週刊READING LIFE vol.228

ライティングを2年続けて見えたもの《週刊READING LIFE》

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

2023/8/21/公開
記事:山田 隆志(週刊READING LIFEライターズ倶楽部)
 
 
8月7日、私は45歳の誕生日を迎えた。年齢を重ねるとうれしい反面、なんだか微妙な感情も芽生えるのが正直なところだ。ただ、2年前の8月7日の誕生日がもう一つの意味を持つようになった。
 
天狼院ライティングゼミ2周年
 
2年前の43歳の誕生日に漠然と何か新しいことを始めたいと思っていた。コロナ真っただ中で緊急事態宣言も発令されており、あまり外出することができない時期であった。たまたまなのかもしれないが、いろいろあった東京オリンピックも無観客ながら無事に開催できたことも無関係ではないのかもしれない。とにかく、43歳の誕生日を迎えると同時に何か新しいことを学びたい体験したいと思って、天狼院書店のライティングゼミ夏季集中コースの門をたたいた。
 
遊びでブログやインスタグラムで文章を書くことはあるにせよ、体系的に文章を学んだことはない。むしろ作文や読書感想文のような宿題はいつも時間がかかり、苦手な作業の部類であった。
 
なぜそんな苦手だと思っている文章を始めようと思ったのか?
 
きっかけは友人のおばちゃんが天狼院書店主催のメディアグランプリというもので見事1位になったことを盛んに自慢されたので、どんなものかと思って読ませてもらったらなぜか涙が出そうになった。おばちゃんの娘さんについての想いを余すところなく文章にぶつけていたので、思わず心を揺さぶられてしまった。おばちゃんそんな文章うまかったっけ? 悔しいけどやはりグランプリをとるにふさわしい文章だなと納得させられた。2位以下の他の人の文章も読ませていただいたが見事に全員うまい。私が書いてきた文章はもちろんのこと他人のブログやSNSを見てもこんなに上手な文章はなかなかお目にかかれない。みんな文章うまいなあと思いながらホームページを隅から隅まで眺めているうちに、気がつけば「ライティングゼミ」の受講申し込みボタンを押して購入した。
 
誕生日を迎えた翌日からライティングゼミの受講が始まった。何かを習いに行くことは久々であり新鮮な気持ちで受講することができた。人に読んでもらえる文章を書くには、いろいろと気を付けることがあるのだなと感心し、文章を書くことを体系的に学ぶことは初めてだったので、これならわたしももう少し上手な文章を書くことができるのではないかと思えた。
 
ライティングゼミの目玉は、夏休みの10日間で毎日2000文字の文章を書いて講師・スタッフからフィードバックをもらい、見事に合格したら天狼院のオフィシャルホームページに掲載されて、多くの読者に読んでもらえるようになる仕組みである。せっかくの機会なので自分なりに頑張ったつもりではあったが、2000文字の文章を書くのにかなりの時間を費やし、気が付けば締め切りギリギリの23時30分を越えてしまうこともあった。結果は10本中すべて不掲載に終わり、フィードバックのコメントは決まって、読者メリットとサービスの精神が足りないとのことだった。さらには「書いていて苦しそうだ」とまで言われてしまっている。実際に文字カウントをいくら叩いても増えることのない文字数に絶望し、永遠に終わらない苦行のように思えた。
 
こうして、夏休みの挑戦はライティングという大きな挑戦と学びを得たものの、10回連続で不掲載に終わり、失意のまま43歳の挑戦は終わってしまった。

 

 

 

こうして文章を書くことを本気で取り組もうと思ったが、自分が考えていた以上に何かを書いて伝えることの難しさを感じてしまった。そして10連続不掲載の結果を受けて、わたしには文章を書くことは向いていないと思った。とはいえ、このまま負けっぱなしで終わってしまうのはあまりにも悔しいではないか。
 
2021年のクリスマスイブ、ライティングゼミの上位クラス「ライターズ倶楽部」へのチャレンジの機会を得ることができた。入試の形で「ライターズ倶楽部」への挑戦となるが、2時間で5000文字程度のコンテンツを仕上げ、テーマは直前に電話で伝えられる。夏のライティングゼミでの2000文字でもひどい時で5時間ぐらいかかっていたのに、2時間で5000文字を書くなんて無謀な挑戦としか思えなかった。それでもこの2時間は人生で最もはやいタッチタイピングだったのではないかと思えるぐらい集中して書いた。文章はひどいものかもしれないがとにかく集中して4000文字まで書き上げることができた。
 
