チーム天狼院

【似合う髪型の見つけ方】美容師さんがカット前にめちゃくちゃ話を聞いてくれる人で最高だった《川代ノート》


記事:川代紗生(天狼院スタッフ)

 

いやー、半年ぶりに髪を切りに行ったのだが、あれはすごかった。マジで感動したよ。はじめての美容室だったんだけど。

私はもともと比較的美容室ジプシーな方というか、特定の美容室に通い続けるというタイプではない。洋服の好みがその時々によって変わるためか、ナチュラル系の美容室に行ったりモード系の美容室に行ったり……と、ついあっちゃこっちゃ試したくなってしまうのだ。で、このあいだ行ったときもそうだった。はじめてインナーカラーに挑戦したいと思って、ブリーチが上手そうなサロンを探してそこに行ってみることにしたのだ。

知り合いから「あのサロンはすごいよ!! 美容室難民なら絶対一回行った方がいい!」と言われていたこともあって、すごく楽しみだった。ただ、はじめてということもあって、担当してくれる美容師さんとの相性がいいのかとか、そういう不安ももちろんあった。

というのも、私は極度の人見知り……というか、被害妄想があまりに強すぎて、なかなか美容師さんに本音を伝えられないんである。もー29歳ってだいぶいい歳なのに恥ずかしいんだけどさ、まあとにかく、「こういう髪型にしたいんです」って主張するのがなんかめっちゃ照れるのよ。スマホ出して写真見せて「前髪はこういう感じにしたくて、色はこういうのがよくて」みたいな話をするのがなんかめっちゃ恥ずかしいんよ。わかる?「あ〜、この人こういう見た目になりたいんだ」って知られるのが嫌っていうかさ、笑われたくないみたいな。子供の頃自分が好きだったアニメの存在を親に知られたくなかったときの感情と似てる気がする。

で、そんなわけであまりにも自意識過剰すぎるので、今回も初めてのサロンでどんなふうに髪型を変えたいのかきちんと伝わるか、私はひどく不安になっていた。しかも、私が本当にやりたかった髪型は韓国のオーディション番組『ガールズプラネット999』に出ていた坂本舞白ちゃん(kep1erデビューおめでとう!! マニアックですいません知らない人はマジでクッッッッソ可愛いんでぜひ調べてください)みたいな髪型という、一部界隈では知られてるけど一般的にはめちゃくちゃニッチ! なやつだったんである。石原さとみとか北川景子の写真なら見せられるけど坂本舞白の写真を見せるのは恥ずかしいというこの……なんというか……わかります?(わかれ)

サロンに向かう道すがら、舞白ちゃんのオーディション中の可愛すぎる顔面がよく写った画像をあらためて眺めながら私は考えた。さて、私がこの写真のような髪型になりたいと伝えるにはどうしたらいいか? 妄想の中の美容師さんはいかにも都内の一等地にある有名サロンで働いているといった自信に満ち満ちている。キラキラでカリスマで爪の先にはカラー剤が染み込んでいて、いかにも熟練といった雰囲気である。「今日はどんな感じにします?」「あ、えーと、長さはそんなに変えたくないんですけど……」「あー、長さはじゃあ整えるくらいっすかね。髪色って決まってます?」「えーと、一応寒色系にしたいなと思ってて……インナーカラー入れたくて……」「なるほどなるほど。インナーカラー、いいですね! じゃあベージュ系とかにしちゃいましょっか。顔色とも合うと思うし」「あ、はい……」「じゃ、まずシャンプーしてもらいますね。はーいお願いしまーす」

あーーーやっぱ言えない! 言えないだろこれ! 言うタイミングがわからない! ってかまず最初の人見知りが故の恥ずかしさ・照れ臭さを払拭するまでにあまりに時間がかかりすぎて、舞白ちゃんの写真にたどり着かん!!!

 

……とまあ、なるべく緊張しないように頭の中でシミュレーションを繰り返しつつ、そのサロンにようやっと辿り着いた、の、だが。

 

 

ところがびっくり、私、坂本舞白ちゃんに辿り着けたんですよ!! 普通に言えたんです!! 恥ずかしさもなくなんの躊躇いもなくパッと言えたんです!! ヨッシャアアア!!!

