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川代ノート

昨日、トイレの水が溢れた。《川代ノート》


トイレ

 

それは、うららかな暖かい風にそよぐ桜のほのかな香りが私の鼻腔をくすぐる、とても気持ちのいい昨日の午後のことだった。

私はフロントラインでいつも通り仕事をしようとした。
玄関を開け、来たばかりのときで、パソコンを開いてさて頑張ってやることやるぞーと気合を入れたあと、「あ、仕事する前にトイレ行っとくか」と洗面所に向かった。

しかし、それが、悲劇のはじまりであった。

いつも通りに用を足して、いつも通りに水を流した。いつも通りにトイレを出ようとした。
出ようとした……のだ、が。

ふと後ろを見ると、便器の水が減っていない。あれ? おかしいな、私水流し忘れたのかなともう一度流すボタンを押した。

押した。

ボタンを押した。

じっと便器の中を見た。

水が、ジャーと音を立ててぐるぐる回り出した。

回り出し、回り、流れ、水が、下水道に、流れ……。

え?
あれ。
なが……
流れ……

「えっ」

私は自分にだけ聞こえる小さな悲鳴をあげた。

なんと水がじわじわと便器から溢れてきているではないか!!

「ちょ……ちょ、えっ、ちょっとまっえっえっえっ」

びびりすぎて、息が止まった。
溢れる水を止めなきゃ、でもどのボタン押せばいやボタン押したらダメだ、あれ、水出てる、出てる、あれ、止まらない、床が、あれ床が床があの水が水が水……水水水水水水水—!

「ぎゃああああああああああ」

そこで私ははじめて大きな悲鳴をあげた。

「ちょっ……やばいやばいやばいあの、まむさ……まむさあああああん!! まむさーん!!!! ぎゃああああああ」

「え? なになに? どうしたワン?」

いやどうしたワンじゃないわ!!!!

そうなのだ。天狼院スタッフ、まむさんこと今村有美はかなり不思議というかめちゃくちゃ面白い人で、とてもナチュラルに語尾に「〜だワン」とつけるのである。そのせいで今天狼院のスタッフの中でも「〜だワン」ブームが起きてしまっていて、フロントラインでは激しい犬化が進んでいる。美人のくせに変人。最高か。
いやでも今はそんなことを言っている場合ではない。「トイレの水が溢れる」という人生で三番目くらいのハプニングに見舞われた私が「大変だワン!! 助けてワン!!」と返す気力など全くなかった。

「まむさんちょっとこれやばいやばいどうしよう水が……うわーーー!!!」

洗面所一面にトイレの水が溢れた。まずい。これはまずい。どうしよう。
焦りながらも急いでトイレを出る。
が、水はまだ止まりそうにない。廊下にまで水が溢れている。洪水状態だ。

「やばいとりあえず靴下」

靴下が濡れそうだったので、急いで裸足になる。
もう何をすればいいのかわからない。やばい。トイレの水が溢れるなんてことあんの? 何から始めればいいの? やばいやばいやばい焦りすぎて頭が回らん。

「とりあえず修理屋に電話するワン」

けれどまむさんがいてくれたから助かった。さすがである。冷静に豊島区のトイレを修理してくれる業者を探し、電話をする。

はあ、とため息をつく。
私はといえば、ようやく止まったトイレの水が、洗面所と廊下に作り上げた広大な池をどうするかを考えねばならなかった。
いや、まあ、どうするかと言っても私がトイレしたあとにつまったわけだから私が何とかするしかないのだけれど、もう、何というか、泣きそうだった。

水だ。これは水なんだ。ただの綺麗な水なんだ。
汚くない。汚くない。美しい。大丈夫大丈夫、水だ。母なる恵み。ちゃんとみんなの生活を潤すすばらしいH2Oでありこうして循環して私たちの体を保ってくれているのであって世界は巡り巡って私が吐き出したものは最終的に私の中に空気として送り込まれるのであってそして私たちは宇宙と一体化していて私は世界であり世界は私でそして一部は全部であり全部は一部だからつまり私はトイレでトイレは私なわけだから別に今トイレから出てきた水に触れたからと言って別に

動揺しすぎて思考回路はショート寸前。今すぐ会いたいよ(トイレ業者に)。

なんということだ。このすばらしく天気のいい日に、いかにも仕事がはかどりそうなこの日に、いったい私は何をやっているんだ。どうしてこんな目に。もうトイレなんかいかなければよかった!! 天狼院で行ってくればよかった!!

ティッシュペーパーと雑巾とクイックルワイパーでなんとか水を片付け、水が溢れた床を全部拭き、トイレマジックリンで磨いて、水で汚れたトイレマットと風呂マットを片付け、ゴミ袋に入れ……。

たいした時間じゃなかった。30分くらいのものだったと思う。
でも。

「時間じゃない何かを失った気がする」

「ワン」をつけるのを忘れ、素になったまむさんの顔も、疲れ切っていた。

 

 

そして。

「ぷぷぷ。いやー僕さきがトイレ溢れてびっくりしてるとこ想像したらおっかしくって」

夜7時、そう言ってニヤニヤ笑う三浦さんがいた。

私は悔しかった。なぜなら私がトイレをつまらせたわけではない。
私はトイレがつまるタイミングにたまたま立ち会ってしまっただけなのだ。運が悪かったのだ。

ぷーくすくすと笑う三浦さんを見て、私はやはり何かを失ったような気がした。

 

人はトイレが溢れた時、何を失うのだろうか?

時間?
お金?
労力?

違う!!!
それはな……心意気だ!!!!

 

 

などと脳内ワンピースごっこをしていても気が済まなかったので、記事のネタにすることにしました。

ごめんなさい。反省はしています。

みなさんもトイレの水漏れには気をつけてください。

 

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2016-04-07 | Posted in 川代ノート, 記事

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