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お知らせ

今後これほど熱狂する雑誌など出てくるはずがないと、たかを括っていたのかもしれない。「人生を変える」雑誌『READING LIFE』予約受付開始!《2017年6月17日(土)発売/東京・福岡・京都店舗予約・通販申し込みページ》


天狼院書店に就職する前、雑誌を売る仕事をしていた。
以前の職場は、都内でも有数の大型書店だった。広さは、おそらく東京天狼院の50倍〜100倍くらいはあったんじゃないかと思う。毎日ものすごい数の人のレジを打ち、毎日ものすごい量の問い合わせを受けていた。とにかく、一日中、広い店の中をあっちへこっちへと走り回っているような、そんな職場だった。

私は、その中でも、雑誌の担当をしていた。その店では常に約3000冊以上の雑誌が販売されていた。日本の雑誌も、海外の雑誌も、個人で出版している雑誌も、バックナンバーも。こんな雑誌があるのかと驚くような雑誌もたくさんあった。金魚専門誌、陶芸専門誌、タトゥー専門誌。文字のない雑誌、もはや紙すらも使っていない雑誌。毎日新しい雑誌が入荷され、今日はどんな雑誌がきているんだろうと、まとめてある封を開けるあの瞬間が、いつも好きだった。わくわくした。毎日本棚に並ぶ雑誌の表紙を見ているだけでそのときの流行がわかるのも、面白かった。

しかし、今だから正直に言うと、私は雑誌コーナーに配属されたとき、心底がっかりした。雑誌をそれほど面白いと思ったことがなかったからだった。小説や学術書を読むのは好きでも、雑誌というのは自分の「読書」のカテゴリーに入っていなかった。あくまでも雑誌は「立ち読みするもの」であり、わざわざ所有する必要性を感じられなかった。小中学生のときでこそ、付録欲しさに毎月ピチレモンやニコラやセブンティーンなどのファッション誌を買ってはいたが、大人になってからは雑誌をちゃんと読むことなんてほとんどなかったと思う。

だから、驚いた。とてもとても驚いた。なぜなら、この世には、ほしくてほしくてたまらない雑誌を求めてあちこちを探し回っている人がたくさんいるのだということがわかったからだ。「昨年の4月に出た、〇〇の△△特集なんですけど、在庫ありますか?」「どうしてもほしくて、ネットにもなくて、他の大きな本屋さんにもなくて。ここならあるかと思って」こんな具合に。人々をかきたてるほど、「どうしてもほしい」と思わせる雑誌がある。特集がある。バックナンバーがある。その事実が不思議だと思った。
そういう、「人を狂わせる」雑誌というのが、だいたい3ヶ月から半年に一回くらい、出ることがあった。すぐに品切れになり、やっとの思いで確保した追加分も、一瞬で無くなってしまうような、そんな雑誌。

もちろん、私も雑誌の担当だから、その雑誌を手にとって読んでみた。でも、よくわからなかった。すごくかっこいいということはわかる。でも、私にとっては、あんなに必死になって手に入れたいと思うほどのものではなかったのだ。

いったい、ああいう雑誌の何が、人を狂わせるのだろう?
私は、もういっそ、怖いとすら思った。ただの一冊の雑誌が、その人たちの運命を、人生を変えてしまっているように思えたからだ。
だから、私はそんな現象が起こるたびに、いつも考えた。何が違うんだろう? 何が魅力的なんだろう? 何が響くんだろう? 一生懸命考えたし、読み込んだし、先輩と話してみたりもしたけれど、それでもわからなかった。

毎日毎日棚を見て、新しい雑誌をチェックしていたので、自然と店内にある3000冊が何なのかは、把握できるようになった。どんな雑誌が売れて、今はどんな雑誌が求められていて、次は、どんなブームが来そうか。そんなことがなんとなく予測できるようにはなったけれど、結局、ほんの一握りの雑誌の何が、人を狂わせるのか。その謎は、解けないままだった。

そして、最近のことである。私は、天狼院の雑誌『READING LIFE』の編集をすることになった。副編集長と肩書きは付いているものの、雑誌の作り方なんてほとんどわからない。台割って何? 色校データって何? 校正って何すればいいの? 一から十までわからない状況に、私は頭を抱えた。それでも、もうやることになってしまったんだから、手探りでも、なんとか調べながらやるしかない。
やってみてわかったことだが、雑誌というのは本当に手間がかかった。信じられないくらい手間がかかった。確認作業も多く、あちこちに電話をかけ、連絡をし、その情報が正しいのかどうかをきちんと調べなければならない。
「もうやめたい」と何度呟いたことだろう。私は心底後悔した。本当に辞めればよかったと思った。ややこしすぎるし、めんどくさすぎる。校正作業で文字を見過ぎてゲシュタルト崩壊を起こし、ノイローゼになりそうだった。

どうしてここまでして、人は雑誌を作るのだろう、と私は思った。なんでこんなにめんどくさい思いをしてまで、雑誌を作るのか。同じ情報を公開するなら、別にWEBに記事を掲載するのだって変わらないはずだ。むしろ、そっちの方が安いし、デザインもいらないし、時間も早くて済む。

三日三晩編集作業と校正に追われ、まともに動かない頭の片隅で、ぼんやりとそんなことを思った。こんなに苦労してまで、雑誌というのは、はたして作る価値があるのだろうか、と。

「校了しました」

けれど、デザイナーに最終チェックしたデータを送り、校了したという報告を終え、あらためてパラパラと、チェック用に印刷した入稿データをめくっていたとき、急に、悪寒がした。
ゾッとした。ぞわりと全身に鳥肌が立った。気持ちが悪い、とすら思った。

