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趣味の可能性


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:生田幸子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
社会人になったばかりのころ、父からいわれた言葉がある。
「3年はがむしゃらに仕事をしろ。その後は『必ず』趣味を持て」
父は多趣味な人だった。カメラ、釣り、ドライブ、温泉、ゴルフ、読書……晩年は、それに加えてウォーキングと御朱印集めを趣味にしていた。反面、私はといえば、社会人になったばかりのころはもちろんのこと、社会人になる前、つまり学生時代もこれといった趣味は持っていなかった。趣味を聞かれると無難に読書と答えて逃げていたような人間だ。だから、父の言葉を聞いて、
「3年後に趣味を考えよう……」
位にしか思っていなかった。深く考えなかったのである。
その程度の考えだった割に、父の言葉は社会人10年過ぎても忘れることはなかった。しかし、10年たっても父の教えに背いていた。強いて言えば趣味は読書から、これまた無難なショッピングに変わったくらいだった。
趣味を持つことは、いいことだという認識は、学生時代も、社会人になりたてのときも、社会人10年生でも同じように思っていた。ただ、趣味を持てない。何を趣味にしていいのか分からない。趣味のことを考えるくらいなら、仕事で使いつぶした脳を休めたい……冗談交じりに、趣味は寝ることですと答えていた時もあったくらいだった。
 
そんな私だが、3年前、ひょんなことから趣味と呼べるものに出会った。プレイバックシアター(即興再現劇)だ。きっかけは、カウンセラー資格を取得した際、資格更新講座として参加したことだ。相手の経験談を聞いて、それをその場で即興で演じる……そこにある「相手の話を聞く力(傾聴)」を磨きたいと参加したはずだった。しかし、実際参加すると、即興で演じることが面白いと感じてしまったのだ。演劇未経験、舞台なんて踏んだことなし、そもそも演劇を見に行ったことすら数えるほどの私が、である。即興で、それは台本も打ち合わせもなく、いま目の前の人が話してくれた物語を、どう表現するかを瞬時に考えて身体で表現する……今まで見たこともない即興演劇に、私は、あっという間に魅了された。
計4回の資格更新講座が終わってから、私は、その時の講師の方がプライベートで実施しているワークショップに足を運ぶようになった。そのワークショップに参加している、同じようにプレイバックシアターを学んでいる人と友達になった。趣味を通じてできた友人だ。職場で出会える友人とは違う。様々な経験、人生を歩んできている人たちだ。
ちょうどそのとき、私は、自分の仕事のことで悩んでいた。この仕事をして会社内でスキルは上がっても、会社の外では何も評価されるものがないのではないか……あまりにも自分は無力なのではないかと、不安に襲われてどうしようもなかったのだ。職場の友人にはもちろん、家族にも相談できずに悩んでいたのだが、ふとした時に、プレイバックシアターの友人に自分の仕事のこと(悩みではなく、某店で販売の仕事をしていること)を話してみた。すると。
「すごいじゃん。海外のお客様たくさん来るんでしょ。そんで、外国人のスタッフもいるし、大変だよね、けどすごいよ」
「いましていることは、大変だろうけど、すごくいい経験だよ。絶対後で高く評価されるよ」
自分の仕事が、職場の外からどう見られているのかを全く理解していなかったことを、趣味を通じて出会った友人たちに教えてもらったのだ。しかも、自分の仕事をすごいと評価してもらえたのだ。目から鱗だった。ほんの少し、自信を得た。そして、この友人たちに出会えてよかったと心から思ったのだ。
ワークショップに足を運ぶようになって1年過ぎたころ、講師の先生が
「プレイバックシアターのスクールがあるから、参加してみない?」と誘ってくれた。
横浜の上大岡で実施される3日間の集中ワークショップ……その程度だと思って参加したのだが、考えが甘かった。スクールの講座の中でも初心者クラスに当たる講座、参加者は15人ほどだろうか。自己紹介が始まると
「北海道から来ました…」
「大分から来ました…」
「滋賀県から来ました…」
私は仰天した。東京横浜……いや関東からの参加者は私含め数名、他は全員所謂地方からの参加者だったのだ。今まで狭い世界で演じていたが、実際は想像つかないほどに広い世界だったのだ。そして、この講座が終わった後も交流は続いている。友人が北海道にいる、大分にいる、滋賀にいるなんて言えるとは、数年前は到底想像つかなかった。
 
一つの趣味を得たことで、家と仕事の往復では見えなかった世界が、それも、想像以上に広い世界が目の前にあることに気づかされたのだ。趣味を手にしていなかったら気がつかなかったその世界を、私はとても気に入っている。そして、未だに仕事の悩みは尽きないが、友人の言葉を胸に何とか仕事も頑張れている。
 
父はどうして『必ず』趣味を持てと言ったのか。その答えを聞く前に、父は亡くなった。
けど、いま改めて父の言葉を振り返り、その答えを確信している私がいる。
 
「仕事に慣れたら趣味をもて。可能性を信じて世界を広げろ。仕事という世界だけに留まるな」
 
 
 
 
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2019-05-08 | Posted in メディアグランプリ, 未分類, 記事

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