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週刊READING LIFE Vol,96

目にやさしく、手にやさしく、頭にやさしい。《週刊READING LIFE vol,96 仕事に使える特選ツール》


記事:[名前](READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)記事:(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
とてもニッチな現場からの報告で甚だ恐縮だが、教壇に立っていると、ある身体的欠点が極めて不便に感じる。
 
視力が悪いことである。
 
いや、これ自体がもたらす困惑や不便性は、どこの職業でも同じだと思う。あるいは、私個人が困っているだけなのかもしれない。
だが、あなたの学生時代の先生(現役学生の方は今授業を受けている先生)を思い浮かべてほしい。特にその授業風景だ。
 
教科書を手に持つ傍ら、何かを教卓に置いて、見てはいなかっただろうか?
 
それは指導書の類かもしれないが、ほとんどの場合、先生ご自身が作られた、いわゆる「アンチョコ」であることが多い。
 
毎回の授業の流れだったり、問題の解説だったり、板書計画だったり……1回1回の授業をより良い時間にすべく、工夫と英知を振り絞って作られた、秘蔵(というと大袈裟だが)の書である。
 
つまり、視力の低下は、自分自身が作ったそのアンチョコが見辛くなるという、大変困った事態を引き起こすのだ。
 
いや、だったら手に持ったり、大きく書いたりすればいいのでは? と安直に思われるかもしれない。
 
しかし、片方の手にはチョーク、片方の手には教科書、となると、やはりノートの類は机に置くしかない。少なくとも、私はこのスタイルが良い。
 
ならば大きな文字で書いてはどうか、となる。まさにそこなのだ、今回私が言及したかったのは。
 
ここに極々普通のノートがある。大学ノートと呼ばれるものだ。
横に等間隔で入った罫線は30。つまりその幅に合わせた文字の大きさで書かねばならない。
 
もちろんフリースタイル、つまり罫線にかかわらず自由に書いても問題ないのだが、それでは罫線が引いてある意味がない。いわゆる自由帳などの白紙のノートで十分だ。
 
それでは2行分を1行として書いてはどうか。悪くはないが、これだと少々大きすぎる。何より、文字の真ん中に線が入っているのがよろしくない。
 
いや、まったくもってわがままなことだ。
だが、それを重々承知の上で、私が欲しいのは、絶妙な行間を持ったノート、そういうオブジェクトだ。
 
それがあったのである。
 
罫線と罫線の間の幅が大きく確保されており、その行数なんと10行。
小学校低学年の「○○ちょう」などのノートと間違えてしまいそうであるが、外見、及び表紙は、間違いなく大学ノートである。
 
これを勝手に10行ノートと呼んでいるので、ここでもその呼称を使用したい。
 
世の中にはほんのちょっとの違いが大きな差異を生むケースがごまんとある。
そしてこの10行ノートもその一つだと、私は考える。
 
まず、この1行の幅がとても絶妙である。
文字が大きく書けるのはもちろんだが、その文字、やたらと書いたときの文字の大きさにぴったりなのである。
人間、自然に書いた時の文字の大きさというものがあるらしいが、どうやら、私にとってそれが、この幅にぴったりだったのである。
 
理屈は分からないが、文字を大きく書くというのは、しかもそれが無理をしない自然な大きさだというのは、意外にもとても気持ちが良い。
 
細かい字でびっしりとノートを埋めるのも良い。整頓された紙面にしても良い。だが、実際に書くときの心地よさを求めるのなら、断然大きな文字に限る。
 
そしてそれが、これまた当然ではあるのだが、見やすい大きさになるのだから、文句なしである。
 
欠点は1面にあまり多く書けないこと、それゆえにすぐにページ数を消費してしまい、非経済的であること、あたりか。
 
しかし、1面をびっしり細かく埋めるより、はるかに視覚的に情報が入りやすい。文字が大きいので、見やすさもさらに増している。
そして、限られた誌面を、限られた文字数で整理整頓しなが書く、というのも、自分の頭の中の情報整理という点からも、整えながら書けるというものである。
 
