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メディアグランプリ

気候危機時代の小さくて大きな冒険


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:ブロムベリひろみ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「えっ! ルーブル美術館の隣に住んでいながら今まで足を踏み入れたことがないの?」。
 
私がパリで知り合ったジャンクロードさんは、パリのど真ん中で育ったインテリなのに世界中から人が訪れる観光名所にあまり興味がないようでした。
 
「生まれたときからそこにあったからね。別にわざわざ行かなくてもいいよ」、というのが彼の言い分。初めて訪れたパリの魅力に取り憑かれたあまり、数年後には彼の地に引っ越してしまった私には理解できない発言でした。
 
でもそう言えば、確かに私にも思い当たるフシがあります。京都で学生時代を送ったにも関わらず、その時は大阪から通学するだけで精一杯。卒業が間近になってきて、慌てて初めて有名な寺院を巡ったものです。
 
あぁ、人は身近にありすぎるものの価値をなんと見過ごしやすいものなのでしょう! 見過ごしているはそんな大した観光名所以外にも他にもおそろしいほどたくさんあります。
 
今からかれこれ5、6年前のことでしょうか? 当時勤務していた会社の得意先を有楽町のとあるビルに訪れた私は、同僚との待ち合わせの時間よりずいぶん前に現地に着いてしまいました。コーヒーでも飲みたいところですが、1階のカフェは長い行列があり並ぶ気になりません。
 
あきらめて、所在のなさにビルのホールを改めて眺めてみると、ただならぬ雰囲気。年季がはいってそうなビルだとは入る時に感じていましたが、見渡すと、扉やら手すりやらタイルやら、ディテールがいちいちすごい。
 
「へ、なにこれ! 歴史的建造物!?」と思って、手元のスマホでググってみるとビルの歴史や逸話などがいくらでもでてきて興味がつきません。同僚がいつの間にか到着していたのにも気が付かないくらい熱中してしまったこのビルの歴史。カフェの行列がなければ気がついていなかったと思います。
 
そんな経験がありながらも、今スウェーデンに住んでいる私は地元のミュージアムにはそれほど行きません。先に話したジャンクロードさんと同じです。一方で、次にウィーンにいった時には、ロンドンに行った時にはどの美術館、博物館を訪れようかと計画する熱心さです。
 
まぁ、これまではそんな生活態度でもよかったのですが、2019年の今、そうも言ってはいられなくなりました……。
 
最近は日本のニュースでも時々取り上げられているのでご存知の方もいるかもしれませんが、スウェーデンには16歳の環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんという方がいます。
 
彼女は現在の状況は「気候危機」であると訴え、私たちは早急に科学者のいうことに耳をすましこれまでの行動を変えるべきだと言います。去年の8月からの変革のための学校ストライキで注目を集めたグレタさんは、今、飛行機ではなくヨットでアメリカに渡っており、これから国連でスピーチを行う予定です。
 
気候危機に対応するためには、二酸化炭素の排出量を抑えることが大切です。スウェーデンでは、グレタさんの言うことを真剣に受け取った人も多かったのか、飛行機での移動が減り、肉の消費も新しい衣料の購入も今年に入ってから減ってきています。
 
私は「実家が日本にあるのに困ったことになってきたなぁ」と思いつつも、やはりこれまでの行動を変える必要は理解したので、自分のできる範囲で少しずつ変化を取り入れてきました。
 
それは仕事でもプライベートでもできるだけ飛行機による移動を抑えることであったり、地産地消の精神にのっとり(日本の食べ物がどんなに恋しくとも)自分の住んでいる土地で採れる食材を元にして食事を組み立てることであったり、ヨーロッパの他の街へ旅行にでかけるのではなく、これまで足を踏み入れてなかった地元の小さな公園や博物館へ目を向けてみることであったりしました。
 
驚いたのはその行為が与えてくれる生活の豊かさです。
 
有楽町の古いビルに深く感動したのと同じように、スウェーデンのじゃがいもや穀物に関する知識を深めることがこんなに楽しいとは思いませんでした。とある公園のなんてことないベンチに腰掛けていたつもりが、それが有名な北欧デザイナーによるベンチだと気づいたりすることもあります。
 
なにも遠くの観光地にいかなくても、自分の暮らしの中にも「旅行にでかけてでも体験したい」小さくて大きな感動や冒険がいくらでもあることに気が付きました。そしてこれなら、これから気候危機が本格化して人々の移動に制限がでてくるような未来になったとしても、いつでもどこでもできそうです。
 
そうはいっても人間は理屈では動きません。私は最近発酵食品に興味があって、今度実家に返ったら京都にある種麹屋さんを見学してみたいと思っています。でも、ちょっと考えるとそんなことに思いをはせるより、近くにあるスウェーデンのおいしい牛乳をつかった手作りのチーズ作家をまずは訪れるべきなのですが……。
 
隣の芝生のたとえのように、遠くに思いを馳せることはやめられないし楽しいです。でも近くにも小さくて大きな冒険がたくさんあります。みなさんも、いつもの通勤、通学で前を通るけど入ったことのない小さな博物館に立ち寄ってみたり、スーパーではなく地元に昔からある豆腐屋や饅頭屋で買い物してみたり、日常の中の小さくて大きな冒険のもたらす豊かさをぜひお試しください。
 
 
 
 
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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 

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2019-09-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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