これで終わりだ。2021年は新たなチャレンジとしてライティングに向き合うことができた。たとえ不合格になっても悔いはない。
 
一人きりのクリスマスイブの挑戦は終わった。

 

 

 

クリスマスの日天狼院書店から一本のメールが届いた。
 
「この度はライターズ倶楽部の入試への挑戦、誠にありがとうございます。厳正なる審査の結果、合格といたします。」
 
「どうせ不合格なんだろ」と寝ぼけてスマホをみていたが、メールを二度見してしまった。「えっ不の文字が入っていない。合格ってこと?」これですっかり目が覚めてしまった。思わぬところでクリスマスプレゼントが舞い込んできた。静かに過ごすつもりでいたクリスマスも一人で祝杯を挙げた。

 

 

 

こうして2022年より天狼院ライターズ倶楽部に合流することになった。ライターズ倶楽部での課題は毎週5000文字で、ライティングゼミと異なり毎週決められたテーマにそった作品を作り上げることである。毎週の5000文字の課題はプロのライターに編集者からのフィードバックなので厳しくもあるが、的確なフィードバックをいただくことになる。1週間で5000文字というのは全く未知の領域であり、やはり課題作成に1週間丸々費やすことになることが多かった。
 
しかしながら、ライターズ倶楽部での5000文字の課題で初めて天狼院のホームページに掲載されることができた。あまりにもうれしかったので、私の持つSNSを駆使しながら知り合いにとにかく拡散させては感想を求め、とにかく多くの人に読んでもらうことができた。これまでブログやインスタグラムで何かしらの文章を書くことはあったが、本当の意味で人に読んでもらえる文章を書くことができたのは何物にも代えがたい喜びであった。
 
しかし喜んでばかりもいられず、掲載を勝ち取ることができたのは3か月で10回中2回に終わった。ライティングゼミで惨敗を考えてみたら、2度の掲載は喜ばしいことかもしれない。しかし、夏休みに学んだはずの文章の書き方は全く身についておらず、このまま上位クラスであるライターズ倶楽部にいても良いのだろうか?こうして、上位クラスへチャレンジすることができたからこそ、もう一度基本に立ち返る必要があるのではないか。
 
2022年4月、天狼院書店の店主三浦氏が自ら教壇に立ち、フィードバックも店主自ら行うという「ライティングゼミNEO」が誕生した。通常のライティングゼミでの論点をさらにバージョンアップし6か月にわたり徹底的に鍛えるという。何ともタイミングよく私のための講座が誕生したわけだ。
 
ライティングゼミNEOはこれまでのライティングゼミで学んだことを改めて総復習の場であり、如何にわかったつもりになっているのかが明白になった。私がこれまで何度もフィードバックで言われている「読者メリット」や「書くことはサービス」であるということが、全く身についていないことを痛感させられた。やはり店主の三浦氏のフィードバックは厳しくも的確であり、毎週の課題に取り組んでは2か月ぐらい不掲載を連発していた。ライターズ倶楽部では5000文字を書いていたので、2000文字になったら楽になれると思っていたらとんでもない話で見事に不掲載が続いていた。これまで学んだはずのことが全く身についていないことは身に染みてわかったが、ここまで不合格を連発するのはおかしい、私は本当にライターズ倶楽部に合格したのか?
 
このまま文章を書くことを続けるべきなのだろうか? ライティングゼミNEOを受講しながら文章を書き続けることへの疑問が芽生えてきてしまった。いくら三浦さんが自らフィードバックをしていただけるとはいえ、このまま不掲載を連発したまま終わるのはあまりにも悔しすぎる。
 
ライティングゼミNEOを受講して3か月が経過してもいまだに合格0だった。他の受講生の合格している文章を読むにつれて、「みんな上手だなあ、それにしてもなんでこんなに書けないのだろう」と劣等感に苛まれていた。3か月目の講義で受講生の文章の公開フィードバックが行われる運びとなった。これはチャンスかもしれない。その公開フィードバックに私が立候補することにした。私の書き上げた文章を冒頭からクライマックスを経て終わりまで、細かいところまで1時間みっちりとフィードバックいただくことになる。他の受講生には申し訳ないがまさに私のためのライティングゼミとなり大変に勉強になった。かたや出だしの入り方はどうだ、クライマックスへの盛り上がりはできているのかと、本当に文章を嘗め回すようにチェックを受けた。どこでダメ出しを受けるかわからないスリリングな講義となり緊張しっぱなしであった。
 