いや、これ脳内シミュレーションのおかげとかでもなんでもなくて、とにかく担当してくれた美容師さんが死ぬほど話を聞いてくれる人だった、というそれだけなのだ。

これが本当に最高で、私の中の「美容室=言いたいことが言えない(ポイズン)」という等式が崩された瞬間だった。

比較的若めの爽やかな美容師さんで、プライドが高い風でもなんでもなく、とにかく何が一番よかったかというと、「こちらが言ったことに対して肯定も否定もしない」ことなのだ。

何しろ、私は人の目をものすごく気にしてしまうタイプなので、相手の顔色を見て本当に言いたかったことが言えなくなるということが多々ある。

だから、たとえばこれまでの美容室なら、「重めの前髪にしたい」と思っていたとしても、「今って重め前髪あんまり流行ってないからダサいと思われちゃうかな」と先回りして考えて、結局「前髪迷ってるんですよね」と言ってしまうのだ。もしくは「重めもいいかなあって思ってるんですけど」みたいな曖昧な言い方をしてしまう。で、そういうことを言うと、だいたい美容師さんというのは「重めにするとちょっと子供っぽい印象になりますけど、大丈夫ですか?」みたいな確認作業をする。そうやってデメリットを伝えてくれるのはとてもありがたいのだけれど、そう言われると私も自信がなくなってきて、「ですよね! じゃあ、やっぱりシースルー前髪でお願いします」とか言っちゃうのだ!(シースルーのヘアセット、自宅じゃ全然できないくせに!!)

ところが、今回の美容師さんは違った。「どんなスタイルにするか」が確定するまでは、彼の「好み」は一切口にしないし、空気としてちらっとも出すことはない。

だから、今回「インナーカラーを入れたい」と話したときも、

「たぶん、今回川代さんがイメージされているインナーカラーの入れ方って、パターンとしては二つあるんですね。で、パターン1の場合は、この写真みたいな感じで、ここに線が入ります。メリットとしては、色がはっきりと目立ちやすいので、『インナーカラーを入れているな』という印象がきちんと伝わる。ただその一方で、アップヘアにしたとき、色がぱっくりと分かれてしまうので、目立ちすぎるのが気になる場合はやめた方がいいかもしれません。次に、パターン2ですが」みたいな感じで、こちらが話したことを全部樹形図みたいにテキパキと説明してくれるのだ。

これがもう口下手な私にとってはめっっっっっちゃくちゃ最高で、向こうが「自分の好み」を言ってこないからこそ、ものすごくフラットに自分のやりたいこと・理想のイメージを伝えることができたのだ。何を言っても彼は「自分の好み」を絶対に出してこない。「子供っぽくなっちゃいますよ」とか「モード感がかなり強くなりますけど大丈夫ですか」とか言わない。

そうなのだ。「〜〜になりますけど大丈夫ですか」という言い方をされると、「はい、大丈夫です」と言うまでのハードルがめちゃくちゃ高くなるのである。「今回はモードっぽく見せたいんだけどダメなのかな?」「なんかものすごく大きなデメリットがあるんじゃないか」と不安になっちゃうから、つい「あ、じゃあやっぱりこっちでいいです」って言っちゃうのよ! すいませんビビリで気にしすぎですいません!!

