これからは書店の時代だ 2.0
天狼院書店店主の三浦でございます。
二年前、「書店人に告ぐ」を書いた翌日、それに対するアンサーを自分で書いた記事がございました。それがこの記事でした。
未だ天狼院書店オープンを夢見ていた時代に書いたもので、やはり、先日書いて、思わぬ反響を得て、今なお読まれ続けている「書店人に告ぐ2.0」同様に、実際に書店をオープンして、その同じ論点で述べるときにどういう変化があったのかを考えていきたいと思います。
題して、「これからは書店の時代だ2.0」でございます。
実際に書店を開業してみて、それが想定した以上にはるかに厳しいものだということを以前、この記事において述べさせていただきました。
そして、もっとも重要なことは、決算、納税を乗り越えて、今なお天狼院書店を運営できているということです。銀行への返済もスタッフへの支払いも、もちろん、家賃の支払いも滞りなく済ませているということです。
嵐が止んだ今、目の前には快晴へ向かおうとする大海原が広がっているごときでございます。
まるで、アニメ『ドラゴンボール』の主題歌が聴こえてくかのようでございます。
「この世はでっかい宝島♪ そうさ、いまこそ、アドベンチャー♪」
なぜ、今、僕がとても難しいと言われている業界において、鼻歌を歌いたいくらいに楽観視しているかと言えば、天狼院の行き先には希望に満ちていることを、精神論ではなく、大本営発表的な見地ではなく、至極合理的に捉えているからです。
もし、僕がシリコンバレーのベンチャーの父とも言われるリード・ホフマンであったり、孫泰蔵さんであったなら、今のうちに天狼院に投資したいくらいです。
僕が身体ともに健康であって、計画を次々と実現して行くことができれば、これまで掲げていた目標を現実のものとすることはそれほど難しいことではないと考えております。
もう一度、「これまで掲げていた目標」を振り返ってみましょう。
1.2013年夏に天狼院書店の1店舗目をオープンさせる。
2.2017年までに天狼院書店を全国で10店舗展開する。
3.2022年にIPO(株式公開)する。
実を言うと、これ、2012年1月4日に立てた目標なんですね。つまり、僕が全財産15,000円の時に立てた目標でした。
今は2014年で2店舗目「福岡天狼院」を準備している段階ですので、この目標でいえば「1.1」くらいのところにいるのではないでしょうか。
目標を立ててから2年半ほど経って、目標を修正する必要性を今のところ少しも感じておりません。
このまま行けると考えております。
なぜ、これからは書店の時代だと言い切れるのか?
それには3つの明確な理由がございます。
1.安価で自社メディア(オウンドメディア)を構築できる時代になったから
インターネットの爆発的な普及によって、おびただしい量の情報に容易にアクセスできるようになりました。
翻って考えてみると、こういうことでもあると思うのです。
自分が流したいと思う情報を容易に流せるようになった
実際に天狼院についていえば、このHPの構築はほとんどお金がかかっていません。
どれくらいかかっていないかといえば、サーバー代は月々500円しかかかっておらず、本を見て、一からサイトを構築したので、Web制作費もまるでかかっていません。WordPressを使っているので、その運用も無料です。
その天狼院のメディアが、今、アクセス数で月間10万PVを記録するようになりました。広告費など一切かけずに、です。
しかも、これも爆発的な勢いで伸びていて、8月末には30万PVに到達させる予定です。
30万PVといえば、もはや、立派なメディアです。たとえば、広告を張れば月間20万円ほどは稼げるレベルと言っていいでしょう。
この天狼院のメディアはお客様にイベント等、天狼院に関する様々な情報を提供するのは元より、新聞やラジオ、雑誌やテレビといったマスメディアの方々に対するアピールに対しても絶大な効果がございます。
どことは明かせませんが、メディアの方に、
「HPにしっかり書かれているので、今回はこれを参考にさせていただき、写真だけ送ってもらえれば大丈夫です」
と言われ、それが実際に記事になったことも何度かございました。
おそらく、この業界において、天狼院ほどオウンドメディアを駆使できている企業はないだろうと思います。
また、天狼院のオウンドメディアの運用については、僕も制作にガッツリ関わらせていただいた、この本に詳しいので参考までにのせておきます。ちなみに、ここには小さな店のオウンドメディアについての他、これから天狼院が取ろうとしている戦略についても先行して書かれております。いわば、天狼院のコンセプトブックでもあります。
