メディアグランプリ

マスオさんとカバが教えてくれたこと


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記事 飯田あゆみ(ライティングゼミ平日コース)
 
うちの息子が中学生の頃、毎年PTAの企画で「生き方講和」というものが開催されていた。
著名人を招いて多感な中学生に、これからの人生に役立つ話をしてもらおうという企画だ。
保護者も希望すれば参加することができ、毎年、広い体育館がいっぱいになるくらい人が集まる人気イベントだった。
 
さて、息子が三年生の時のこと。
 
その「生き方講和」にマスオさん役の声優さんがやって来て、「戦争がいかに悲しいものであるか」というような話をしてくださった。
 
以下は息子の話。
 
「かわいそうなゾウ、って話あるじゃん?
戦争末期に上野動物園かどこかで、エサがなくなって、ゾウを殺せと軍から命令が来たんだけど、毒入りのエサはゾウが食べなくて、飢え死にさせようとしたら、ゾウが一生懸命、芸をしてエサをねだった、って話。
 
あれに似てるなと思って聞いてたんだけどさ、マスオさんは、かわいそうなカバの話をしたんだよ。
エサがもらえなくて、カバが悲しい声で鳴くシーンを、すっごい感情をこめて
『カバは、ぷぉぉーーんぷぉぉーーんと、泣きました。飼育員さんたちは、歯を食いしばり、みんな、涙をこらえていました。カバはおとなしくて、人を襲ったりしないのに。カバは優しいいいやつなのに』
と語るわけよ。
 
そしたら、後ろで、例の双子がずーっと
『昨日のテレビじゃ、アフリカの動物の中で最も危険なのは、カバだって言ってたよな』
『だよな、年間何千人もカバに殺されてるって言ってたよな』
『ライオンや象なんか目じゃないくらい危険な生き物だって言ってたよな』
『ハンターだって怖がって近づかないって言ってたよな』
って話してて、前ではマスオさんが、今にも泣きそうに、あの声で
『ぷぉぉーーん、ぷぉぉーーん』
って叫んでて、俺は、ずっと笑いをこらえるのに必死だった」
 
例の双子とは、二人して勉強も運動もできて、ルックスだけがやや残念な、あと一歩でモテるのに、と周囲に評価されている息子の友人だ。
 
同じく残念なグループに属していたうちの息子は、彼らと仲が良く、彼らの興味の対象の広さや、知識の豊富さに畏敬の念を抱いていたようである。
 
息子としては、普段付き合いのある彼らの話を信じたい。
が、マスオさんはテレビの世界で活躍している人だ。
そんな人が、裏付けのない話を教育の場でしたりするものだろうか?
 
カバは双子の言うように、獰猛で危険な動物なのか。
それとも、マスオさんが言うように、やさしくて人を襲ったりしない良いやつなのか。
That is the question.
 
息子は帰宅後、ネットを使って海外のサイトなども見て回り、カバの生態を調べていたが、結果として、双子の言うことが真実であると知った。
カバは、毎年約3000人もの人間を襲って殺していたのだ。カバなりの理由はあるようだが、やさしくていいやつではなさそうである。
彼は、カバについて調べる過程で「著名人の言うことだからといって、なんでも鵜呑みにしてはいけない」という教訓を得た。
 
おかげで、その後も、何か引っかかることがあると、自分で調べることを大切にするようになった。
 
知識を求める者にとって、一番大切な姿勢をマスオさんとカバに教わったことになる。
ありがとう、マスオさんとカバ。
うちの息子に素晴らしい学びを与えてくれて。
そんなわけで、マスオさんとカバには、今でも感謝しかないのである。
 
 
 
 
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2019-12-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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