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こんまり式片づけの真骨頂は「ときめき」にあらず


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記事:のぐちまりゑ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「手で触れて、ときめくモノだけ残してください」
 
世界で最も影響力のある100人に選ばれた近藤麻理恵さん、通称こんまりさんの片づけ術である。
 
説得力があるようで、ちょっと曖昧でもあるメソッドだ。
 

 
わたしは、部屋にモノがあふれて心に余裕がない! と嘆いていて、
大半の人がそうであるように、わたしも「ときめき」による選定を試すことにした。
 
「直感」はもっとも頼りになる存在だし、ピンときたモノだけ残していけばきっとスッキリできるはず! と思ったから。
 
確かに、短期間で一気におこなった片づけは絶大な効果をもたらした。でもまだちょっとモノが多い。もう一回やってみる。結果スッキリした。でもまだちょっと多いかも……。
 
何度も何度も繰り返し、ようやく片づけを完遂できた。
 
その中で気づいたことは、「ときめきは偽装される」ということだった。
 
1回目の片づけで「ときめく!」と判断されたモノが、
3回目になって「やっぱりときめかないや……」と判断されたりする。
 
たとえば、立派な革の鞄。
1回目で「ときめく!」と感じたのは、革製品ってかっこいい! から始まり、人と会うときに革製品で登場する自分ってステキ! とか、革の経年変化を楽しめる自分ってステキ! という心の動きがあった。
 
対して、3回目の「やっぱりときめかないや……」と感じたときは、かっこいいんだけどお手入れはめんどうだな……とか、服のテイストと合わない、重いから使うときに一瞬ためらう、という心の動きがあった。
 
実は1回目のときもマイナスポイントは頭をかすめていたのだが、「革製品でのステキに見せたさ」によって覆い隠されていた。
つまり見栄によってわたしの感じる「ときめき」は偽装されていたのである。
 
これに気づいたとき、とても怖くなった。
 
直感はもっとも頼りになる存在だと思っていたのに、もしかしたら今までも瞬時に人の目を気にして、気持ちを偽装していたのでは……?
 
しかし、直感の頼りなさを目の当たりにしつつも、結果的には「ときめきの偽装」を見破り、片づけを完遂できているのも事実だ。
 
振り返って考えていくと、こんまり式片づけの真骨頂は違うところにあると気づいたのである。
 
それは「順番」だ。
 
「ときめき」ばかりが注目されがちなこんまり式だが、実は「順番」の方が重要なのだ。
 
はじめに衣類 → 本類 → 書類 → 小物類 → 最後に思い出の品である。
 
たとえば最初の衣類。オフシーズンの衣類から始めることで「昨日着た」「明日着る」などの差し迫った必要性にじゃまされることなく判断ができる。
ここで基礎を固めておくことで、以降の作業がスムーズに進むのだ。
 
次に本類にとりかかることで、基礎的な力を繰り返しなじませる段階として効果を発揮する。
しかも本は再度手に入れやすい。絶版本や入手困難な本はもちろんとっておくとして、ほとんどの本はもう一度読みたくなったら本屋や図書館という救済措置が存在している。
 
そして書類に突入。書類にときめく人はあまりいないので全捨てが基本になる。でもこれが最初だと基礎が身につかないのだ。
雑誌の切り抜きなど、好みが色濃く反映されているモノは、衣類・本類で鍛えた力が大いに役立ち、基礎固めの仕上げになる。
 
小物類では応用力が必要になる。
「使わないけど必要かも」「手放すのが不安」というモノが大量に発生するからだ。
けれど基礎を固めていく中で、使うかわからないモノを維持する労力は何度もシミュレートできている。
「いざとなったら買えばいい」という考え方も身についているし、たとえ小物であっても油断大敵だ、といつのまにか理解できるようになっている。
 
そして満を持して「思い出の品」にとりかかる。
今までの考え方すべての総結集で、自分が何を大事にしたいかを一番考えることになる。
モノを手放す不安と何百回と対峙したことで、「思い出」というアイデンティティに深く通じる不安とも対峙しやすくなるのだ。
 
はじめはもちろん偽装なんて気づきもしないから、粗いフィルタを通すことになる。
けれど何周もこの順番を経ることで、フィルタの網目が徐々に細かくなり、真のときめきに耐えたモノだけが残っていく。
 
名探偵が変装した怪盗を見破るには、観察力が必要だ。
同じように、ときめきの偽装を見破り、真の心の姿を見抜くのも観察力である。その力を育てるのがこの順番なのだ。
 
「卒業文集はステキな思い出がいっぱい詰まってるから捨てない!」と思っていたときめきは、
 
「本当は要らないけど、この卒業文集があれば過去を鮮明に復習できる。それは失敗した過去を忘れないようにするため。同じ失敗をしたら学習能力のなさが露呈してしまう。そんな恥ずかしい自分はイヤだ」
 
こんな不安を覆い隠すための偽装だったりする。気づくと確かに愕然とするが、痛快で心地よい見破りの例である。
 
もし今、直感を頼りに片づけに勤しんでいる人は、ちょっと落ち着いて考えてみてほしい。
 
その「直感」は、
その「ときめき」に似た心の動きは、
あなたの気持ちを反映できているだろうか?
 
本当はもう要らないと思っているのに、自分を過剰によく見せたり、過剰に正しておくためにキープしているのではないか。
 
ニセモノを装うのは思った以上にエネルギーが必要だから、じわじわと心を消耗させる。
 
たかが片づけでそこまで? と思うかもしれない。
しかし、気持ちの偽装を見破る力は片づけに限らず、生きていく上で不可欠なのである。
 
「自分が本当は何を望んでいるのか」の偽装が減ると、
心は消耗しなくていいから余裕が生まれ、対人関係にも余裕ができる。
リラックスした気持ちは周りにも伝わっていく。
進路選択、就職、転職、恋愛、友情、親子関係……、あらゆる場面で役に立つのだ。
 
心地よさのスタートは、順番を守ってみること。
変装した怪盗がいるかもしれない、と観察し続けること。
 
繰り返すことは同じ道を何度も通るから、改善していないように感じるかもしれない。でもらせん状に高みへ上がっていくように、必ず力はついてくる。
 
真の「ときめき」はそこで変装を暴かれ、ようやく姿を現すのである。
 
 
 
 
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2019-09-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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