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メディアグランプリ

カレーというアート


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【2月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:更谷重之(ライティング・ゼミ冬休み集中コース)
 
 
そのカレーとの出会いは、とある本屋の屋根裏部屋だった。
本屋とは、通常書籍を販売する店舗のことを言う。一見、食すカレーとは無縁の場所に思えるのだが、間違いなくスケッチブック調に仕立てられたPOPに1頁丸ごと掲げられていたのは、食すカレーだ。出会ってしまったのだから仕方ない。私は本屋でカレーを食らうことに決めたのだった。
 
 
一風変わったその本屋は、名を天狼院書店と言う。全国に6店舗展開されており、出版不況真っ盛りのこのご時世にあって、ひと際注目を集めているらしい。その理由は、本屋でありながら本を売るだけでなく、本を通じた体験を売ることをモットーに掲げているから、とのこと。だから、京都は祇園四条の一角にあるこの店舗は、本屋らしからぬ町屋カフェ調であり、屋根裏部屋と称した二階スペースでは、書籍というジャンルを超越した様々なイベントが、日々催されているようだ。私は、興味をそそられて、そのイベントの1つ「ライティングゼミ」なるものに初めて参加させて頂いた。そのゼミの最中だ。例の匂いが私の嗅覚を刺激したのは。
 
 

冬休み集中コースと題したそのゼミは、とても有意義で、且つ考えさせられるものだった。そして、一日の開催時間は10時~13時まで、休憩時間は10分ほどとややハードなものだった。神戸に住まう私としては、そこそこ朝早めに出動しなければ、開講時間に間に合わない。だが、毎日勤労と自己研鑽に励む私にとって、早起きなど朝飯前である。「もともと起床は朝飯前に行うことだ」などという無粋な指摘は、この際ご容赦願いたい。そう、何がハードかと言えば、空腹状態の胃にハードなのだ。12時も過ぎれば、出動前のそれこそ7時前後に食した朝飯など、とうに消化され尽くしている。だが、そうした開催要項は、当然のことながら事前に丁寧に案内されている。その条件を呑んだのは、他ならぬ私だ。よもや文句は言えまい。そこで、休憩時間の10分で、コンビニのサンドイッチなど軽食を取ることを考えていた。その矢先だ。例の匂いが私の空腹を刺激したのは。
 
 
本屋にあるまじき香しい薫りが、町屋の二階、厳かな勉学空間に漂う。「まさか本屋でカレーなど。きっと隣家の食事処から漂ってきているに相違ない」そう高をくくっていたところ、少し離れた本棚スペースに掲げられていたスケッチブック調のPOPが、目に飛び込んできた。「バターチキンカレー800円」間違いなく売られているのだ。本屋でカレーが。今正にオーダーされたのだ。全国2万店舗も展開される某7時11時のコンビニさんには申し訳ないが、目下の空腹を満たすツールとして、出来立てのカレーと冷蔵庫のサンドイッチでは、そもそも勝負にならない。しかし、私の食欲を駆り立てたのは、そのヴィジュアルである。「美しい」いや、ただのカレーと言っては失礼なのだが、一料理の写真に目を奪われた経験は、そう多くはない。そのPOP写真のルーは、綺麗な赤茶色をしていた。それが新鮮だった。当方、独身未婚の39歳健康優良男子であるが、カレーと言えばビーフカレー。ビーフカレーと言えば昭和の喫茶店に代表されるあの深い焦げ茶色。B級グルメ界における暗黙の了解事項として、そう決まっていたはずだ。だが写真のそれは違う。赤茶色のルー、愛らしく丸めに盛られたライス、トッピングされたパセリ。バランスの取れた色調と鮮やかなコントラストが視覚を支配する。「今日のお昼はサンドイッチ」確かにそう信じていた。なのに精神は、眼前のコントラストにもう抗うことはできない。「バターチキンカレーを食べたい」
芸術とは、鑑賞者の精神的感覚的な変動を得ることを目的とした表現物である。ウィキペディア先生は、たしかそんな事を言っていた。だとすれば、目の前のバターチキンカレー、これもアートなのではないか。否、このカレーはアートである。こうして、世俗の真理をまた一つ体得したのだった。まるでそれを祝福するかのように、柔らかいバターの香りが五臓六腑を逆なでする。私は、涙と生唾を飲み込んで、講義が終わる13時まで、食を絶つことに決めた。
 
 
講義は終わり、いよいよ対面の時が来た。「バターチキンカレーにもうすぐ会える」町屋の二階で、年の瀬に賑わう祇園界隈を眼下に望みながら、空腹に耐えて私は待ちに待った。果たして写真のアートは、現物でもアート足り得ているのか。いまだ食した記憶のないバターチキンカレーとやらは、ビーフカレーとどう違うのか。そもそも美味しいのか。「まだか」来た。その瞬間を捉えた画像が、当掲載に沿えた一枚である。「写真に偽りなし」そう言って良いであろう。いや、私が胸を張って言うことではないが。
 
 
さて、肝心の味はどうなのか? 美味しかったのか否か、天狼院さんのカレーを食したことの無い読者の中には、気になる方もいることだろう。私は言いたい。「それはご自身で確かめるべきだ」考えてもみて欲しい。食〇ログだの、ぐ〇なびだの、そもそも情報が多すぎやしないか。美味いだの不味いだの、ご丁寧にレビューまで掲載されて、一度も行ったことのない店に対して、他人の評価で事前に体験を決めつける。自分の舌に自信が無いのか。はたまた絶対に失敗したくないのか。確かに、価値観は人それぞれにあって良い。だが確実に言えることがある。
 
 
「予測された出会いに、アートは無い」
自身の足で現場に向かい、五感でアートを味わおうではないか。そうだ。「スマホを捨てよ、京都へ出よう」
ステマではありません。悪しからず。

 
 
 
 
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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 

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2019-12-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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