結果としてライティングゼミNEOで初めての掲載を獲得した。喜びというよりも安堵の気持ちが勝っており、まだまだ諦めるには早いのだと感じることができた。公開フィードバックでは何とか合格に結びつけることができ、その後の2000文字の課題も少しずつ合格の回数が増えてきた。ちょうどわたしが天狼院ライティングゼミを初めて受講してから1年が経過し、この1年で苦しみながらも文章の基礎を徹底的に学ぶことができ、1年を通じて何かに打ち込むことができた充実した1年だったと思える。

 

 

 

8月を迎えライティングを初めて2年目を迎えたころ、いよいよ5000文字の挑戦となった。5000文字の文章を最後まで読んでもらえるようになることがプロのライターの最低条件だということを伺った。5000文字を書くのはものすごく大変だが、読むのもそれなりに大変で、途中で離脱することも多い。2000文字から5000文字というのは、単純に分量が多いだけではなく、読んでもらえるようになるための難易度がかなり上がる。ようやく2000文字を書くことができるようになったと思ったら、5000文字になってやっぱり書けなくなっている。5000文字のコンテンツを仕上げるために、考えることも含めれば1週間丸々使うことも少なくなかった。1週間丸々使って書き上げたコンテンツもやはり「読者メリットが足りない」とか「クライマックスに到達していない」といったこれまで何度も言われていたフィードバックを繰り返しては不掲載を連発するようになった。
 
不掲載を連発したままいよいよ最後の課題を迎えることになる。2000文字を4か月、5000文字を2か月書き続けて本当に長い道のりだったと思うが、不掲載を連発しているだけあって成長を感じられない厳しい日々を過ごしていた。最後の最後は自分史上最高のコンテンツを書き上げて三浦さんをぎゃふんと言わせたいと本気で思った。題材に選んだのは、私が結婚してから2年で離婚するまでを5000文字で書き上げた。私の離婚話なんて、表立って口にすることはなかったし、自分の黒歴史を文章に残して提出することもなかった。男が離婚したときの女々しい話はどのぐらい受け止められるのか。そんな暗い話を自分の中でどれだけ消化して本気のコンテンツにできるのか。最後の最後に悔いなく終わるための大勝負を仕掛けた。結果、見事に掲載を勝ち取りこれまでのライティング経験の中で最も評価されることになった。私が秘密にしていたことをさらけ出すことと引き換えに、大きな成果を実感することができた。
 
半年におよぶライティングゼミNEOは苦しみぬいての受講であったが、最後の最後に大きな成果を実感することができた。

 

 

 

ライティングゼミNEOを終了し、この年の10月からライターズ倶楽部に復帰し10ヶ月目を迎えた。ライターズ倶楽部の課題は何かしらのテーマをもって5000文字の課題提出に取り組むことになる。5000文字の課題というのはやっぱり大変で、大げさではなく毎日課題に取り組んでいる状態だ。1年以上にわたりライティングに取り組むことができたおかげで掲載率も上がってきた。不掲載を連発することが当たり前である負け犬根性から脱却することができ、掲載されれば飛び上がるほどうれしいし、不掲載となれば思い切り悔しがり何が良くなかったのかを反省するようになっていた。こだわり抜いたのは課題をすべて提出することだ。正直にいうと時間が作れなかったり、モチベーションが上がらなかったら、すぐに文章を書くことをパスしていたが、今度は何が何でも提出することにこだわった。1年続けていたので、多少は文章を書くスピードも上がり、書くためのネタも増えてきたことでコツをつかんでいるのかもしれない。それよりなにより、少しでもサボってしまったら、これまでの苦労がなかったかのように文章が書けなくなる恐怖を感じていた。
 
文章を本格的に学び書き始めるようになって2年になり、少しは手ごたえをつかんでいるものの、まだまだ足りないものだらけである。
 
2年間文章を書くことに本気で向き合った結果わたしは何を目指すのだろうか?
 
プロのライター、エッセイストいろいろ目指す道はあると思う。
 
何を目指すのかはまだまだ道半ばであるが、ライティングを一緒に頑張ってきた仲間やフィードバックをいただけた先生方、そしてSNSなどを通じて読んでいただいた読者に、私がどんなことを考えているのかを少しでも伝えることができるようになることを最上の喜びとして取り組んでいきたい。
 
 
 
 

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2023-08-16 | Posted in 週刊READING LIFE vol.228

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