ああ、この雑誌が世に出てしまうのか、という事実に気がついたとき、私はとてつもない恐怖を感じたのだ。おそらく、本能的に。

完成した176ページの原稿は、ページの並び、文章の流れ、記事の順番、表紙をめくってから最後の裏表紙を閉じるまでのすべてが、計算し尽くされていた。とことんまで、考え抜かれて作られていた。

でも、そりゃあそうだよな、と思った。
だって、私たち編集チームは、この雑誌『READING LIFE』を作るとき、一切妥協しなかったからだ。
本来ならば、もっと早めの春に発売する予定だったものを、ここまでのばしてしまったのは、妥協ができないからという理由もあった。
記事も、天狼院のお客様の中でもライティングの猛者たちが集まっている「ライティング・ゼミ プロフェッショナルコース」の人たちに文章を書いていただいた。だから、一つ一つの記事の内容が、とてつもなく濃い内容になった。おそらく私なら、176ページある中で、たった一つの特集だけだったとしても、2000円を払う価値があると思うようなコンテンツが、暑苦しいほどに詰め込まれている。
文章だけではない。デザインも、写真も、眺めているだけでわくわくするようなものばかりだった。

こんな雑誌、見たことない、と私は戦慄した。

そのときふと脳裏に、かつて大型書店で働いていたとき、何十人もの人が一つの雑誌をほしがって店にやってきたときの映像がフラッシュバックした。
そして、確信した。

ああ、きっとこの、雑誌『READING LIFE』においても、それは起こるだろう。
おそらく、発売当日になり、その中身が解禁されたときには、人々の欲望を掻立ててしまうだろう。

なぜならこの雑誌の、いわば最初の読者である私が、この雑誌を世に出したくないと、強く、心の底から、そう思ったからだ。
あれだけ苦労して、寝ずに編集をして、めんどくさいだのもうやめたいだのと毎日愚痴を言っていたにも関わらず、私はこの雑誌を売りたくないと思った。独り占めしたいと思った。他の人に知られたくないと思った。有名にならないでほしい。私だけが知っていて、たまに会う雑誌フリークの友達に、「この雑誌知ってる?」とプチ自慢をする程度の雑誌であってほしい。

ついに、疲労で頭がやられたのかと思った。バカか、私は。何のためにこの雑誌を編集したんだ。「人生を変える雑誌」を作るという目的のもと、みんなで頑張ってやってきたんじゃないのか。

そこまで考えて、私はようやく思い出した。この雑誌のコンセプトが、「人生を変える雑誌」であったということを。

「『人生を変える雑誌』を、この雑誌のコンセプトにします」

そう編集長の三浦が最初に言ったときには、あまりピンときていなかったのに。
いざ、完成した原稿を読み返して、眺めて、ゾッとした。鳥肌が立った。
何度見てもやっぱり、思った。この雑誌を、私だけのものにしたい、と。
そして、この雑誌が間違いなく、あのとき私が不思議に思っていた「人を狂わせる雑誌」になってしまったのだという事実を、確信した。確信するしかなかった。

ページをめくる自分の手が細かく震えているのが、紛れもない、証拠だった。

3000冊もの雑誌を見てきた私だから、今後これほど自分が熱狂する雑誌など、出てくるはずがないとたかを括っていたのかもしれない。
それが、間違いだった。
誰かのとてつもない熱量や、細部までこだわり抜かれたある種の「魂」とでも呼ぶべきものは、同じものを持つ人間には、強く、本当に強く響いてしまうのかもしれない。
作り手と読者の中で、共鳴し合うものが生まれた瞬間に、頭がおかしくなるほど、それこそ狂ってしまうほど、人の心を掻立てるような作用をもたらしてしまうのかもしれない。

「雑誌」というのはあくまでも媒体にすぎなくて、もしかすると、新しい自分を手にいれるためのチケットがずらりと並べられているだけなのかもしれないと、ふと思った。

本日6月4日、今より、正式に雑誌『READING LIFE』の予約受付を開始いたします。

 

2017年6月4日
READING LIFE副編集長
川代紗生

【雑誌『READING LIFE』予約する際の注意と通信販売について】
いつもありがとうございます。雑誌『READING LIFE』副編集長の川代でございます。
『READING LIFE』は3,000部作りますが、発売日にお渡しできる分の数に限りがございます。確実に手に入れたい方はご予約をおすすめ致します。初回限定特典として、ご予約先着順にて、雑誌『READING LIFE創刊号』(2160円相当)を差し上げます。この創刊号のお渡しは、なくなり次第終了となります。ご了承ください。
また、万が一予約が殺到した場合、予約順でのお渡しとなりますのでご了承くださいませ。

店頭、お電話、メール、下の問い合わせフォーム、Facebookメッセージなど、あらゆる方法で予約受付致します。

 雑誌『READING LIFE2017夏号』2,000円+税
6月17日(土)19時から東京天狼院、福岡天狼院、京都天狼院各店にて発売開始・予約順のお渡し

今回は通信販売も同時に受付開始します。通販での受付も予約受付順の発送となります。PayPalでの決済完了時間が予約受付時間となります。
通信販売の場合、送料・手数料として500円別途頂きますが、その代わりに天狼院書店でご利用頂ける「コーヒーチケット(360円相当)」をおつけしますので、店舗に来る際に、ぜひ、天狼院でご利用頂ければと思います。
通信販売分は、発売日より、予約順に順次発送致します。

《一般先行予約》*雑誌『READING LIFE創刊号』つき
雑誌『READING LIFE2017夏号』2,000円+税





《通販先行予約》*雑誌『READING LIFE創刊号』つき
雑誌『READING LIFE2017夏号』2,000円+税
送料・手数料 500円(*360円相当コーヒーチケットつき)
発売日から予約順の発送





 

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