「国語力とロジカルシンキング」を構築せよ! ChatGPTがある時代を生き抜くために《週刊READING LIFE》
*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
2023/6/6/公開
記事:河瀬佳代子(READING LIFE編集部公認ライター)
※本記事の内容は、2023年4月23日取材日時点の情報によるものである
2023年3月14日、Open AI(※1) はChatGPT-4を発表した。GPT-4は日本語対応になり、以前のGPT-3やGPT-3.5と比較すると飛躍的に進化した。
このたび天狼院書店では、天狼院カフェSHIBUYAの店舗内に「海の出版社」を構築した。そこで行われる雑誌制作の現場で大きな役割を担うのは、ChatGPTをはじめとしたAIになるとのこと。人間がAIを使いこなすのか、あるいはAIに使われるのか。天狼院書店店主・三浦崇典氏に、今後AIを導入するにあたって人間が備えなければならない「力」について、お話をいただいた。
「考えさせるAI」ChatGPTを導入する理由
——ChatGPTと、検索エンジンとはどう違いますか。
三浦:検索エンジンは世の中にある情報を見つけてリーチするものですが、ChatGPTはそれ自体に「考えさせる」AIです。だからChatGPTに検索させるのは間違った使い方で、ChatGPTに命令するときは「〜〜について教えてくれ」ではなく、「〜〜について調べた上で考えてくれ」です。
検索エンジン自体も変化しています。Bing(※3)が対話型の検索、引用元が明らかな上での検索の対応を始めていて、今後はGoogle検索、いわゆる「ググる」からBing検索が主流になってきそうですね。検索と言語生成AIとの違いが今後は明らかになってきます。
——AIを導入するきっかけについてお話しください。
三浦:雑誌の制作には人的工数がものすごくかかります。エラーも出るしプロジェクトが難航するケースも多い。クリエイターを雇ってもこちらが期待するパフォーマンスを発揮できるかは不明だし、コロナ禍やスタッフの離脱などもあり、雑誌を作ったところで売れるかもわかりません。
AIを導入することによって最小の人員で量産も可能になりますから、これらの問題が一気に解決できる可能性が出てきました。またChatGPTを入れることにより、月毎や期毎などいろいろなパターンで雑誌『READING LIFE』を作れる状況になりました。未知数ですが、未来に対してかなり希望が持てますね。
AIはあらゆることに精通しています。優れたコンサルタントのように賢いAIが、ChatGPT-4 のOpen AI の月額有料プランは2,600円、約20ドルです。学生の2時間くらいの時給で1ヶ月働いてくれるから経営者目線で見ると雇わない理由がない。故にAIを使う選択肢はどう考えても排除できません。
もう雑誌作りはお任せ? 編集におけるChatGPT の得意分野を探れ!
——編集の現場で、ChatGPTを具体的にどのように利用して行こうと考えていますか?
三浦:ChatGPTは企画・立案・編集、果ては執筆までできます。ChatGPTは癖がないので、文章の癖が不要な雑誌向きかもしれません。もしかしたら雑誌制作全般を請け負ってもらえる可能性は出て来ます。
——ChatGPTを用いることで、記事の執筆や編集においてどのような効率化を実現できますか。
三浦:ChatGPTは雑誌のテーマや構成を提案しアイデアを精査する。そしてDALL-E 2(※4)でコンセプトのデザインやアイデアをビジュアル化する。これで生産性は極大化します。
執筆・編集に関しては記事やインタビュー内容を執筆し、文章を自動生成して構成を精査します。ChatGPTを3個のアカウントで契約して全ての工程を同時に走らせたら、一気に記事作成は終わります。
インタビュー記事も、文字起こししたものを入れ込んで書いてくださいといえばおしまいです。質問の内容も高度で、既に専門知識が入っているのでこちらの知的補強をしてくれる存在です。
——AIのコンテンツ生成機能を使って、独自性のある記事を作成する方法は何ですか?
三浦:今の段階だと、プロンプトのやりとりを繰り返して独自性を増していくしかないでしょう。イメージ的には日本刀の作り方で、日本刀は何度も伸ばして折り曲げて型に入れて作ることを繰り返してオンリーワンの名刀ができる、プロンプトの作り方もそれに相当似ています。自分の質問と皆さんの質問とでは違うものが生成されるはずだから、オリジナリティはプロンプト、命令の仕方によって担保される可能性は高いですね。
AI到来時代、国語力とロジカルシンキングに着目せよ!
——AIが様々なアシストをしてくれる世界で、人間が伸ばすべき能力はなんだと思いますか?
