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メディアグランプリ

今年もまた一人現れた、超人技の子どもたち


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:星野美緒(ライティング・ゼミ 日曜コース)
 
 
10月になり、山の上にはうろこ雲、田んぼには白鷺が訪れるようになった。稲刈りの季節である。このころにもなると長崎でもようやく秋の気配が濃くなってくる。
 
さて秋の長崎の風物詩といえば、くんちである。
 
くんちは、「おくんち」とも呼ばれ、国指定重要無形民俗文化財に指定されている秋の大祭である。長崎市中心部にある諏訪神社という大きな神社を始め、町全体できらびやかな舞踊りが繰り広げられるのだ。
踊り場は見物客であふれ、長崎のテレビ局では日がな生中継が行われる。
長崎県民はくんちのニュースを見ると「ああ、今年も秋がきたな」と感じるのだ。
 
お祭りの音楽とともに船や龍の出し物が行われ、色鮮やかな衣装の踊り手たちが華麗に飛び回る。
 
さてお待ちかねの超人技であるが、全世界中からおもしろ動画が集まる動画投稿サイトを見慣れた現代の人々は、ちょっとやそっとのスゴ技ではもはや物足りないと思うであろう。でも、くんちでの子どもたちのスゴ技は、スゴイだけではないのだ。なんとも涙腺を刺激するスゴ技なのである。
 
あなたは「またまた~!」というかもしれない。「ある程度スゴイかもしれないけど、一般人が練習してできるようになったくらいでしょ」と。
 
確かにそうかもしれない。別に子どもたちは、空中から鳩を取り出すわけでもなければ、口から火炎放射を噴きだすわけでもない。
しかし、見ればわかってもらえるはずだ。
中でも特に「親」という人種に該当する方は必見である。
 
さてその超人技が見られる出し物は「川船」というものである。漁船をかたどった山車の上に着飾った子供たちが乗り、太鼓や鉦を鳴らすその拍子に合わせて担ぎ手たちが波を模して動かしてゆく。
その楽手となる子供たちも演奏技がけっこうスゴイのだが、さらなる超人技を見せるのは「網内船頭」と呼ばれる役の子どもである。漁船のへさきに登場するのは、10歳ほどの小学生で、漁師の格好をしている。彼は、アナウンスによる紹介が終わるなり
「はあっ!」
と気合を入れて、脱いだはっぴを投げ捨てる。
そしておもむろに投網を巻き上げて肩にかつぎ、構えの姿勢をとる。
 
船の前には、魚がばらまかれる。
 
今から、この男の子が投網でこの魚を一網打尽に捕らえようというのだ。
 
えええ無理無理無理無理。こんなまだ小さい男の子が、こんなに大勢の観衆の前で、しかも音楽に合わせて、投網をするなんて。しかも、ばらまかれた魚を全部一度で捕るだなんて。
出し物を行う町全体の威厳をその小さな肩に背負っての一投。しかもテレビ中継だって何局も来ていて、その注目度といったらクラスのみんなの前で一人歌を歌わされる音楽の授業をはるかに凌駕する。
そんな中、行うのが投網である。ちょっとでも手元に狂いがあれば、網は広がらず魚にも届かないであろう。
テレビ越しで見ているこっちがうろたえ、冷や汗をかき、心臓が速く打ちはじめる。
 
男の子も緊張しているはず。網を持ってリズムをとる動き。横で見守るこれまた漁師姿のお父さん。
ああもうこれだけで、「親」という人種はたまらなくなって涙ぐんでしまうのである。
 
そして、その瞬間は来た。
船頭は網を振りかぶり、下方に見える魚へと網をえいやっとばかりに投げた!
 
船頭の網はきれいに広がり、見事に魚を全部その内に収めた。
 
これが、もう激熱である。観衆は感動の拍手の嵐だ。テレビの前の視聴者もほっとした笑顔と涙涙である。ああ、ハンカチはどこだったか。
当の船頭本人は、きりっとした顔をくずさず歯も見せない。これもなんとも立派で豪胆な姿ではないだろうか。まさにヒーローだ、君は世界を救ったんだよ。
 
まだほんの10歳くらいの子どもの、何回も撮り直しができる動画とは異なり大舞台で、お祭りの空気が出来上がっている中での、たった一人の技だ。この子の投網は、超人技と言わずしてなんと言おうか。
 
皆どれだけやりこんでいるのか、まあ見事に毎年毎年どの子もしっかり魚を捕らえる。なんとも肝っ玉の強く、そして確かな技術を持っている子供たちである。
 
くんちには、船頭役だけではなく踊り手、囃し手、太鼓、担ぎ手としてたくさんの子どもたちが参加している。まだろくにしゃべれもしない小さな子まで参加している。3歳児なんてもはや「その場にいる」だけでも難しいというお年頃である。しかしどの子も練習を重ね、まさに神様に奉納するにふさわしい見事な演技を見せている。年長の子どもが小さな子をサポートする様子も垣間見られる。目を見張るような舞や船の動きの合間に繰り広げられるそんな光景が、さらにまた人々の心を震わせるのだ。
そして、そういう子どもたちの技を見て、“大人にだって何かできるぞ!”と、根拠はないけどとにかく前向きな力をもらうのである。
 
長崎の未来はきっと明るいなと思わせてくれる、そんな子どもたちに私はテレビの前から涙ながらに拍手を送った。
今年も大変素晴らしいくんちであった。
 
 
 
 
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2019-10-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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