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メディアグランプリ

ええカッコしいの男と決められない女


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:Nada(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「これ、ください」
お店に入って約10分。彼は結婚指輪を即決した。
試着したのは、たったの2種類だけ。彼の即決力は目を見張るものがある。
車も保険も、どんなに高価なものでも彼はあまり迷わなかった。
決断力のあるひとって素敵! 私はそう思っていた。この時までは。
 
「いろいろ見といて」
1週間前、指輪を買おうかどうかという話をしていた時、彼は私に頼んできた。
良い指輪がないか、欲しいものはどんなものか考えておいて欲しいと言うのだ。
 
「例えばどんなものが良いかとか……何か希望はあるの?」
「まぁシンプルなのでいいんじゃない」
シンプルなの、にも色々ある。
シンプルと一言には片付けられないほど、世の中には多くの選択肢がある。
 
私はとにかく優柔不断だ。なにを買うにも「あれも、これも」と色々試し、結局店員さんの一言で普段使いしにくい物を買ってしまい、後悔することが多い。「結婚指輪も後悔したくない!」この思いからとにかく情報を集めまくることにした。
まず、ジュエリーブランドを検索した。王道の海外ブランドもあれば、オーダーメイドで2人だけの指輪を作ることを売りにしているブランド、桜をモチーフとした日本のブランドなど多種多様だ。
うーん、決められない……行き詰った私は、彼に相談することにした。
 
「あのさ、まずオーダーメイドか既製品かって選択肢があるみたいやねんけど、どう思う?」
「どうなんやろうなぁ、作りたいん?」
「作りたい気もする……けど、無くした時が怖いかもなぁ、実際私の友達の旦那が、海で指輪なくしたん見たからなぁ」
「じゃあ、既製品で良いやろ」
そう、実は私の中で、ある程度答えがあるのだ。それなのに人から言われないと決められない、そうとう厄介な性格だ。よし、とにかくオーダーメイドはなし! これで3分の2くらいに絞られた。
 
つぎに素材が気になった。
素材は大きく分けて、プラチナとゴールドに分けられる。ゴールドが日本人の肌になじみやすく、こっちが良いかも! と思った。「コンビ素材」というのもあるらしい。プラチナとゴールドを半々にあしらった様なデザインのものだ。そのおしゃれなデザインにひかれ、「シンプル」から遠ざかるように少し個性的な指輪に目移りした。どんどん選択肢が増えていき、私はまた自分の悪い癖が出ているように感じた。
 
インターネットの広告バナーが指輪に埋め尽くされた頃、こんな検索リストが表示された。
「結婚指輪 後悔」
この表示にギクッとした。これ、まさに私の未来を象徴しているかのようだ。
 
「個性的なデザインで飽きた」
「自分の好みを強制し妥協させたので、彼が全く着けてくれない」
「洗い物など水仕事で素材が変色した」
どうやら、ゴールドの素材はプラチナより酸化しやすく変色する可能性があるらしい。
彼はシンプル、と言っていたしやっぱり少し個性的なコンビ素材は違うかも知れない。
 
かと思えば、こんな意見もあった。
「シンプル過ぎて後悔」
「ダイヤが付いたのにしておけばよかった」
結局、なにをどうしても後悔するのかもしれない……。そう思った私は、今まで集めた情報と気になった指輪をリストアップして彼に送り、あとは一緒に買いに行くときに決めることにした。
 
「こないだ送ったん見てくれた?」
「うーん、あんまり……」
私は素材のメリットデメリットから始まり、行きたいお店を10店舗あげ、気になった指輪のデザインやイニシャルを掘りたい等、願望を長文で送りつけていたのだ。
 
「で、予算どんくらいで考えてるん?」
「無くした時の事、気にしてたやん?」
彼は予算を気にした。実は私には前科があるからだ。以前、貰ったネックレスを紛失していた。そして「結婚指輪はもし無くしたら、こっそり買いに行くわ」と言っていたのだった。
 
「お前が買い直すこと考えたら、このブランドとかは無理やろ」
「たっ、確かに……」
そうして私がリストアップした中で一番安かった指輪を見に行くことになった。
 
「いらっしゃいませ」
清楚できれいなお姉さんが出迎えてくれた。予約などしてなかったが、すぐに席に案内してくれ飲み物まで出してくれた。
 
「インターネットで、この指輪を見てきたんですが……」
「はい、すぐお出ししますね」
サンプルを試着してみた。表側がプラチナで内側がゴールドのコンビ素材のものだ。
 
「これって変色したり、変形したりします?」彼は身を乗り出し、店員さんに尋ねはじめた。
「はい、ゴールドはプラチナに比べ、温泉などで変色しやすい傾向があります」
「仕事中等もずっと着けることを想定されてますか?」
「そうですね、たぶんずっと着けたままだと思います」
「なんか、そういう変色とか変形とかの心配のない様なものってあります?」
「いまお選びいただいてるものと似たデザインで良いものがありますよ、お待ちください」
 
そしてお姉さんが出してきた指輪を買うことに決まった。
素材はプラチナ950、細身でダイヤが一つだけ付いている。
華奢でシンプルなデザインだけど、たまにキラッとして可愛い。
なんとなく私の小さな手にしっくりきた。値段も他に検討していたものより安く、メンテナンスなどのアフターサービスも充実している。
何より紛失した場合、20%OFFで再購入できるらしい。それを聞いてI-PRIMO(アイプリモ)で買ってよかったと思った。
 
「ほら、こうやって聞いて買うんやで?」
帰り道、彼がドヤ顔で私に言ってきた。どうやら彼は「あまり読んでない」と言いながら、私が気にしていた素材のこと等、あの長文メールをしっかり目を通していたのだ。私が調べてたからスムーズに決められたんじゃ……と思ったが、「ありがとう」とだけ言っておいた。
 
男と女は、社長と秘書みたいな関係でちょうどいいのかも知れない。
 
女は時間を使い、情報を集め、候補を絞る。
男は最終判断をビシッと決め、責任を負う。
 
女性の多くは優柔不断。男性の多くは自尊心が高い。
どちらか一方の意見を優先すれば、角が立つ。
きっとどちらかが妥協することもあるだろう。
そんな時、男の自尊心を傷つけず、女の優柔不断を補う方法として、女が候補を選び、男は最終決定をする、そんな方法をお勧めしたい。
女は、どれを選ばれても良いくらい候補を絞っておく。男は、「最終的には自分が決めた」という思いから後々何かあっても文句は言えないだろう。要はお互いが納得するために、社長と秘書のようにそれぞれ役割を分担して、物事を決めると良いのだ。
 
「良い指輪買えて良かったね」
「せやなぁ」
ええカッコしいの男と決められない女の私たち2人は、案外上手くいくのかもしれない。
 
 
 
 
***
 
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 

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2019-11-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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