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40歳からの人生に効く心の処方箋:映画【日日是好日】


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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井上紗由美(ライティング・ゼミ特講)
 
 
良い作品との出会いは、人生を変える。
そんなことを久しぶりに感じた映画に出会った。
 
とても静かにでもはっきりと、自分の変わる音を聞いたのだ。
40歳になったばかりの、秋の出来事。
 
昨年10月から全国で公開された、今は亡き樹木希林さんが主演をつとめた映画【日日是好日】。
 
作家森下典子さんがお茶(茶道)を習い始めた20代から40代で体験した出会いや別れのさまざまな人生ストーリー。人生の転機に直面したとき、生きる術を教え、力を与えてくれたのはいつもお茶だった。
 
「はじめに形を作っておいて、後から心が入るのよ」
「頭で考えないで、自分の手を信じなさい」
 
お作法があまりに多く、それについて逐一説明を求める若き日の森下さんに、師匠の武田先生はピシャリという。
 
「お茶って、そういうものなのよ」
 
そんなひとつひとつの台詞に、ハッとする。
 
黒木華さん演じる典子の「普通」っぷりも、自分と重なる。
 
一緒にお茶を習っていた多部未華子さん演じる従姉妹の美智子が就職、結婚、出産と人生の王道をどんどん進んでいくのに比べ、就職はおろか、婚約者に裏切られ破談してしまい、続けているお茶の教室でも進歩がないと指摘されてしまう。
何もかもうまくいかない、八方塞がり。
 
“私はずっと、宙ぶらりん”
 
世の中から置いてきぼりを食らっているかのような、孤独感。無力感。
きっと誰もが一度は感じたことのある想いだろう。
 
実は40歳を迎えてまさに、私自身がそんなことを感じていた。
いったいどこに進めば良いのか、私は全くわからなくなってしまっていた。
 
これまで一生懸命やってきた地域振興の仕事。
事業の立ち上げや、イベントなど、企画、運営をしながらどうしたら良くなっていくのか、ずっと考えてきた。ここ数年は、ずっとそれ一色だったと思う。
 
私自身は、どうしたいの?
40歳を迎えて私が私にしている大きな問い。
地域のこれからを見据えて動いてきた私は、いつの間にか自分自身の人生の迷い子になっていた。
 
これで良いのか、この先はどうするのか、そんなことばかりが頭を駆け巡り、周りと比べて自分の欠点ばかりが目につき、息苦しかった。
まだ見ぬ未来の道しるべが見つけられず、途方にくれていた。
私は今ここの自分に、存在していなかった。
まるで魂が抜けているかのように、力が入らなくなっていた。
 
そんなタイミングだったからだろうか。
お茶のお手前をする場面で水の音や雨の音を聞くときに、私もじっと耳をすませていた。
その音に集中することで、自分の中に渦巻いているモヤモヤしたものが一緒に流れ出ていくようだった。主人公の典子がそうしていたように、流れに耳を澄ませていると、さらさらと何かが流れていくのを感じた。
はらはらと、自分でも理由のよくわからない涙が頬を伝って止まらなかった。
 
「世の中には、すぐわかるものとすぐわからないものの二種類がある」
 
映画の中のこの台詞を聞いて、心底ほっとしたのを覚えている。
あぁ、きっとそうなんだ。
 
何をやっても八方塞がりだと感じるとき。
何が正しいのか、意味はあるのか、これからに繋がるのか。
ぐるぐる頭で考えるばかりで、どうしようもなく心がさまよって前に進めないと感じたとき。
 
そんなときは、まず答えを出すのを先伸ばししても良いのかもしれない。
一旦答えを出すことを保留して、今の流れに身を任せてみる。
 
今与えられている役割や環境をまずは全うすることに集中してみる。形をなぞらえてみる。そこから見えてくることもあるだろう。
まずは、進めなくてもいい。顔をあげてみよう。そう思ったのだ。
 
「日日是好日、ってどういう意味?」
そんな典子と美智子の話が映画の中でも出てくる。
 
私も考えてみたい。私にとっての日日是好日とは?
いや……考えるのではなく、もっと、感じてみたい。
ふとそんな想いが沸き上がった。
 
毎日の暮らしの中で。
何気ない家族や大切な友達との会話の中で。
今させていただいているお仕事の中で。
縁あって出会った、たくさんの人やものや事柄を通して、自分がどんな結論を人生の最後に出すのか。
 
これからの人生は、出会いによって作られると。
それを受け入れていくことで作られるものだと。
肩の力を抜いて、風や雨の音に耳を済まして、流れに任せて生きてみよう。
 
久しぶりに、鈍行に乗って出掛けてみようか。
青春18切符で、各駅停車で、車窓の景色を味わいながら、行き先決めずにのんびり行くのも悪くない。
そういえば、最近新幹線にばかり乗っていたなぁ。
 
不意に思い付いたアイデアに、思いの外ワクワクしているのを感じる。
しばらく感じていなかった、こんな気持ち。
新たな風が、静かに吹いてくるのを、目を閉じながら、感じていた。
 
「何度やめたって良いじゃない。また美味しいお茶を飲みに来れば、良いじゃない」
 
人生の辛い別れを経験して、お茶をしばらく休んだ典子が気持ちを取り戻して一歩を踏み出したときの武田先生の台詞。
 
同年代のこれからの人生に悩める女性たちに送りたい、そんな処方箋のような、心にじわじわ効いてくる素敵な映画です。
 
 
 
 
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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 

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2019-11-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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