 

で、今回の美容師さんはとにかく全てがこの「樹形図トーク」で、カラーにしてもカットにしても全部「このパターンだとこうなります」「このパターンだとこうなります」を超細かく説明してくれるのだ。だからこそ、こちらとしても「樹形図の、こっちの、Aパターンがいいです」と正直に自分の意見を言いやすいし、相手が「好み」を一切出してこないからこそ、それを主張することに対して特に恥ずかしさもない。だから舞白ちゃんの写真を見せることにも抵抗なかったんだろうなあ。

いやー、その結果なんですが、やっぱり完成したヘアスタイルは超お気に入りで理想通りだった。舞白ちゃんっぽさは踏襲しつつ、ちゃんと私に似合うように仕上げてくれたのだ。びっくりしましたよ本当。あんなに話聞かれたの生まれて初めてだったもん。美容室って普通、最初のカウンセリングは2、3分程度、もっと短いとこだと1分とかのイメージだったんだけど、今回はたぶんカウンセリングだけで10〜15分くらい時間使ってたんじゃないかなあ。ちゃんと時計見てたわけじゃないからハッキリとはわかんないけど、体感としてはそれくらいあった。

で、美容師さんに「こんなに話聞いてくれるのめちゃくちゃ感動しました」って伝えたら、「どんなにカットがうまくても、ちゃんとお話を聞けてなかったら意味がないと思うんですよね。めちゃくちゃ美しいショートカットになったとしても、その人が本当はロングにしたい人だったら意味ないじゃないですか」みたいなことサラッと言ってて、いや〜〜〜もう最高〜〜〜〜〜〜!!! この人推す〜〜〜〜!!!! ってなったよね。

 

なんか美容室行っただけだったんだけど、仕事のなんたるかを勉強させていただきました。本当に。いやーすごかった。仕事でも、社内でのチームマネジメントでも家族とのやりとりでも、対人関係ではなんでもそうだと思うんだけど、やっぱり相手の本音を引き出すこと、相手が本当に言いたいこと、望んでいることを言ってもらうのって本当に難しくて、で、本音を引き出したいと思うと、ついこちらは焦って「自分の感情」をぶつけてしまったりする。「こっちが本音をぶつけてるんだから相手も本音で話してくれるでしょ」みたいな甘えが出てきたりする。でも違うんだよな。もちろんそれも手法としてはアリだけど、そういうやり方だけで全部がうまくいくとは限らない。私みたいに話が下手くそな人や、人の目を気にしすぎてしまう人ほど、「自分の本音」ではなく「相手が望む『自分の本音』」を言ってしまうからだ。「この人に本音ではこう思っててほしい」って相手が望んでいそうなことを推測して、「自分の本音」を捏造してしまう。で、そうやってかりそめの「本音」を一旦は相手に伝えるから、相手は「ちゃんとこの人のニーズを、本心を理解することができた!」と勘違いしちゃうんだけど、長い目で見ると違うんだよな。結局あとあとになって「あのとき、あの人にあんなこと言ったけど、よく考えてみたら違ったな」みたいなギャップが生まれたりする。その小さなしこりがあとになって大きくなって、人間関係の大きな歪みにつながったりもするしね。

 

いやー、もう深く考え出すと何が正解で何が不正解かわかんないけど、いずれにせよ、今回の件はめちゃくちゃ勉強になりました。本当に素晴らしい美容師さんだったし、またあの人に切ってもらいたいと心から思った。あと「樹形図トーク」は私も気をつけよう。

うーむ、しかしこう考えると、自分自身が「これは私の本音」だと思い込んでいるものの中にも、実は「急ごしらえの本音」が紛れ込んでいるかもしれないね。物事を、常にまっすぐに見続けるスタンスを忘れないようにしたいなあ。

 

 

 


❏プロフィール
川代紗生(Kawashiro Saki)

ライター。 天狼院書店スタッフ。ライティング・ゼミ講師。東京都生まれ・早稲田大学卒。WEB記事「親にまったく反抗したことのない私が、22歳で反抗期になって学んだこと」(累計35万PV)等、2014年からWEB天狼院書店で連載中のブログ「川代ノート」が人気を得る。レシピを考案したカフェメニュー「元彼が好きだったバターチキンカレー」がヒットし、天狼院書店の看板メニューに。メニュー告知用に書いた記事がバズを起こし、2021年2月、テレビ朝日『激レアさんを連れてきた。』に取り上げられた。天狼院書店で働く傍ら、ライターとしても活動中。2022年2月にエッセイ本『私の居場所が見つからない。』(ダイヤモンド社)を出版予定。

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