三浦:AIは人間が持っている能力を倍加・累乗化してくれます。つまり、人間の基本的な能力が高くなければいけない。基本の母数である自分の能力を最大化すること、その中でも国語力、「読む・書く」が非常に重要です。
今後は天狼院書店のライティング・ゼミやライターズ倶楽部でやっているような「書く能力」が重宝されるでしょう。加えて、AIが言っていることの正誤判断ができないといけません。ゆえに膨大な知識量を担保できるだけの膨大な読書量が必要とされます。どの質問をするとどんな構成になり、何を生成するかを判断する編集の能力、全体把握能力が重要です。
まとめると「クリティカルシンキング(批判的思考)も含めたロジカルシンキング(論理的思考)(※5)が必須」ということです。ロジカルシンキングができる人にとっては、AIは使いやすい。逆にロジカルに考えることができないと、AIも命令を聞いてはくれない。つまり国語力とロジカルシンキングができることが今後の強みになります。
——国語力や読書量、ロジカルシンキングとAIを結びつけた言論はまだあまり散見されません。その中で国語力や読書力の重要性をどのように主張しますか。
三浦:まずChatGPTが命令を聞いてくれるようにするためにはわかりやすい文章、平明文を作って理解させる必要があります。
次に、読書をしなければChatGPTが言っていることの正誤がわからない。自分の脳内ストックに、正しい可能性が高い書籍の情報が入っていることが重要です。書籍については「正しい可能性が高い」ですが、全ての書籍が完璧とは言えません。しかしながらあらゆるメディアのなかで確からしさを証明するものの1つにはなります。この2つの理由から、国語力が必要なのです。
——国語力とロジカルシンキングを伸ばすことに関連して、本の需要の増大が見込まれるかもしれませんね。
三浦:AIの言うことを理解するためには脳内に正しい知識を入れる必要があることから、原理原則の本を踏まえないといけません。それも最近の超ベストセラーではなく、昔からあるアリストテレスみたいな本を読まなきゃいけない。それらの「本」を子どもたちがどの媒体で見るかは自由だと思っていて、YouTubeかもしれないしTVで視聴かもしれない。あるいはラジオで聴くのかもしれません。
情報を仕入れる意味での読書なので、今までの本の読み方とは違うかもしれないけど、それでも紙の本のパッケージで読むことは便利なことは間違いない。ただし紙の本は手段の1つに過ぎません。だから読書量、読解力をちゃんと伸ばす読み方をしないといけない。天狼院の講座で身につくスキルが役立ちます。
AIはただの道具。勝つか負けるかは使い手次第
——ChatGPT含むAIで制作したものは、人間らしさが失われる可能性はありますか?
三浦:人間らしさって、クセとかミスのようなものでしょうか。例えば「ある一定の割合でミスをしろ」とAIに命令したら、逆に人間らしさが出る可能性はあります。人工知能なので、もしかしたら人間より高度に人間らしくなってしまうかもしれません。
——今後人間の仕事は、AIに奪われていくのでしょうか。
三浦:例えば、ドラクエの剣の戦闘能力がものすごく高くなっても、勇者の役割はなくなりませんよね。それと同じで、武器が先鋭化されて強くなるほど、それを使う人も強くなる。すなわち「ChatGPTはただの道具」です。道具が先鋭化されることは、その主人にとって利点です。
AIに仕事を奪われることは、もしかしたらあるかもしれません。逆にAIの出現に伴って生成される仕事も出てくるでしょう。例えばライターの仕事が消えたとしても、それをコントロールする人は必要ですよね。ライティング能力が高い人が10個のAIにライティングの命令をして同時に動かすようになります。同じく画像生成のAIだって、カメラの知識があって、相当写真が撮れる人なら簡単ですよね。カメラマンがいて、武器として画像生成のAIがありそれに命令を出すわけです。
総じて、今後はAIの使い方次第で二極化すると予想しています。AIに対して中途半端に向き合う人は淘汰され、AIを使わないと決めたクリエイターは苦戦するでしょう。つまりAIが使える人が今後は圧倒的に勝ち、総なめ状態にしていきます。
いずれにしろ、どの世界でも格差が生まれるのは間違いないですね。もともと基礎能力が高くてAIを使いこなせる人がこれから強くなり、そうじゃない人は「AIに使われる側になる」可能性は否めません。
天狼院の講座としてはリーディング・ノート読書法やライティング・ゼミは今後ものすごく需要が増える分野と考えています。幼児教育とかにも生かされるかもしれません。幸い、今、世の中は全くそのことに気がついていないので、今のうちに「海の出版社」で準備すれば市場を席捲できるんじゃないかと思っています。天狼院の受講生が今培っているスキルが、今後は一番重要になってくるでしょう。
(※1)サンフランシスコに拠点を構える、AI(人工知能)を専門とする非営利研究機関。https://squareup.com/jp/ja/townsquare/what-is-open-ai
(※2)OpenAIが開発した対話型AIチャットボット。https://www.sompocybersecurity.com/column/glossary/chatgpt
(※3)マイクロソフトが提供する検索エンジン。https://pc.jpita.jp/index.php?20230322
(※4)OpenAIが2022年に公開した画像生成AI。https://www.nikkei.com/theme/?dw=23013117
(※5)クリティカルシンキングは論理的な正しさに加えて、「本当だろうか」といった疑いの視点を持ち、前提条件など物事の妥当性を含めて考えていく思考法です。ロジカルシンキングとは物事に道筋を立て、各段階や各要素別に分類・分解して思考することを指します。https://book.cm-marketing.jp/blog/marketing/critical_thinking/
□ライターズプロフィール
河瀬佳代子(かわせ かよこ)
2019年8月天狼院書店ライティング・ゼミに参加、2020年3月同ライターズ倶楽部参加。同年9月天狼院書店ライターズ倶楽部「READING LIFE編集部」公認ライター。「Web READING LIFE」にて、湘南地域を中心に神奈川県内の生産者を取材した「魂の生産者に訊く!」、「『横浜中華街の中の人』がこっそり通う、とっておきの店めぐり!」連載中。他企業案件実績。
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