成功するためには自分を売り込む能力が必要だ。〜小林可夢偉のF1シート喪失で想うこと〜《天狼院通信》
まずは、「小林可夢偉からファンのみなさまへ」と題された、この記事を読んで頂きたいと思います。
F1フリークの僕としては、本当に無念でございます。
結果を残していなかったのなら、仕方がなかったと思うこともできるでしょう。けれども、可夢偉は今シーズン、優れたパフォーマンスを見せ、確実に結果も残しておりました。
超新星として現れて、結果的にトップチームへの移籍を決めたペレスとも、遜色のない結果を残しました。
彼に足りなかったのは、インパクトでした。可夢偉は確かに鈴鹿グランプリで表彰台に登りましたが、それ以前にペレスは3度同じマシーンで表彰台に登っているので、インパクトの面で弱く、後半戦だったということもあって、シート獲得の材料としてはちょっと遅かったようにも思えます。
つまり、可夢偉は、チャンスを掴めなかったのです。もちろん、あらゆる面で、ペレスの方が運が良かったということは確かですが、「何かもっている!」ことは、ときに実力よりもインパクトが強い。ペレスは、ワンチャンスをしっかりとものにし、可夢偉はそうではなかったということです。
ただ、今回の可夢偉のF1シート喪失には、それ以上に「大人の事情」があったと言われています。
じつは、現在、F1業界は出場料や開発費の高騰と広告費の減少によって、常に厳しい状況に置かれています。とくに、大企業のスポンサードがない小さなチームではそれが顕著で、多くのF1ドライバーは給料をもらうどころか、持参金がないとF1に乗せてもらえないという、わけのわからない状況になっています。
数年前、佐藤琢磨もまさにそのような状況に置かれ、しっかりと結果を残したのにも関わらず、翌年、シートを獲得することはかなわず、現在でもF1シーンに戻ってきていません。そのとき、琢磨と違ってワンチャンスをものにしたジェイソン・バトン(道端ジェシカの彼氏)は、その後、ワールドチャンピオンになりました。
それでは、成功を掴んだペレスやバトンと、可夢偉や琢磨は、いったい、何が違うのか。
簡単に言えば、僕は、自分を売り込むことができなかったのだと思います。実力以上に、マネージメントに問題があった。
もっとも、彼らにもマネージャーがついていたはずですが、他のドライバーと違って、決定的な売り込みができず、また持参金をもたらすこともできなかった。それは、マネージャーの手腕と戦略のミスということもありますが、そういったルールを知りながら、豪腕のマネージャーに依頼できなかった可夢偉と琢磨の責任でもあると僕は思います。
F1のような競争が激しい世界では、チャンスは1度きりしかないのだと思います。これを逃せば、永遠にチャンスは巡ってこない。
これは、企業にとっても同じことが言えるのではないでしょうか。
もちろん、多くの失敗が結果的に多くの成功をもたらすという、「小さく賭けろ!(リトル・ベッツ)」などの論点も正しいのですが、失敗が許されるのは、戦術的な意味においてです。
もっと大きな潮流の中での、たとえば、チャンスが目の前にあるという絶好の機会において、これを一度逃してしまえば、永遠にそれと同等のチャンスは巡ってこないということです。
たとえば、可夢偉や琢磨の場合、べつに1レースにおいて、失敗してもそれが次のレースに活かすことができれば問題がなかったと思います。彼らが失敗したのは、表彰台を狙えるマシーンを手に入れているという人生のクライマックス的な局面において、そのラッキーを活かすことができなかったということです。
おそらく、人生にはそういうクライマックスは何度も訪れるものではありません。それを掴めるかどうかによって、未来は大きく変わるのだろうと思います。
何を言いたいのか?
こう言ってはなんですが、業界レベルで見て、今、僕には流れが来ているのだと思っております。
皆様から応援され、新しい形の書店を作り上げるという、人生のクライマックス的チャンスが目の前にあるのだと思います。
自分で設定した、来年8月の東京天狼院オープンこそが、またとないチャンスなのだと思っております。
つまり、これを逃してしまえば、僕は二度とこのような好条件で業界に浮上することはできないだろうということです。
大きく飛翔するための、ワンチャンスを与えられていると見ていい。
あらためて、何が何でも、このチャンスを掴もうと決意を新たにしたのでした。
いかにしてチャンスをものにするのか、29日より田舎に帰って戦略を練り直して来ようと思います。
思い返せば、去年の年末もそうでした。田舎に戻り、将来についての構想を練りに練った結果を、明けて1月4日に発表しました。それこそが、2013年夏にリアル書店をオープンするということを主旨とした「TENRO-INプロジェクト」であって、それは今まさに僕が全力で取り組んでいることです。
年末、田舎に帰って何を練り込むのか。そして、年始に何を発表できるのか、自分でも楽しみで仕方がありません。おそらく、それこそが実現する未来になるだろうと思います。
きっと、これからは、大きなチャンスを掴むには自分の力だけでは無理だろうと思います。
今まで以上に皆様もお力を借りることになるでしょうが、これからもどうぞ、よろしくお願いします。
*2013年1月4日、来年の構想を発表したいと思います。