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メディアグランプリ

車って、まるで恋人


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:白石明香(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
なぜだか今、輸入車ディーラーで働いている。私は決して容姿端麗な訳ではないし、派手さもない。ただ輸入車に詳しいことと、その国に馴染みがあるだけである。
 
働きはじめて半年。毎日いろんなお客様と接して、購入の過程を観察していると、車との出会いは、人との出会いと同じ、「縁」なんだなと感じることがよくある。
 
例えばAさん。「この車種の、このグレードで、この色が欲しい」と仰っていたけれど、あいにく在庫がなかった。必ずしも在庫があるとは限らないのが面白いところ。そこで断念するお客様もいれば、営業の提案した車に興味を示す人もいる。Aさんの場合は、妥協して営業の提案する色でご成約いただいた。希望の色ではなかったけれど、最初はまぁしょうがないという気持ちでいたそうだ。でも乗っているうちにだんだん、この車にしてよかったと感じるようになったと言う。周りから、その色が似合うと褒められることが多いのだとか。今は車で遠出するのが、楽しくてしょうがない様子。
 
最近ご購入いただいたBさんは、13年乗っていた軽自動車から乗り換えた。車を買い換えるのに、燃費、デザイン、安全性、色々と検討する中で、輸入車に興味が出てきたとのこと。それでうちのお店に来てくれたのだけど、来店されたその日に、展示車をご成約。いきなりご購入となったので、正直驚いた。店長のゴリ押しに根負けしたんじゃないかと、心配していた。そんなBさんが、運転の練習をしたいと言うので、近場を一緒にドライブすることに。
 
「ヤダ、新しい車に乗ってるなんて信じられなーい。ちょっと怖ーい」
 
そう言いつつも、ぐんぐんスピードを出すBさん。私は思わずシートベルトをギュッと握りしめる。緊張のドライブをしつつも、Bさんは面白い話をしてくれた。
 
「私、あの日に、この車を買うって直感したの」
 
言葉を選びながら、ゆっくりと話しはじめた。
 
「輸入車が気になって、周りの人に色々と相談したんだけど、輸入車に乗ってない人はアドバイスじゃなくて、自分が買えなかったことを正当化する言葉をぶつけてくるの。それが嫌で、他人に相談しちゃダメだって気づいたの。自分が乗るんだから自分で決めなきゃって」
 
それは車だけじゃなくて、何事にも通ずると感じて私は身を乗り出して聞いた。
 
「思い出してみると、13年乗ってたあの車を買うときも同じだったの。最初は他の車を検討してて、でも欲しい色がなかったり、買おうとしてたら売れてしまったり。でも諦めないで探したらあの車に出会って。乗りやすかったし、飽きなかった。それで、今回は白がいいなーって思ってたら、店長さんがこの車を勧めてくれて、もうこの車が絶対ほしいと思ったの!」
 
私はその言葉を聞いて安心した。この車はBさんのためにあったのか。いくつもある展示車を眺めていると、どんな人の手に渡るのだろうと想像することがよくある。お似合いの主人を見つけて旅立っていく車たち。この車もBさんのものになるべくして、この店にあったんだなぁと実感した。
 
実は私、ショールームに展示されている1台を社割で購入する予定だったのだが、今所有している車を手放すのは、なんとなく違う気がしていた。どこか引っかかるものがあった。実際、まだ4年しか乗っていないし、走りも硬めで好きである。
仕事上、いろんな車に乗るので、私が買うとしたらどの車がいいだろうと、考えながら乗ることが多い。たくさん車に乗るうちに、私が気に入るポイントは、まんま今乗っている車と同じだと気づく。それ以来、ショールームにある宝石のようにキラキラした車に、以前のような魅力を感じなくなった。それに、Bさんの話を聞いてより一層、「私は今の車を大事にしなきゃダメだ」と直感した。それはまるで、魔が差して浮気しそうになったけど、我に返って、恋人の元に戻ってくるみたいな感覚だった。車にも人格があるのかもしれない……。
 
思い出してみると、大学生の頃に乗っていた黄色い小型自転車。すごく気に入っていたんだけど、悲しいかな盗まれたのだった。盗難に遭ったその夜に、虫の知らせといえばいいのだろうか?
「離れたくない、助けて」
という感情めいたメッセージを、どこかしらか受け取った。瞬時に脳裏に浮かんだのは、お気に入りの黄色い自転車。
「まさかね。ついに頭がおかしくなったかしら。いや、夢か」
深夜にパジャマ姿でアパートから駐輪場に出るのも気恥ずかしいし、自転車も取りにくい場所にあるから大丈夫だろう。気のせいだろう。そう思って寝た。がしかし、朝になってみると、私の自転車は消えていたのである。あの虫の知らせは本当だった。
 
モノにも命はある。
 
そういう訳で、私は今の車が「もういいよ」と言うまで、乗り続ける気でいる。
 
 
 
 
***
 
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 

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2019-09-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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