最初は授業のために導入したノートだが、上記の理由もあり、それ以外の場面でも多いに役立っている。
 
1番はアイデアノートとして、だろうか。
思いついたアイデアをひたすら箇条書きで書く。
これもまた多数行あるノートの方が、たくさん書けるのだが、やはり、書きやすさ、見やすさという点で、10行ノートに軍配が上がる。
 
先ほど言ったように、大きさとしての書きやすさはもちろん、それが複数行連なったとしても、多いに見やすい。
おそらく、文字と文字の間の余白が大きく取られるためだと思われる。
1ページに万遍なく文字を埋めたとしても、一つ一つの文字が読みやすく、視覚的にも、情報的にも、頭に入ってきやすい。
 
まさに、書くにも、見るにも、そして思考を整理するにも使いやすいノートである。
 
手にも、目にも、頭にもやさしいとは、このことである。
 
ただ、もしかしたら、少し“幼稚”だとして敬遠する方もいるかと思う。
かくいう私も、最初はそう言った抵抗がなかったとは言わない。
 
こればかりは一目見ていただければ分からないであろう。
そして一目見ていただければ分かるはずだ。
 
やはり、昔の小学生の時を思い出してしまうからだろうか。
大きな幅の紙面を見ると、確かにあの時の国語の時間や算数の時間が、頭の中を駆け巡る。
 
これなら、某文具会社から出している学習帳でも良いではないか、と思われるかもしれない。
 
ただ、これはあくまで大学ノートなのである。そこに大きな差異がある。
 
小学生用の学習帳は、言わば後々の上級学校に通ずる、ノートの使用練習だったり、書いてアウトプットすることによる、いわゆる反復練習だったりが、主な目的だと思われる。
漢字練習などは最たるものだろう。
 
一方で、大学ノートは、情報や思考の整理として使われるツールであるように思う。無論、メモや板書の書き写し、などの使用方法もあるが、最終的に、それは情報や考えを、自らの脳内に整理する結果をもたらす。
 
そのためのメモリだったり、日付欄だったり、罫線の色だったり、もしかしたら紙質も違うかもしれない。
 
何より、表紙が違うではないか。
 
これは意外なほど大きい。
表紙が大学ノートのそれであることと、そうでないことは、雲泥の差がある。
 
ご自身が例の学習帳を持っている様を思い浮かべていただきたい。
少々、というかかなり無理がある絵面が、想像できたのではないだろうか。
 
まあ、それもデザインといえばそうで、納得の上であるならば、例の学習帳をお使いになるのも一興かもしれないが……
 
とにかく、できる大人は、いや、そうだ、できない大人こそ、この10行ノートを使ってみていただきたい。
 
情報整理が苦手だったり、無駄に細かく書いてあとで見にくくなったり、字が下手だったりする人は、是非おすすめしたい。
 
なぜなら、私がそうだから、だ。
 
客観的な効果のほどは分からないが、少なくとも、書きやすく、読みやすくなったことで、書いてあることを頭の中で整理しやすくなった。
 
情報や思考が整理されたということは、行動にも反映されて然るべきである。
何度もいうが客観的な効果は、自分自身では分からない。
 
だが、以前より、授業がやりやすくなったのは事実なのである。
書いてよし、見てよし、整理してよし、とは、なんとも粋なノートだ。
 
ノートに顔を近づけている先生がいらっしゃったら、あなたもぜひ、アドバイスしてあげると良い。
 
この10行ノートの使用を検討してみてはどうか、と。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
黒崎良英(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

山梨県在住。大学にて国文学を専攻する傍ら、情報科の教員免許を取得。現在は故郷山梨の高校に勤務している。また、大学在学中、夏目漱石の孫である夏目房之介教授の、現代マンガ学講義を受け、オタクコンテンツの教育的利用を考えるようになる。ただし未だに効果的な授業になった試しが無い。デジタルとアナログの融合を図るデジタル好きなアナログ人間。趣味は広く浅くで多岐にわたる。

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2020-09-22 | Posted in 週刊READING LIFE Vol,96

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