2.時代はヴァーチャルに行き過ぎたきらいがあり、リアルの「場」に飢えているから
インターネットは情報を得るものだと言う時代から、繋がるための有用なツールだという時代に突入しました。
mixi、Twitter、FacebookなどのSNS時代の到来です。
これによって、容易に人と繋がれるようになりました。
友人たちの同行なども確認できるようになりました。また、ニコニコ動画などの登場により、ヴァーチャルの世界で過ごす時間が増えました。
たとえば、昔なら電車に乗ると多くの人が文庫本やコミック雑誌などを読んでいたと思いますが、今、何%くらいの人が本を手にしているでしょうか。
代わりに、手にしているのはスマートフォンです。つまり、ヴァーチャルに可処分時間の多くを取られるようになったということです。
Facebookでいいね!の数が増えたかどうか、チェックし、友だちが何をしているのか確認する。やりとりはLINEでやるようになる。
それが一般的になった現代ですが、僕はあまりにヴァーチャルに行き過ぎたのではないかと考えております。
すなわち、リアルへの「揺り戻し」が起きるだろうと見ております。
そうなると、これから重要視されるようになるのが、リアルの「場」です。ヴァーチャルで繋がりやすくなったために、今度はリアルで会う場が必要となる。なぜなら、ヴァーチャルはあくまで「仮想現実空間」であって、リアルで実際に会って話す方がより相互にやりとりする「情報量」が多いからです。
それはどういうことかと言うと、LINEでやりとりしたとしても、テキストとスタンプのやりとりに過ぎない。けれども、リアルであったなら、その人の表情も見えて、声がもたらす振動も伝わってきて、匂いや熱気までも「情報」として受け取ることになります。こちらの方が、より面白いに決まっています。
つまり、書店は、天狼院がそうであるように、リアルの「場」としての可能性に満ちているのです。なぜなら、書店はとても抵抗なく入りやすい空間のひとつであるからです。
3.本はあらゆるコミュニティのフロントエンド(窓口)となりえる
天狼院書店では現在、部活や読書会など、様々な集まりが「コミュニティ」として機能しております。
その入り口になっているのが、本です。
たとえば、カメラを習いたいと思えば、本にはカメラの教本がございます。実際に天狼院ではテキストばかりではなく、実際にカメラを勉強する場として「天狼院フォト部」という部活を運営しており、毎回、大人気です。
また、先日からプロの落語家さんを招いて、天狼院落語部も始めたのですが、これも落語関係の本が入り口になります。実際に天狼院では「落語棚」を構築しております。
天狼院ではファナティック読書会なども開催しておりますが、そのコミュニティの入り口となり、核となっているのも本です。
たえとえば、マラソン部を作ろうと思っても、マラソンの本が多くありますし、旅行部を作ろうと思えば、それに関する本が無数にあります。
そうなのです。書店とは無限の可能性に満ちた場所なのです。
天狼院はこの3つの要素を徹底している、初めて生まれた業態です。
僕が常日頃、「天狼院は単なる書店ではなく、新しい業態だ」言っている所以がここにあります。
旧来型の書店は、おそらく、難しいでしょう。
けれども、新しい業態であることを徹底的に模索している天狼院は、これまで以上に可能性に満ちていると何の疑いもなく自負しているのでございます。
これからも、天狼院書店にご期待ください。
まだ、キャッシュフロー的に脆弱ではありますが、次々とアイデアを実現し、お客様と一緒に面白いことにして行きたいと思っております。
どうぞよろしくお願いします。
さらにこのたび、天狼院がどう面白くなっていくのか、書店だけではなく、小商いにはどんな可能性があるのかを、会計の見地から、「天狼院LIVE」で皆様と一緒に考える「場」を設けることに致しました。
天狼院の会計顧問、160万部『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』の著者にして公認会計士山田真哉さんと一緒にこれまでの天狼院について、そして、これからの天狼院という業態について、「超」前向きに考えていきたいと思います。
予定調和なし、予測不能の「スーパーLIVE形式」で行きたいと思います。
お見逃しなく。
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TEL:03-6914-3618