘の命があることを有難く思う。
娘の暖かい手を握り締める。あんなに小さかった手が、こんなに大きくなって……と思う。
おでこをなでる。額にかかった髪の毛をキレイに整える。大きくなったけど、おでこのカタチはまだまだ幼い感じがするところもまた愛おしい。
ほっぺに、自分の顔をくっつける。若いのでぷりぷりしていて張りがある。ぷにぷにしていて気持ちがいい。
そして、鼻を近づけて娘の匂いを感じる。
そして、「大好き!」と言って、さらに抱きしめる。
 
私が朝起きる時、夜寝る前に必ずやっていること。私が「癒される」時間だ。
この時間、ここで味わう感覚が、私の活力の源でもある。
 
仕事をしていると、月曜から金曜日は朝の9時から夜は20時ごろまで、脳がフル回転だ。身体を使っているわけではないのに、仕事が終わるころには激しい疲労感が襲ってくる。
とにかく脳みそをフル回転させている。考えて、話して、聞いて、考えて、頭ばかりを使っているからなのだろう。
 
仕事が終わって一息ついても、そこからやるべきことはまだある。夕食の支度をして、ご飯を食べて、食事の後片付けをし、洗濯物をたたむ。家のことで後回しになりまくっているタスクをこなす。お風呂に入り、テレビを見たり本を読んだりのちょっとした自分の時間を挟んだら、もう寝る時間だ。
そして、朝はあっという間にやってくる。まだ寝たばっかりなんですけど……。と思いながらやむなく起床。バタバタと子供を学校に送り出し、1時間もすると仕事の時間だ。
そんな毎日を送っている私にとって、朝夜の娘との時間は癒され安心する。
 
この「癒し」の正体は、何なんのだろうか。どんな瞬間にどんな条件で「癒し」は訪れるのだろうか。
 
癒されているなと感じるときのことを思い出してみた。そこには、五感に意識を向け、そこからの感覚を味わっているという共通項があるのではないかと思った。
 
五感(視・聴・嗅・味・触)で何かを味わっているとき。「癒し」が訪れてくる。
 
目の「視」
綺麗な景色を見た時は脳主体の意識から解放され、目からの情報を味わえるようになる。
飛行機から見えた、地面からは絶対に見ることができない夕焼け。
仕事をしているときにふと目に入る、パソコンの美しい景色のスクリーンセーバー。
スマホが時々おススメしてくれる、旅行の時に撮影した、ハワイの海。
脳フル回転をちょっと緩ませてくれる。目から入る情報に意識を向けると、脳が休まれ、癒される感じがする。
 
耳の「聴」
瞑想をしているとき、いつもは耳に入らない音が聞こえてくる瞬間。普段は聞こえなかったのに耳を澄まして聞くことそのものが、今を味わっているという感覚が充足感になり、その状態にいる自分を感じて癒される。
好きな曲を聴いているとき。広い草原で青い空の下、風を受けている自分をイメージし、心が開放される気持ちになる。
 
鼻の「嗅」
いい香りのお香や香水。
美味しい料理の匂い。
布団を干した日の布団の太陽のような匂い。
娘の汗とシャンプーが入り交ざった髪の匂い。
寒い冬の朝、外に出た時の、澄んだ空気の匂い。
匂いに意識を向けると、脳にばかり意識が行っていた自分をふと引き戻してくれる。
 
舌の「味」
デトックス時の味覚が研ぎ澄まされている時のだし汁。舌が敏感になり「だし汁ってこんな味だったのか!」と喜んでいる。
旨味が出ているおいしいラーメンスープを舌をフル活用して味わっているとき。
餃子とビールの交じり合う感じ。ワインとチョコの味変。味変を感じようと、舌が味そのものに意識を向けている瞬間。
 
手の「触」
愛おしいものに触れて、暖かさ、湿り気、手から感じる音。
ふかふかのタオル。お風呂の水を触る感触。
 
我々は五感から様々な「癒し」をもらっている。
五感から感じることには、どれもこれも、ある共通点があるのではないだろうか。
それは、五感に意識を向けている時という共通点だ。
五感に意識を向けている時じゃないと、上記の感覚は生まれない。つまり五感に意識を向けることが、「癒し」の必須条件なのだと思う。
 
平日の昼間は脳がフル回転している。五感に意識を向けている暇がない。「癒し」とは切り離された時間帯だ。
例えば、平日のお昼ご飯。
時間がないので仕事をしながら食べ、10分くらいで終える。舌を使っているはずなのに、脳がフル回転で、舌に意識を向けていないので何も感じない。
 
