メディアグランプリ

「できるようになった自分」と出会うには?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:深谷百合子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
今までできなかったことができるようになる というのは嬉しいものだ。
私がその喜びを初めて味わったのは、小学3年生の時だ。もう何十年も前のことなのに、その時の気持ちは今でも鮮明に覚えている。
 
それまで私は泳ぐことができなかった。水が怖い訳ではなかった。ただ、水の中での息の仕方と、泳ぎ方を知らなかったのだ。
 
小学1年生の夏、まずバタ足の泳ぎ方を習うと、最後に5m泳ぐテストがあった。同級生の皆は次々とクリアしていく。でも私は、顔を水につけて息をすると鼻に水が入ってきて苦しくなり、すぐ途中で立ってしまうのだった。
 
私が通っていた小学校では、最初は皆、赤い水泳帽をかぶる。そして、5m泳げたら赤い帽子に白い線が1本入る。13m泳げると、帽子の色が赤から白に変わる。そうやって、あの子は今どれ位泳げるのか ということが一目でわかるようになっていた。結局その夏は、私だけ線の入った赤色の帽子を手にすることができなかった。
 
2年生の夏も同じだった。でも、その頃はまだ幼かったからだろうか、「できない」ということに対して、「悔しい」とか「恥ずかしい」という気持ちはなかった。
 
ところが、3年生になると「皆と同じように泳げるようになりたい」という気持ちが芽生えた。周りの大人達に、その気持ちを打ち明けると、母の友人で学習塾を開いていた先生が、「私が教えてあげる」と引き受けてくれた。そして、夏休みのある日、海に連れて行ってくれたのだ。
 
先生はまず、水の中での息の仕方について教えてくれた。な~んだ、息を吸っちゃいけなかったんだ! とわかると、あとは早い。息を止めて顔を水につけていられる時間を少しずつのばしていく。
次に先生に手をとってもらって、顔を水につけて体を浮かせ、バタ足の練習をする。そして最後に、先生は少し離れた場所に立って、「ここまで息継ぎなしで来てごらん」と言った。
私は教えられた通りに、息を止めてバタ足で進んだ。水中に見える先生の足が段々近づいてくる。そして、遂に先生の所までたどり着いたのだ。たどり着くと先生は私にこう言った。「ほら、見てごらん。あんな所から泳いできたんだよ!」と。それは、学校のプールの5mよりも、はるかに長い距離だった。
 
やった! 私、泳げたんだ! 何とも言えない喜びが湧き上がってきた。そして、息継ぎの仕方も教わると、もっと長く泳げるようになった。このたった1日の出来事が、私に大きな自信を与えてくれたのだ。
 
私は海から戻った翌日、学校のプール教室に参加し、いきなり13m泳ぐテストに挑戦した。そして、難なく合格して白い帽子を手に入れることができたのだ。
 
自分が人に教える立場になった今から考えてみると、泳ぎを教えてくれたあの先生は、とても理にかなった教え方をしてくれたのだと思う。
「泳げるようになりたい」という私の漠然とした目標を「バタ足で5m以上息継ぎせずに泳ぐ」というように、何がどれくらいできるようになればよいのかを明確にしてくれた。そして、それができるようになるための小さな目標を順番に設定してくれた。
 
小さな目標であっても、それが達成できると次に挑みたくなるものだ。そうして、段々と階段を上るように大きな目標へと近づいていく。よく考えてみれば、ロールプレイイングゲームだって、そういう構成になっているではないか! 難しすぎず、易しすぎず、少しずつ自分のレベルを上げながら、自分の居るステージが変わり、大ボスに近づいていく。それが面白くてハマってしまう。
 
でも、いざ自分のこととなると、なぜこんな風に上手くいかないのだろう?
 
普段私たちは色々な願望を持っている。例えば「英語を話せるようになりたい」、「職場の雰囲気を良くしたい」、「お金持ちになりたい」等といった願望だ。でも、それを叶えるための具体的な行動をなかなか起こせない。なぜか? 何から手をつければよいかわからないからだ。つまり、目標が具体的になっていないということなのだ。
 
私自身も、「中国語がペラペラになりたい」とずっと思いながら、なかなか思い描く姿に近づけなかった。「中国語がペラペラ」とは、どういう状態なのか? それを具体的にしていなかったからだ。「どんな場面で使う中国語なのか」、「どういう内容を話したいのか」、「長い文章を話せるようになりたいのか」等々、自分が考える「ペラペラ」の中身を具体的に分解していくと、「何がどれだけできるようになりたいのか?」が明確になってくる。
 
そして、そこに近づくために、更に小さな目標に分解していく。例えば、「自分の仕事に関する単語を覚える」といったようなことだ。そうすると、今何をやればよいのかがはっきりしてきて、行動しやすくなる。そして行動した結果、上達を実感できるようになったのだ。
 
大きな目標は、具体的な小さな1つずつのステップに分解し、はじめの一歩を踏み出してみよう。そうすれば、きっといつか「できるようになった自分」と出会えるだろう。
 
 
 
 
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2019-10-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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