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最後の砦は自分だ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:春野そら(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「事件ですか? 事故ですか?」
切迫した声で尋ねられ、私は一瞬、言葉に詰まった。
「いえ、あの、実は『民事訴訟最終通達書』という葉書が届いたんです。たぶん詐欺だと思うんですけど……。こういう届け出は、110番してもいいんですか?」
緊急事態が発生したわけでもなく、ただ詐欺葉書が届いただけだ。別に放っておけばいいだけの話で、110番通報は大袈裟だったかもしれない。私はちょっと申し訳ない気分になっていた。
「ここでいいんですよ」と言われた。詐欺葉書が届いたときも、110番通報していいそうだ。
問われるがままに、住所、名前、電話番号、生年月日を答え、「所轄の刑事から電話が行きますので、しばらくお待ち下さい」と言われて、電話を切った。
 
そうして、10分も経たないうちに、電話が鳴った。
生活安全課の刑事さんだったけど、刑事さんと話をするなんて、ちょっと緊張する。
「あなたの個人情報は、この電話番号も含めて、詐欺グループに流出したと考えてください。次はきっと、詐欺グループから電話がかかってくるはずです」
警察はかなり、詐欺電話を警戒しているようだ。
「まず、電話はずーっと、留守電にしておくこと。それから、友達とか知り合いの電話番号を電話機に登録して、知らない番号の電話には、絶対に出ないように」と忠告された。
「でも、電話に出ないで居留守を使ってたら、留守だと思われて、泥棒が家に侵入してきませんか?」と私はすかさず尋ねた。
「泥棒はね、留守電になってるだけで、留守だとは判断しません。もっと色んな情報から判断するから、留守電にしておいて、大丈夫ですよ」
何度も何度も、詐欺電話に気をつけるように念を押されて、電話を切った。
 
次は、詐欺電話がかかって来るのか……。最初は警戒していた。だから電話が鳴っても、知らない番号だと出なかった。
でも、知らない番号でも、結構、重要な電話があったりする。
たとえば、ツアー旅行の添乗員さんからの事前電話だったり、エアコン修理のサービスマンが当日の訪問時刻を知らせて来たり……。
だからそのうち、知らない番号でも、やっぱり出るようになった。
 
何事もなく、二ヶ月が経った。結局、詐欺電話なんて、かかってこないじゃん……と油断していた頃だった。
ある日、買取り業者を名乗る男から、電話があった。
「バッグとか着物はありませんか? どんなものでも構いませんよ。こないだもご近所で、古い着物を3万円で買い取ったら、すっごく喜ばれましたよ」とのたまった。
絶対に嘘だ。私は直感した。
今は、しつけ糸の付いた新品の着物ですら、買取り価格は数千円だと噂に聞く。その手には乗らない。
「申し訳ないけれど、着物もバッグも持ってないです」
私は丁寧に、しかし毅然とした態度で断り、電話を切った。
 
ところが実際、『3万円で買取り』の誘い文句に、食い付く人もいるのだ。
 
数日後、母が近所の美容院に行った時、ちょうど美容院に買取り業者がやってきた。母は成り行き上、買取りの現場に立ち会ったというのだ。
七十歳代の美容師は、着物やバックなど数点を、店の奥の部屋に並べた。すると業者はたいして品定めもせずに、
「ビトンとかプラダとか、ブランドものがいいんですが。もしくは、宝石や金はありませんか?」と尋ねてきたという。着物に至っては、まともに査定すらしなかったそうだ。
 
「奥の部屋に入るときなんか、鋭い目付きで、サーッと見回したのよ。もし私が居合わせなかったら、見ず知らずの他人と、奥の部屋で二人きりでしょ? それってかなり怖いわよね」と母は興奮気味に話した。
「それで、結局、買い取ってもらえたの?」私は聞いてみた。
「それがね、『買い取るとしたらせいぜい、このバッグが百円ですね』だって」と母は呆れ顔をした。
 
『どんなものでも構わない』はキャッチセールスならぬ〝キャッチ買取り〟の常套句だ。それ自体は別に、詐欺でも何でもないかもしれないけど、家に入り込むための口実だと考えると、やっぱり怖い。
だって、もしかしたら、詐欺に引っかかりやすいかどうか、チェックしに来たのかもしれない。
それに最近、詐欺集団が凶暴化した事件も起きている。もしかしたら、家の間取りを調べに来たのかもしれない。
 
「買取り業者が近所に電話を掛けてきてるってことは、きっと自治会の名簿か何かが、出回ってるんだろうね……」
つまり、刑事さんの指摘通り、個人情報が、詐欺グループや買取り業者など、色んなところに渡っている可能性が、かなり高い。
背筋がぞっとするような話だが、きっと、うちだけじゃない。誰でも、個人情報が出回っている可能性はある。
 
だとしたら、騙されないように、注意するしかない。
でもいったい、どう注意すればいいのか?
まず、常時、留守電にしておこう。
「この通話は録音されています」の留守電メッセージや録音機器を、貸出している自治体もあるので、自治体に相談してみよう。
昨今、あらかじめ財産を聞き出そうとする〝アポ電〟がかかってくるケースもあると聞く。
知らない番号の電話には、掛かってくる心当たりがない場合、なるべく出ないようにしよう。
詐欺葉書など、「何これ? ちょっと変だな」と身に覚えのない違和感を持ったら、葉書の文言に惑わされず、110番通報でもいい、とにかく警察に相談しよう。
 
そうして、どんなに対策しても、最後の砦は自分だ。
このご時世、うまい儲け話やお得な話など、絶対にない。自分は騙されない、付け入る隙を与えない!という心構えが大切だ。
 
 
 
 
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2019-09-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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