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メディアグランプリ

タロット占い師は日々カジキマグロ漁をしている


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:織巴まどか(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
私の職業上の肩書きと言えば、ときに「雑貨店の店主」であったり、ときに「ハンドメイド作家」であったりするのだけれど、またあるときには、というと、「タロット占い師」でもある。つまり、自分がオーナーをつとめる雑貨店にて、自分のつくった作品を売ったり、タロット占いをしたりしているのだ。こう書けば仕事としてまとまりがあるようにも思える。それでも一見、なかなかに振れ幅の大きい肩書きをいくつも持っているので、初めて出会う人に自分の職業を伝えるような場面になったとき、なんと名乗ろう、と迷うこともある。とりあえずつかみがほしい、話のネタにしたい、という時には、専ら「タロット占い師をやっています」と言うことにしている。大抵の人が、「え、何それ?」と良くも悪くも興味をもってくれるからだ。
 
「タロット占い師をやっています」と言うと、かなりの高確率で聞かれる質問がある。
「未来とかわかるんですか?」
である。
これは実際のお客さんからの相談内容としても、非常に多い。
「私結婚できますか?」
「今度転職しようと思うんですけど上手くいきますかね?」
「娘の受験は成功するでしょうか?」
などなど。
 
気持ちはよくわかる。
私も自分がタロット占い師という職業に就くまでは、漠然とそんなイメージをもっていたように思うし、街の占い店の看板でも、ネット広告の電話やチャット占いなどでも、「怖いほど当たる!」「ズバリ!あなたの未来を見通します」的な売り文句を使って宣伝をしているからだ。
でも、ちょっとよく考えてみてほしい。本当に未来に起こることを占いで当てられるとしたならば、それは、「未来に起こることはすでに決まっている」という考え方に基づいていることになる。
果たしてそうなのだろうか?
あなたがこの先結婚できるか否か、転職や受験が成功するか否か、本当に占いをする時点ですでに決まっているのだろうか?
 
この問いに対する、占い師としての私のスタンスはこうである。
「占い師は、カジキマグロ漁業の漁師みたいなものだ」
 
想像してみてほしい。
あなたは今、一艘の船に乗って、大海原のど真ん中にいる。そしてカジキマグロを釣ろうとしている。
 
さて、あなたがカジキマグロを釣れるかどうかは、「すでに決まっていること」なのだろうか?
もちろん、そんなわけはないはずだ。
 
でも、あなたは漁師ではない。どちらの方角に船を動かせばいいものだろう。あなたには皆目見当がつかない。
同じ船に、熟練の漁師が乗っていたらどうだろう? 漁師は、船の状態を点検する。天候を確認し、潮の流れを読む。風の吹いている方角を読む。そしてあなたにアドバイスをする。
「この時期このまま真っ直ぐ進むと、カジキマグロの回遊ルートからははずれてしまいそうです。でも距離は近そうなので、もう少し南西に舵を切ってみましょう」
もしくは、
「いや、カジキマグロ云々より、この船ちょっと老朽化が進んでいてスピードも出なそうですし、エンジンに不安もありますから、一度陸に戻ってメンテナンスに出しましょう」
 
私たちがタロット占い(タロットリーディング)をするとき、シャッフルしたタロットカードを特定の配置に並べ、出てきたカードを読んでいくという流れになるが、この「カードを読む」という行為は、漁でいうところの船の点検や、天候の確認や、潮の流れや風の方角を読むことに等しい。
そして漁師がそれらひとつひとつの情報をパズルのように組み合わせ、その上で総合的な「勘」を働かせて漁場を決定するように、占い師は一枚一枚のカードから、ひいてはカード全体の「雰囲気」から、相談内容に対しての結論を導き出す。
その答えが的確であるかどうかには、見習いの漁師と熟練の漁師では腕が違うのと同様に、経験やちょっとしたセンスなども関係してくる。
それでも、絶対ということは当然ない。どんなに熟練の漁師でも100%カジキマグロが釣れはしないのと同じように。
 
占いといういわゆる「見えない世界」を扱う見地から、個人の解釈として補足するならば、「確定された未来」というものはない。意中の人が明日あの場所に現れるかどうか、今日かかった病気が一週間後に治っているのか悪化しているのか、「決まって」などいない。
時間軸という概念を使って見るならば、未来とは本当に大海原のようなものだ。整備された道路の1km先に信号があります、さらに3km先で三叉路に分岐します、それは確定事項です、というような決まり方はしていない。船の進む先には無限の可能性がある。
占い師は、無数のパラレルワールドが展開している中から、「このままの状態で進んだ場合にもっとも辿り着く可能性が高い未来」を総合的に判断している。
 
そして私が占い師として伝えたいのは、いちばん大事なことは、占いは「当てる」ためのものではない、ということだ。本当は、結果を聞いて一喜一憂したり、信じたり信じなかったりするためのものではないのだ(エンタメと割り切ってそれを楽しむのはありだとは思うけれども)。
 
カジキマグロという望む未来を求めて船を進めるとき、「このままだと釣れない」なら、舵を切ることができる。道中は追い風のときもあれば向かい風のときもあるし、避けられない嵐が目の前に迫ってくるときもあるだろう。でも、事前に予測できていたならば、備えることができる。占いとはそうやって動くためのヒントとして活かしていくツールだと私は考えている。
ただ、それができるのは船の持ち主である本人だけだ。この点は残念ながら実際の漁師と決定的に違って、占い師が代わりに船を動かすことはできないのだ。
 
それから、人間の面白いところだな、と思うのは、「カジキマグロのことで相談が……」と言われて相談を受けてみても、よくよく深い部分まで読みながら占ってみると、本心ではカジキマグロを釣りたいなんて思っていないお客さんだって意外と多い、ということだ。実はウニを採ってみたかったり、シュノーケリングできれいな魚を見てみたいと思っていたりするのだ。
 
お客さんが本当に望む行き先を探りながら、日々お客さんと一緒にカジキマグロ漁のできるタロット占い師という肩書きを、私は存分に気に入っている。
 
 
 
 
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2019-11-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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