「出会いがない」を科学する/”加点方式の恋愛”と”減点方式の恋愛”《天狼院通信》
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:三浦崇典(天狼院書店店主)
バチェラーというより壮大なる”バチェロレッテ”の世界
20名ほどの女性が、1人の選ばれし究極の男性”バチェラー”を巡る熾烈な恋愛バトル・バライティ番組「バチェラー」は世界的に人気である。
恋愛番組マニアの僕は、当然、全シーズンを観ている。
白馬の王子争奪戦だが、意外に、これは動物の誕生のシステムと非常に近い姿なのではないかと思った。
バチェラーというより、その逆で1人の選ばれし女性を巡って男性たちがバトルを繰り広げる「バチェロレッテ」により近いのではないかと思う。
まず、あなたの元になった卵子は、数個から数十個の候補から一番状態がいいものが選別されて、卵子となってステージに登場する。
それはまさに、オーディションで候補からバチェロレッテが選ばれるのに似ている。
その1人のバチェロレッテを巡っての壮絶なる恋愛バトルが繰り広げられるのだが、実際の生殖においてまったく違うのは、その数である。
バチェロレッテにおいて、争う男性の数は、せいぜい20名程度だ。
しかし、1つの卵子を巡って戦うのは、およそ1億の精子たちである。
もはや、日本国民全体で、1人の女性と結ばれることを争うようなもので、想像するとゾッとするくらいの競争率である。
受験でも、就活でも、おそらく、このレベルの競争率には到底ならないし、ほとんどの人が挑もうとは思わないはずだ。
そして、バチェロレッテと同様に、見事に1億の同胞たちを蹴散らして勝利したとしても、結ばれるとは限らない。着床するとは、限らないのだ。
ところが、である。
この熾烈な戦いの勝者は、何もテレビに出ている人でも有名人でもない。
なんと、あなたなのだ。
あなたと、あなたが知るすべての人が、この熾烈な誕生闘争を勝ち抜いている。
バチェラーやバチェロレッテなど比較ならない、何なら、宝くじでも比較にならない可能性を勝ち抜き、あなたは存在しているのだ。
まず、間違いない事実してあるのは、あなたはそのほとんどありえないくらいに低い可能性を実現して、こうして誕生しているのだ。
つまり、まず、大前提として、この世に誕生したすべての人は「奇跡の子」だという揺るがしようのない事実である。
あなたもそうであり、今まで出会ったすべての人もそうであり、そして、これから出会う人も、また「奇跡の子」である。
誰もが”奇跡の子”であるという真実から浮かび上がる事実
自分が”奇跡の子”であるという事実は、少し考えれば分かる話だ。
けれども、多くの人がそれを意識しない。
親のみが、小さな我が子を見て、この子は”奇跡の子”だとどこかで感じ続けるが、子育てで疲れ、反抗期に直面し、そんな日々を過ごしているうちに、その当たり前の事実を、痛感しなくなる。意識しないとそのありがたみが分からなくなる。
自分自身にとってもそうだ。
ドラマなどでは「好きで生まれたのではない。勝手に生んだくせに」なぞという罵詈雑言は枚挙にいとまがないほどであり、たしかに親に対してそう思ったことがある人も多いだろう。
ま、しかし、奇跡のような確率で”その子”として生まれるので、親としても好きで”その子”を産んだとも言い難い。
自分が生きていることが奇跡だと感じるのは、生命の危機に直面したときくらいだ。
本来、日々、思ってもいいレベルの話なのだ。
「自分がこうして生きていること自体が奇跡だ」と。
そう考えることで、自分には途方もない価値が生まれながらにしてあることが分かる。
ここまでくれば、エンディングまであと一歩である。
自分には途方もない価値があると納得できる人は、同じように、他人にも途方もない価値があることを、非常に簡単なアナロジー思考で成立させることが可能だ。
では、他人に価値があることが納得できるとどうなるか?
