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花やぐ 〜REVIVAL〜 【R-18指定】

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【ご注意下さい】
これより先の記述には表現上の必要性から性的な表現が含まれております。未成年の方はもとより、性的な表現等を不愉快に感じられる方は、これより先を読むことを控えられますよう、お願い申し上げます。
なお、本忠告にもかかわらず、読み進められたために、万が一不愉快な思いをされたとしても、当方は一切の責任を取りかね、責めを負いかねますので、その点、ご理解頂ければと思います。

初めて会ったときも、さほど緊張しなかったのは、おそらく僕がある程度の年齢を重ねたからだろうし、またある程度の経験を重ねたからなのだろうと思う。最近では「不貞不貞しい」とか「図太い」とか言われるようになったのだが、僕自身としては、昔からそう人間が変わったようには思えない。
もし、起業する前の時点で、彼女を任せると言われたのならば、きっとこう言って躊躇していたに違いない。

「いえ、僕にはまだ無理です。まだ彼女を幸せにする自信はありません。彼女にはもっとふさわしい人がいるはずです」

そう、数年前、彼女は高嶺の花だった。

当時、僕には付き合ってたひとがいたのだが、彼女の様子を人伝いに聞いたり、また実際に遠くから見たりしていると、どうしても憧れにも痛みにも似た、じつに不安定な想いをしたものだった。
確かに、当時付き合ってたひとはとても若く、しかも交際期間も3年を過ぎていて、知り尽くし過ぎるくらい知っていて、喜ぶポイントも悉く知り、僕が意図したとおり、容易に快楽へと導けるようになっていた。そのひとは身も心も僕に対して従順で、特にこれと言って不満などなかったのだけれども、従順なゆえに時に退屈で、音に聞く彼女を僕のものにできたらと、夢想しないこともなかった。

いや、有り体に告白してしまえば、夢想しない日はなかった。
僕ならば、彼女をどう喜ばせることができるだろうか。どう幸せにしてあげられるだろうか。きっと、僕の方が彼女を美しくいさせることができるに違いない。
そう思っていた。

噂に聞く彼女は当時の僕の恋人よりも遙かに年上だったけれども、実に大人びていて、知的で、いろんな人たちから一目置かれた存在だった。知的社交界の、ある種の花形であったと言っていい。

美しく、知的で、一見満ち足りているようだったけれども、どうも彼女はその当時から不満を内に秘めているらしかった。折からの業界の不況や何やらで、とてもナイーブな状況に立たされているのは、傍目にも明らかだった。
彼女が連れ添ったパートナーは、僕などよりも遙かにキャリアが長く、若いときから期待されていた社内のエースとも言うべき人で、この人はこの人で、業界からも一目置かれた存在ではあったが、風の噂から判断するに、彼女はこの人に満足していないらしかった。

要するに、僕が遠目に見て、多分に思い描く彼女は、当時から常に物憂げだったのだ。

それから起業してからというもの、僕は前の恋人とも別れ、当然のように憧れの彼女とも疎遠になったのだけれども、たまに見かける彼女の事を、気にしないでもなかった。

2年前の、2010年の春に、僕は事業でひとつ躓き、夏には事業の縮小を余儀なくされたことは、あるいは多くの方がご存じかと思う。

わけあって、僕はまたこの会社で働かせてもらうことになったのだが、ちょっと三浦君、このひとの面倒をみてやってもらえないか、と言われたのは、お世辞にも綺麗とは言い難い、率直に言って年老いて、年相応に老け込んだ女性だった。

この女性は半ば諦められていた。どうすれば美しくなるのかという話がなされる前に、なぜ美しくないのかの理由付けを延々とされるような不幸の元にあった。
そう、彼女の美しさが陰っているように見えたのは、何も、年齢や生まれ持っての器量のせいではない。
パートナーから愛されていなかったのだ。
少なくとも、パートナーは、彼女の愛し方、彼女の喜ばせ方をまるでわかっていなかった。

