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母親の送迎をして

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:片山慶子 ライティング・ゼミ日曜コース
 
 
母親と折り合いがよくないまま、いい年になってしまいました。
 
私は幼少時代を祖父と過ごしました。共働きの母親がいつも家事に追われていたからです。祖父が亡くなって10年たちますが、今でも心の中にいるのは祖父。いいことがあったりすると、祖父に心の中でお礼をいいます。
 
思春期になると、兄が不登校になり、家で暴力を振るうようになりました。
私は家に帰りたくなくて、バイト先に寝泊まりするようになりました。ほとんど心が通じ合う事のなかった母に、生活の事で文句を言われても反抗心しかなかったです。
どうせ可愛がってくれてもいないのに今更何を言っているんだ、と。
 
家にいると、兄に体を触られたり、風呂を覗かれたりしました。兄と隣り合った自室の壁には、今でも兄の空けたのぞき穴がいくつもあります。つらいことがたくさんあったのに母親は全く気にしてくれない。むしろ、祖父に気を使い、息子にも暴れられて、つらい私の気持ちを分かってほしい。そんな母親の言い分を、都合のいいことを言うなと心底嫌っていたのです。
 
四十歳を過ぎても、そんな状態がつづいていました。
一緒に暮らしていないこともあって、用事はショートメール。口を聞きたくないから電話がかかってきてもでない。どうしても話をしないといけないときには、敬語を使います。
そうして、母親に感情的になって振り回されないように自分を守ってきました。
 
そんな日々を送ってきたのですが、先日こんなことがありました。
白内障の手術で母親を病院へ送り迎えすることになったのです。片目ずつする、とのことで送り迎えが計2回あります。
 
母親の送迎をする。
こんな簡単なことが私には簡単ではありません。
最初の送迎では、母親の「一人暮らしで寂しい。」という言葉にかっとなってしまい、「あなたは私のつらい時に助けてはくれなかったでしょう。子の義務として病院の送迎はするけれども、精神面の支えには絶対なれませんから。」と口調をあらげ、感情的になってしまいました。
 
こういうとき、いつも後で後悔してしまいます。
だから距離をあけていたのに。やはり、会ってはいけなかったのだ、と思いました。
 
そんなことがあっての、2回目の送迎。
感情的にだけはなるまい、と心に決めて病院へ。
 
車の中で必要事項だけの最低限度の会話をして、病院の玄関に母親を降ろした時の事です。
 
玄関に向かっていく後姿をなんとなく見つめていました。その時、なんだか今までになかった感情が沸き上がってきたのです。
「かわいそうな人だ。」
 
高齢者と呼ばれる年齢(79歳)になっていますから、足取りはおぼつかなく、いかにもおばあちゃん、という地味な服装にボサボサの白髪頭。
 
息子にも夫にも先立たれ、娘に心を許してもらえず、いまだに昔の事を責められ、ひとりぼっち。
 
それは、母親の事を感情的に見ることなく、
初めて客観的に見られた瞬間でした。
「あの人はかわいそうな人なのだ。」
 
人付き合いにおいて、「嫌い」という感情が先行してしまうと、関係がうまくいきませんよね。ひどくなると距離を置いたり、なるべく会わないようにしてバランスを取ります。直属の上司や距離を置けない関係にある人だと、さらに高度なかわし方がいりますよね。愚痴を言い合う仲間を作る、だとか。体調を崩してしまう人もたくさんいらっしゃると思います。
 
客観的にみられるようになると、関係が改善されるケースがあるのではないでしょうか。例えばいつもイライラして高圧的に振る舞う彼女は、実は自宅で親の介護を夜通ししている。彼女は疲れていて、癒されたいのだ。かわいそうな人だ、と思うことができれば受け取り方が変わるかもしれません。
皆が皆、うまくいくばかりとは限りませんが、見方を変えてみる、というのも一案ではないかと思うのです。
 
私は母親を「かわいそうな人だ。」と思ったとき、
今まで母親にまとわりついていた、怖い顔をした幽霊が、ふわりと宙を舞い、どこかへ消えた気がしました。
 
それを手放しても、もういいではないか。と思えたのです。
 
足腰は元気な母親ですが、残された人生は決して長くはありません。
いまさら仲良し母娘になろうとは思いませんが、感情論で昔のことに振り回される時代を終えて、現実をしっかり見つめてこれからは歩んでいきたい。
母親の後姿をみながら、そんな気持ちになれたあの瞬間。
 
気づけたことで、心の重しが少し軽くなったような気がしています。
 
一歩一歩、前を向いて歩いていこう。
 
 
 
 
***
 
 
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2019-09-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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