自分と同じように、他人には価値がある
そう思えると、実に恋愛においては非常にあなたに有利になる。
マーケティング的な側面から言うと、価値があると認められる”心理的閾値(いきち)”が恐ろしいレベルで低下する。
そうなると、今まで無彩色にしか見えていなかった異性が、有彩色見えてくる——つまりは、恋愛対象となるのだ。
たとえば、中学・高校のクラスを思い浮かべてほしい。
ここからは単純にマーケティングの話をする。
恋愛対象の閾値が20%以上となれば、異性のクラスメイト20人中、恋愛対象は4人に過ぎない。そこは、他20名と競合する可能性があり、自分の条件が相当良くない限りは、勝率はかなり低くなる。平均値である10位前後だとすれば、まあ、勝てない。これでは恋愛が成立しない。恋愛成就率は10%をはるかに下回るだろう。確実に一桁台も後半ではない。前半となる。
ところが、これを閾値を60%まで引き下げるとどうなるだろうか?
4人しか恋愛対象でなかったのが、12人にまで拡大する。
これは恋愛成就可能性が単純に3倍になる話ではないのだ。
なぜなら、12人まで拡大させると、需要が集中する上位以外も対象となるので、競合可能性が低くなる。つまり、成就率が指数関数的に拡大するのだ。
「それは、相手のランクを下げることで面白くない。妥協ではないか」
との声が聞こえてきそうなので、断言しておこう。
違う。まったく違う。
それは妥協の話ではなく、あなたの創造性を拡大して、あなた自身が幸せになる話である。
それは、いったい、どういうことなのか?
妥協をするのではなく、創造性を拡大するとは?
全人類が”奇跡の子”であるという話を思い出してほしい。
たとえば、結婚相談所のアプリで現れる人も、いつもの道ですれ違う人も、いつも行く店の店員さんも、”奇跡の子”であり、奇跡のような確率で、時空をともにしているということになる。
同じとき、同じ場所、同じ種として出会う可能性は、また誕生と同じくらいに奇跡的な話だ。
もうすでに、その人を認識した時点で、複合的奇跡がそこに存在すると見て間違いない。
ゆえに、動物などは即物的に出会った異性と恋に落ちる。科学的にみて、これほど合理的なことはない。花の受粉も相手を選ばない。
人間だけがうだうだとトレンディに迂回しようとする。
実に非合理的な話である。
大前提として、もはや、出会っただけで奇跡的であり、すべての異性は恋愛対象と見るというスタンスになるとどうだろうか。
閾値の最大拡大であり、恋愛成就率は飛躍的に上昇するだろう。
なにも、次の曲がり角を曲がった先で出会った異性に告白しろ、と言っているのではない。
要は、スタンスの話であり、マーケティング戦略において勝つか負けるかの話である。
「もしかして、この人も恋愛対象かも」
と思うとどうなるだろうか?
ネガティブに作用すれば、キモくなる可能性がある。
だが、ポジティブに作用すればどうだろうか?
単純に、恋愛対象になる要素を探すようになるだろう。
つまり、”加点方式の恋愛”に移行できるようになる。
この”加点方式の恋愛”こそが、どんな状況からも逆転が可能な人類最大の恋愛手法である。
なぜなら、この加点方式こそが最もクリエイティブな恋愛手法だからである。
恋愛で勝てるのは”加点方式の恋愛”のみだ
断言するが、”減点方式の恋愛”は、モテない。最悪である。
なぜなら、先ほどの話で言えば、減点方式の恋愛をする人は、とどまるところなく減点をする。
そうして必然的に、心理的閾値を上昇させる。
そうすることで、無意識的に勝率を加速度的に下げていくことになる。
これを”加点方式の恋愛”にインバージョンするだけで、世界は変わるのだ。
「この人は自分の話ばかりで、会話が下手でつまらない人」(減点方式)
↓
「この人には自分の世界があり、夢中になれるものがある人」(加点方式)
相手が自分と同様に奇跡の確率で生誕した”奇跡の子”だと定義できたとき、人は相手のいいところを探そうする。
奇跡の理由を探そうとするのは、当然だ。
たとえば、食べログで最高評価の店に行ったとき、人は自然と良いところを探して、そこを選んで行ったという行為を肯定しようとする心理が働く。
確証バイアスという考え方に近い。
ところが、これは悪いことではない。なぜなら、誰もが”奇跡の子”だという前提は揺るぎない真実だからだ。
たとえ、確証バイアスであれ、他者のいいところを見つけようとする心理作用はその人を確実に幸せに近づける。
そして、その相手のいいところを想像することこそ、幸せに直結する非常に創造性の高い行為であり、これが結婚後も続くと、家族は非常に安定的に運営されることになる。
いや、全員でなくとも、家族で支柱になるたった1人だけでもそれを信じてさえいれば、なんとかなるのかも知れない。
もし、あなたが出会いの際にその能力を発揮することができれば、間違いなく、あなたのその想いはその恋愛ばかりではなく、将来の家族の支柱ともなりえる。
つまり、”加点方式の恋愛”は、家庭という将来に向けた遥かに高い建築物の非常に大切な基礎となるのだ。非常にクリエイティビティが高いと言った所以である。
では、”減点方式の恋愛”は、何を生むだろうか?