耳からの情報も、脳の回転具合で、入る時と入らない時がある。
我が家の近くには電車が走っている。耳を澄ませば電車の音が聞こえるはずなのに、脳みそフル回転時の耳は、相手の欲求や意図を汲み取るために使われている。ただツールとして耳を使っているので、本当は聞こえるはずの音が聞こえなくなっている。聞こえていないことにも気づいていない。
 
五感に意識を向けているからこそ、「癒し」が訪れる。
では、五感に意識を向けたら、必ず「癒し」は訪れるのだろうか。
 
娘との朝と夜の時間は、五感をフルに使っている。
ただ娘の顔を見て(視)心臓の音を聞き(聴)髪の毛の匂いを嗅ぎ(嗅)ぷにぷにしたほっぺを触る(触)・五感を使ってその時間を味わっている。
 
この時間を味わえるのは、脳がフル回転のときがあるからこそなのではないかと思う。
五感にただ意識を向けるだけではなく、脳主体の脳フル回転状態があるからこそ「癒し」を感じられるのではないかと思う。
 
普段、脳を使い、何かを成し遂げなくてはと緊張を感じている。
緊張からの、五感に意識を向ける緩みがあるからこそ、癒される。
 
それは、ゴムをピンピンに伸ばして、ふっと緩める。この緩める瞬間自体が「癒し」みたいなイメージである。
 
例えば、思いっきり力を入れて伸びをする。ふっと力を緩める。この緩める瞬間に来る気持ちの良い感覚。力を緩めた状態だけでは、気持ちよさはない。緊張からの緩みが心地よい。
 
我々現代人は、時間に終われ、休む暇を惜しんで活動している。
何かと何かを並行して行い、五感に意識を向ける暇などない。でもそれがダメかというとそうではないのではないかと思う。
五感に意識を向ければそれでいいのではなく、脳のフル回転、緊張があるからこそ、五感で味わうことに癒しを感じる。
 
がむしゃらに働き、能力を高めようと頑張り、登って、登って、登りつめて、ふとした瞬間に、「あれ? 私は何をしていたのだろう。何のために登ろうとしていたのだろうか」そんなことを思う時がある。
忙しく慌ただしい日々を過ごして、心をなくしてしまうのは、皆誰もが避けたいだろうし、そんな緊張ばかりの人生をずっと続けることは、心を痛めてしまう。
 
だからといって、それが悪いのではなく、緩みを持つ瞬間をちゃんと作ればいいのだと思う。
 
忙しい⇔暇
緊張⇔リラックス
走る⇔休む
考える⇔ぼーっとする
頑張る⇔怠ける
タスクをしっかりこなす⇔さぼる
 
この緩急があるからこそ、癒される瞬間がより際立つ。
 
要するにバランスなのだ。
 
そして、もう一つ。癒しを感じるのに必要なのは、人とその瞬間を一緒に過ごすことだと思う。
独りぼっちでは、むなしい。
人と味わうからこそ、それが妄想、空想ではなく、本当にそこにあるものだという感覚になる。
 
そして、人と味わっている感覚について語ることで、さらに癒しの輪郭が現れてくる。
一緒に景色をみて、風を感じる。いい匂いだと目を閉じ、一緒にその匂いを味わうと更にいい気分が増幅する。美味しいものを食べ「美味しい!」と共感して、その美味しさがボリューミーになる。人と五感を通じて味わう感覚を通して繋がれる気がする。
 
日々の緊張もありつつ、そこからふと五感に意識を向け、それを誰かと一緒に味わう。
そんな瞬間が、私の「癒し」なのだと思う。
 
こうして、「癒し」に目を向け、意識を向けるだけでも、なんだか癒される感じがする。
みなさんの「癒し」とは何だろうか。どこから、どんな瞬間に訪れるのだろうか。
 
慌ただしい日々、ふと、足を止めて、五感を研ぎ澄ましてみる。
そして、それを他者と共有し、言語化する。
そんなことから、癒される空間を感じることができるのではないだろうか。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
大池 牧子(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

岐阜県生まれ。横浜市立大学卒。
DTPオペレーター、社内SE、Webディレクター、RPAツールの営業とIT畑でキャリアを積む。
2022年天狼院書店のライティングゼミにて、ライティングの楽しさに目覚める。
グロービス経営大学院『「人的ネットワーク」づくりの教科書』東洋経済新報社、2022年の一部の執筆を務める。

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2023-02-08 | Posted in 週刊READING LIFE vol.204

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