あるいは、以前の僕ならば、同じように彼女をもてあましてしまっていたかも知れないし、ただただ彼女のヒステリーに怯えて何もできなかったかも知れない。
しかし、僕は以前の僕ではなかった。起業してまがいなりにも経営者としてビジネスの大海を自らの小さな船で漕ぎ進んでいくうちに、自分でも想像しなかったほどに、強くたくましく、そして幾分か賢くなっていたらしい。

僕は彼女にほほえみかけることから始めた。

「大丈夫、君は美しい。本当はとても美しいんだから、自身を持っていいんだよ」

彼女に会う度に、僕はそう彼女に語りかけ続けた。そして、僕は真実、そう信じていた。

君は美しい。本来の君の美しさ、華やかさはこんなものじゃないはずだ。きっとまたみんなを魅了することができると。

万が一、これが嘘偽りであったとしても、少なくとも「美しい」と言われた女性がそれよりも美しくなくなることはない。大抵は「美しい」と言われれば、よほどのへそ曲がりでない限り、悪い気はしないはずであり、頬もゆるむというものである。

しかも、毎日毎日心から、「美しいね、君は本当に美しいね」と語りかけられれば、女性は自尊心を取り戻し、やがてその自信は凛とした美しさの芯となる。そう、花やぐためにもっとも必要なのは、自分は美しいのだという自信を持たせることだ。妄信的なほどに、それを信じ込ませることだ。

自尊心を持った女性は、ぼさぼさの髪や、肌荒れを気にするようになる。メイクを丁寧にするようになり、洋服を選ぶのに時間を費やすようになり、それが評価されると、そうすることがより楽しくなり、ますます美に磨きをかけるようになる、というふうに美の上昇スパイラルに乗る。

僕が本格的に手をかけるのは、そうして美の上昇スパイラルに乗ってからだ。自尊心をこてんぱんにやられている女性というのは、こちらがいくら手をかけても容易に花やぐものではない。一方、自尊心を持った女性というのは、美しくなることに素直であるから、こちらが意図したとおりに反応してくれる。

こうまでなれば、服のボタンに手をかけても、もう抵抗はない。
硬いボタンがあれば、自ら外してくれたりもする。乱暴に扱うと皺になる服などの場合は、「まって」と言って自ら脱いでくれたりもする。

僕は目の前で裸になった女性を丹念に見つめる。隅々まで見つめる。もうこれでもかってくらい、本当によく観察する。時に息が吹きかかるくらい間近に寄って見つめ、時に相手が不安になるくらい離れてそこからまた裸の全身を眺める。僕は自分が納得するまでそれを繰り返す。

特にみるのは、「体の流れ」である。同じ女性と言っても、身体的特徴は人それぞれであるから、その形状に沿った「体の流れ」を見極める。

そして、まずはセオリー通りに、つまりは一般の女性が「いい」と言う確率が高い場所から順に攻めていって反応を確かめるのだが、往々にして、女性とはセオリー通りにはいかないものである。

ここがいいだろうな、と自信を持って触れたところに何の反応もなかったり、逆にここはありえないだろうとたかをくくっていたところが、一番良かったりする。ゆえに、先入観を持つのが最もよくない。女性のからだは神秘に満ちているということを常に念頭において、初めて女性の肌に触れるときのような、新鮮な感覚を失ってはならない。

ある程度、ポイント、ポイントで女性が「いい」というところ、つまりはスイートスポットの場所を把握したら、今度は丹念な観察によって見極めた「体の流れ」に沿わせて、そのポイント、ポイントをストーリー性をもって結びつけてやる必要がある。けっして、ひとつひとつのポイントだけでは女性は満足しないのだ。複数のポイントを、ストーリーづけて一連に攻めることができれば、女性は花やぎやすくなる。

もちろん、女性に触れるときも、やはり美しさを自覚させる必要がある。その気にさせると、女性は花やぎやすくなる。

こうして日々女性に「いい」と言わせ続ければ、女性は自信とともに、充足感を得ることになり、ストレスが緩和されて、より美しくなる。そして、日々花やぎ続ける女性は、やがてオーラを放つくらいの美しさを身にまとうようになり、多くの人から愛されるようになる。

 


 

 