相手のどこが悪い、あそこが気に食わないということで何が生まれるだろうか?
想像してみてほしい。
ただ、唯一の口癖を生むことになるだろう。
「出会いがない」
それはきっと、その人にとっては揺るぎない真実だろう。
けれども、”加点方式の恋愛”をするようになった人は、決してそんな言葉は吐かないだろう。
なぜなら、出会いは自分のスタンスが創造するものだと体感的に分かるからだ。人のいいところを探そうをするスタンスは、間違いなく恋愛対象を広げる。相手にも好意を持たれるはずだ。
人は、自分のいいところを探そうする対象を好きになりやすい。
ゆえに、逆にこう言うはずだ。
「誰にするか、本当に迷っている。みんないい人なんだよね」
▪️ライタープロフィール
三浦崇典 | Takanori Miura
BOOKLove結婚相談所仲人総取締役株式会社東京プライズエージェンシー代表取締役。株式会社インパルス代表取締役。天狼院書店店主。小説家・ライター・編集者。雑誌「READING LIFE」編集長。劇団天狼院主宰。プロカメラマン。秘めフォト専任フォトグラファー。ビデオグラファー。AIパイロット養成講座主宰。
2016年4月より大正大学表現学部非常勤講師。2017年11月、『殺し屋のマーケティング』、2021年3月、『1シート・マーケティング』(ポプラ社)、2022年1月、『駆け出しクリエイターのための時間術』(玄光社)を出版。
2025年4月、IBJと正式契約、BOOKLove結婚相談所開設、BOOKLove結婚相談所仲人総取締役に就任。
2009年4月1日に、「株式会社東京プライズエージェンシー」を設立登記し、その後、編集協力や著者エージェント、版元営業のコンサルティング業等を経て、2013年9月26日に「READING LIFEの提供」をコンセプトにした次世代型書店(新刊書店)「天狼院書店」を東京池袋にオープン。今は全国に店舗とサービスを広げている。現在の旗艦店は渋谷宮下パークの天狼院カフェSHIBUYAである。
長年にわたり雑誌『週刊ダイヤモンド』、『日経ビジネス』にて書評コーナーを連載。【メディア出演】(一部抜粋)
NHK「おはよう日本」「あさイチ」、日本テレビ「モーニングバード」、BS11「ウィークリーニュースONZE」、ラジオ文化放送「くにまるジャパン」、テレビ東京「モヤモヤさまぁ〜ず2」、フジテレビ「有吉くんの正直さんぽ」、J-WAVE、NHKラジオ、日経新聞、日経MJ、朝日新聞、読売新聞、東京新聞、雑誌『BRUTUS』、雑誌『週刊文春』、雑誌『AERA』、雑誌『日経デザイン』、雑誌『致知』、日経雑誌『商業界』、雑誌『THE21』、雑誌『散歩の達人』など掲載多数。2016年6月には雑誌『AERA』の「現代の肖像」に登場。大小合わせて400回以上メディアに登場。
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