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メディアグランプリ

メダルのない運動会


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【12月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:和田凪(ライティング・ゼミ秋の集中コース)
 
 
私は、小さい頃から、運動会が大嫌いだった。
運動会の日は、朝からお腹が痛かった。
徒競走でビリになってみんなに笑われる。
なんでそんな苦行を強いられなければならないのか。
幼い私には理解できなかった。
 
 
あれから何十年もたって、母になり、ふたたび運動会に参加する日がやってきた。
3歳の娘が通う保育園の運動会だ。
しかし、それは、私の知る運動会とは全然違うものだった。
 
 
まず、運動会の準備の段階からちょっと変わっていた。
運動会のプログラムは、先生ではなく、4・5歳の子どもたちが相談して決めていく。
そのミーティングの様子が、写真や文章にまとめられて、保育園の掲示板に毎日張り出された。
なんか、変なことやってるぞ。
私は、興味深くそれを見守った。
 
 
そして先週の日曜日、近所の中学校の校庭を借りて、運動会は開催された。
まず、入場門がなかった。
園長のあお君(みんな、園長のことを君づけで呼んでいる)が、説明した。
「入場退場って、見栄えとか段取りのためでしょ。並ばせておけば便利だけど、子どもは退屈でしょ。だからやめました。」
自分の出番の2つ前の競技になったら門に行く。みたいなあのルール。
確かに、ドキドキしながら入場を待っていたっけなぁ。
でも、あの時間って必要だろうか?
他の競技も見られないし、はっきりいってつまらない時間だったのは確かだ。
1. 綺麗に整列して入場しなきゃなんて、誰が決めたのだろう。
子どもたちは家畜じゃないんだから、笛をピーピーならして移動させるのは変だ。
入場門をなくしてしまえ。これはいいアイディアかもしれない。
 
 

2・3歳児の競技がはじまった。
先生から軽く競技の説明があり、「じゃあ、走っていいよー」みたいな感じで、おのおのが観覧席から出てきて、自分のタイミングで走り出す。
「よーいどん!」という掛け声や、ピストルの音もない。
このやり方もまた、合理的に思えた。
2・3歳児をスタートラインに並ばせようと思うと、けっこう大変だ。
合図の前に走りだす子、合図がなっても上の空の子、観客席の親のもとに一直線で向かう子。
みんながみんな、競技に興味を示すとは限らない。
だったら、いっそ「よーいどん!」がなくてもいいじゃないか。
一斉にスタートしないので、もちろん、順位もつかない。一等賞の金メダルもない。
変な緊張感や、無理強いはいらない。子どもの思うままにやってほしい。
そんな保育者(園長や先生)のねらいが感じられた。
 
 
4・5歳児の競技の目玉は、「ろっかい競争」という障害物競争だった。
途中で、6回ゲームをこなすから「ろっかい競争」だそうだ。
障害物競争といえば、はしごをくぐったり、平均台を渡ったりするものだろう。
ところが、子どもたちが考えた障害物競争は、もっとユニークだった。
1.踏み台昇降
(踏み台昇降って、それ体力テストじゃん)

2.縄をくぐる
(これはまぁ、障害物っぽくてイイネ!)
3.箱の中に手をいれて、何が入っているか当てる
(箱の中が観覧席から見えないし、全然見栄えしない……)
4.パターゴルフ
(急におじさん臭いの入れてきたな……)
5.お賽銭を投げて箱に入れる
(お賽銭を投げるって障害物なんだ!? 初めて聞いたぞ)
6.スラローム(コーンの間をくねくね走る)
(これは、障害物っぽいぞ!)
と、こんな感じ。
2と6がかろうじて障害物競争らしかったが、あとは子どもたちが見たり聞いたりしたこと、やりたいことを入れただけだ。
 
 
「だるまさんが転んだ」や「こおり鬼」もやった。
どんどん、常識からかけ離れたカオスな運動会になっていく。
 
 
広い校庭を借りて、朝の10時から午後3時まで、5時間もかけて遊んだ。
そう、運動会というより、やってみたい遊びを全力でやる日って感じだった。
よくあるメダルとか表彰状みたいなものは、なかった。
でも、子どもたちの笑顔がはじけすぎていて、そんなことはどうでもよかった。
こんな運動会なら、私も好きになれたかもな。
そう思わせてくれる、変てこな運動会だった。
 
 
運動会って、そもそも何のためにあるんだろう?
親に練習の成果を見せるため?
だとしたら、ルールや順位がはっきりする、秩序だった運動会が正しい運動会だろう。
成果が見えるものだと、大人は安心するから。
でも、子どもは見世物じゃないし、親を安心させるために運動会をやるわけじゃない。
 
 

今回、小さい子は全力で体を動かし、達成感を得られたはずだ。
大きい子は、プログラムを自ら作る楽しみや、仲間との連帯感が得られたかもしれない。
子どもの、子どもによる、子どものための運動会もなかなかよいじゃないか。
 
 
普段の生活の中でも、子どもの都合より大人の都合が優先されてしまうことって、よくある。というか、そういうことだらけだ。
「仕事してるから静かにして」
「出かけるから早くして」
「ご飯はこぼさず食べて」
規則や禁止事項をつくって、自分の思い通りに子どもを行動させようとする。
でも、子どもを思い通りにしようとすることが、そもそも間違っているのだろう。
秋空の下、そんなことを考えさせられた1日だった。
 
 
運動会が始まるまで、娘は毎日「金メダルもらえるかなぁ」と言っていた。
しかし、いざ本番が終わると、そんなことをすっかり忘れているようだった。
夜、布団の中で娘が言った。
「ねー、明日も運動会?」
よっぽど楽しい運動会だったようだ。

 
 
 
 
***
 
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2019-10-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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