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メディアグランプリ

リトリート×クリエイト


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【12月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

野村光恵(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「ここに、リトリート施設を作りたいと思っているんだ」
1つ道路を挟んで、目の前にとても美しい海が見えるその場所で、叔父が言った。
 
それが、私が「リトリート」という言葉をはじめて聞いたとき。
そして、あれから14年経った今も、その海沿いの風景が目に焼き付いている。
 
リトリートという言葉は、近年よく聞くようになったが、
当時はあまり知られていなかったように思う。
 
wekipediaでは
「仕事や家庭生活等の日常生活から一旦切離し、
自分と向き合う時間や新しい体験を新しい場所でする事で
思考の転換を行い、”よりハッピーに人生を再スタートする”」
と、定義されている。
 
自然から離れた都会の生活が中心で、仕事に追われていたあの頃、
自然に触れる生活をしはじめた3日目あたりに、思考の転換が起きた。
あれは、まさに私の人生の再スタートとなった旅だった。
 
当時、システムエンジニアをしていて、
休みがほぼ取れず、毎日終電まで働き、納期が近づけば徹夜の日もよくあった。
 
会社に向かう通勤電車では、十分な睡眠を取れない一日のはじまりに、
つり革をつかまりながら寝てしまっていた。
目の前に座っていた方が私に席を譲ろうとしてくださるほど、
ひどく疲れ切った日々を過ごしていた。
 
頭痛・肩こり・腰痛・眼精疲労……。
常に、どこかに痛みを感じ、集中力が欠如する日々。
いつも仕事の納期に追われ、一時しのぎの痛み止めが常備薬となりつつあった。
 
こんな体調で仕事のパフォーマンスが上がるはずもなく、
仕事を抜け出し、こっそりとマッサージを受けに行く。
 
「まだ20代。こんな身体をこれからずっと使うなんて、大丈夫かな……」
そんな不安がよぎったら、急に涙が溢れてきた。
 
人は本気でこの状況から抜け出したいと思うときに、行動が変わる。
 
それから、健康に気を使うようになり、色々なサプリを飲むようになる。
仕事帰りに温浴施設に行ってリラックスし、そのまま宿泊をして、会社へ出社する。
なんとか時間を作り出して、自分を癒すことをした。
 
その頃、限界を感じて会社を辞める人が増えていった。
先輩の一人が「タイタニック号が沈むところを最後まで見届けたい」なんて言うほど……。
まるで沈んでいく船にでも乗船しているような状況にも諦めずに、頑張ろうと必死だった。
 
これまでに一番忙しかったプロジェクトが終わり、まとまった休みを取ることができたときに、瀬戸内海・播磨灘にある自然豊かな小豆島で数日間を過ごした。
 
温泉に入ると、海へと沈む夕日。
 
こうやって綺麗な景色を見たのが久しぶりで、その感動をよく覚えている。
 
都会の喧騒から離れたて、自然を感じられる時間。
ゆったりとした時間を過ごしていくうちに、
長い間悩んでいた頭痛から解放され、
重かった身体が軽く感じられた。
 
日常は、いつも頭の中で仕事のことを考えてばかりいた。
もちろん夢でも仕事のことを考えていた。
そうやって、どんどん感覚が鈍っていたことに気づいたのは、
この旅で自然に触れることで、自分の感覚が徐々に開かれていったから。
 
必死で仕事にしがみ付いていたにも関わらず
その旅を終えたあと、
同僚に「私、リトリート施設で働きたいかも」と話し、驚かれた。
 
叔父は、現代の世の中はストレスが溢れていて、それを癒す側の人たちも、自分を癒す場所が必要だと話してくれた。それは自分が満たされていなければ、人を癒すことが出来ないから。
 
私もその必要性を感じ、また自分も人を癒せる人になりたい!と思い
叔父がリトリート施設を作るなら、まずはそこで働いてみたかった。
 
職場では、先輩たちで鬱と診断される人が増えていた。
とても思いやりがあり、面倒見が良くて、能力の高い先輩たち。
以前のように元気に復活してほしいと強く願っていたけど、
結局は何もできない自分に対して無力さを感じて過ごしていた。
 
あの頃の経験の全てが、
私が心と体の癒しへと強く興味を持つキッカケとなっている。
 
会社を辞め、ヨガ指導者になるためのトレーニングを受けた。
200時間トレーニングは秩父の山奥でリトリート形式で行われ、
自分を深く見つめ直せる、とても深い経験となった。
 
やがて、当時の私のようにそこまで長い時間は使わなくても
気軽にリトリートの素晴らしさを経験してもらいたいと思い
その時の仲間たちと、秩父の山奥のお寺でリトリートを企画するようになった。
 
自然の中で過ごしたら不思議と気持ちがリフレッシュする。
その良さは誰しも知っていることだと思う。
 
さらにそれだけでなく、思考が切り替わり、創造性も上がることも
最近の脳科学では証明されている。
 
自然の中で15分過ごせば血圧とストレスが低下して気分がよくなる一方、45分過ごせば認知機能や活力、熟考する力が増し、3日過ごせば創造性が50%向上するという驚きの実験結果も。
(引用元:NATURE FIX 自然が最高の脳をつくる 最新科学でわかった創造性と幸福感の高め方)
 
この素晴らしく開かれた状態は、何か新しいものを創り出すためにすごく役に立つことがわかっている。
そうしたことに気づいてからは、自然のあるところにしばらく滞在をしつつ、自然に触れて感覚を取り戻し、一気に集中すると、かつての自分では考えられないスピードで仕事が進んだ。
 
今年の夏は、海沿いのホテルで過ごし、リフレッシュには散歩をして夕日を見たり
足だけ海に入って海風に吹かれてスッキリと過ごしながらも、忙しい時間の合間ではきっと繋がらないアイデアが生まれ、クリアな思考で対話ができることの恩恵をものすごく感じられた。
最近よく思うことは、すべての経験によって今の自分が作られている。
出会ったすべての方、そして亡くなってしまった方との会話や想いも。
普段は意識しなくても、自分の中に残っている。
 
私が見てきたもの、触れてきたもの、聴いてきたもの……。
そうやって五感を通して受け取った様々な体験が、私の心を動かし何かを決めながら生きている。
嬉しかったことも、苦しかった経験からの学びも。
それら全てがなかったら、今の自分には成り得ない。
 
あらゆるものに影響を受けながら、それらの形を少しづつ変えながら、また誰かに影響を与えることで巡っていく。その循環の中で、私たちは”ひとつながり”なのだと思う。
そして、そのつながりの中から何かに気づいて編み上げながら、表現している。
 
 
 
 
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2019-11-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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