さて、そろそろ、種明かしをいたしましょう。

勘のいい方なら、もう「女性」に何を代入して読めばいいのか、おわかりかと思います。
そうです。
上の文脈において「女性」を「書店」に置き換えて読むと、それまでの書店における僕の動きがわかるように仕組まれております。

この記事は、もともと、2011年1月31日にアップしたものでした。今から一年半ほど前に書いたもの、ということになります。当時は、祐天寺店でのビジネス署を中心とした改革が成果をあげて、旗艦店の高田馬場店への異動が決まったころのことです。

「僕が年老いた女性のような店舗」、祐天寺店で行ったのは、簡単に言えば、上記のようなことです。もっとも、早急に結果が求められていたので、ツイッターやらミニチュアやらと裏技を相当に駆使しましたが、基本的にはその店舗や売り場を交際している女性のように愛することから始めました。
そして、「体の流れ」つまりはお客様の「動線」を研究し、仕掛け本が売れる「スイートスポット」を何点か探り出し、それを「動線」に関連づけてストーリー化して参りました。その一連の行為が、「書店劇場化プロジェクト」のコアと言ってもいい。

「書店劇場化プロジェクト」によって、僕はほとんど4ヶ月間という期間で、ビジネス書を中心とした担当分野を、改革前比、実に217%まで引き上げ、店全体の売り上げも、飛躍的に上昇し、その成果によって僕は祐天寺に赴任して5ヶ月で、旗艦店の馬場店に異動したのでした。

「書店劇場化プロジェクト」がうまくいったのは、「昔付き合っていた彼女」こと、航空公園駅店での3年間に渡る店長としての経験があったからです。ここで、小型店舗の運営のほとんどを習得し、同時に、特定商品における拡大販売の手法も独自に編み出しました。

今回、この記事を「花やぐ〜REVIVAL〜」としてアップしたのは、原点回帰をする必要があると考えたからです。そして、多くの皆さんに、「書店劇場化プロジェクト」の趣旨を知っていただきたいと思ったからです。

なぜなら、僕は今まさに「書店劇場化プロジェクト」を普及させようと準備をしているからです。

実のところ、「書店劇場化プロジェクト」は、企業秘密がぎっしり詰まっているため、天狼院書店がオープンしてから、自分の書店のみで展開しようと考えていました。それに、インターネットのリスティング広告の理論を応用して独自に構築した「インプレッショナル・マーケティング」をはじめとした中核理論を実践するには、単に1商品の展開だけでは実現できないとも考えていました。

けれども、ここ数ヶ月、様々な書店さんをめぐり、様々な書店人の方々と真剣に話をし、真剣に売り場作りをする中で、「書店劇場化プロジェクト」を天狼院ばかりで独占するのはもったいないことなのではないか、また、彼らとなら一緒に実現できるのではないかと考えるようになりました。

有り体に言いますと、僕は、書店における小型店舗運営の方法論をすでに確立しております。

「書店劇場化プロジェクト」を構築する理論は、机上より生じたというよりも、むしろ、現場からのフィードバックの積み重ねと実績から生まれたものだと言えます。たとえば、それは文化芸能における一子相伝の秘伝書のようなものであり、コカ・コーラの門外不出のレシピのようなものであるとさせ考えております。
もっと簡単にいえば、それは、書店という女性を花やがせる方法ということです。

これを解禁して、他書店さんにも導入してもらおうと考えております。

「書店劇場化プロジェクト」と普及の方法については、明日アップする予定の「書店劇場プロジェクト」の記事に譲ることにいたしましょう。

僕は常に夢想しております。

どうすれば、書店を面白くすることができるだろうか、
どうすれば、お客様を振り向かせることができるだろうかと、

まるで、思春期の少年が、初恋の人のことを想うように、四六時中、そのことばかりを考えていると言っていいかもしれません。

これからも、考え続けようと思っております。

そして、来年の夏に天狼院書店がオープンした暁には、大いに賑わった売り場を作ろうと思います。

あたかも、憧れの女性を花やがせるように。

》》書店劇場化プロジェクト


2012-08-15 | Posted in その他, ニュース

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