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地球を味わう

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:Yuriko Kato(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
みなさんは、どんな料理がお好きだろうか?
日本、フランス、イタリア、中国、韓国、インドといった国籍、あるいは醤油味や味噌味といった調味料や香辛料による風味など、料理のカテゴライズは様々だ。
では、どんなジャンルにも属さない料理があったとしたら?
何味という形容ができない料理があるとしたらどうだろう?
そして、その味が目に見えないほど小さな生命体が生み出すものだとしたら?
 
バスク語で「地球」を意味するその店は、京都の東山エリアにひっそりと佇む。
築100年を超える町家を改装した店内に入ると、赤々と薪が燃える二つの釜、広々としたキッチンでシェフ、ミクソロジスト、料理人たちが和気あいあいと準備している。キッチンをぐるりと囲むカウンターに案内され、席に着くとすぐにオーナーが屈託ない笑顔で話しかけてくれた。
「ようこそ。どこの国でも地域でもない、ここにしかない座標から僕らが考える料理をお届けします」
カウンター席から見上げる天井には、星をイメージしたペンダントランプ。中庭には、3本の紅茶の木がぽっかりと丸く空いた屋根から夜空に枝を伸ばしている。気取らない、温かいもてなし。高級レストランで味わう少しばかり緊張感を伴うラグジュアリーさや非日常ではなく、忘れがちな心の穏やかさを、日々のぬくもりを思い出させてくれるような空間。
ここから始まるのは、どこの国でも地域でもない、「地球」への旅。
 
「チュロス、マンチェゴチーズとサマートリュフ」、「馬肉のタルタル、燻製牡蠣のエマルジョンとプラムオキサリス」「季節のベリー、ブルベーリーソルベと若葉のスープ」など、メニューは食材の名前が併記されているだけ、耳慣れない食材も多く、どんな料理なのか、どんな味なのか、まったく予想がつかない。
 
それは、まるでアート作品のようだった。
「枝豆、ピスタチオとキャビア」は蓮や未草が浮く日本庭園の池泉を、「グリーンアスパラガス、パセリの黄味酢と時季の野菜」は色とりどりの草花がのどかに咲くイングリッシュガーデンを。そんなどこかで見たような風景を彷彿とさせるものもあれば、最後に出てくる「ベーコンと玉子のドーナッツ」は、コーヒー豆が敷き詰められた器にニュースペーパーの切れ端が敷かれ、その上に小さなドーナツが鎮座する、翌朝のブレイクファーストを先取りするというコンセプチュアルなものまで、目が楽しい、感性を刺激される品々。
もはや何料理か、などという問いすら浮かばない。
自然の恵みが一度分解され、組み合わされ再構築されて、器の上で生まれ変わった姿をみせている。
地球上のどこか知らない場所、見たことのない景色をみせられているような、でも心の中の何かが呼び覚まされるような、懐かしいような詩的な美しさ。
 
10品からなるコースには、料理にあわせたドリンクペアリングがつく。
「僕は、香りを繋いでいるんです」
ミクソロジストが一つ一つの料理とドリンクの説明をしてくれる。
シンプルに白・赤のワインを合わせたものもあるが、殆どがお店のオリジナルドリンクだ。
 
香りと味わい―。
すべての料理に共通していたのは、使われている食材そのものの味と香りが際立っているということ。なにかの調味料で統合されたのではない、完全に調和しているのでもない、それぞれの食材が共鳴している。食材の奥に眠る味わいが引き出されたような、芳醇さが口の中に広がる。
 
この美味しさを引き出しているのが、他でもない目に見えないほどの小さな生命体、微生物だ。
この店の料理のほとんどに、発酵が使われているのだ。
発酵は、酵母やバクテリア、カビなどの微生物により、食材のもつ分子が分解された状態をいう。例えば、デンプンはブトウ糖、タンパク質はアミノ酸の分子連鎖だが、人はそのままでは甘みやうまみを認識できないが、それを発酵させ分解させることでうまみに変換されるという。
どんな地域にも様々な微生物は存在し、伝統料理に取り入れられてきた。
その土地で収穫できる限られた食料をできるだけ長く保存するための世界共通の人類の知恵である。地球にともに暮らす微生物の力をかりて、自然の恵みを育て、熟成させる、生の営み。小さな生命体の働きを見守り、熟するのを待つ緩やかな時間が流れる。発酵に国籍はない。
 
「地球」の旅は、アートとサイエンスの魔法のような融合と食材と微生物の神秘の探検だった。
人の往来も情報もグローバル、ボーダレスの時代に、私たちはどこへでも旅が出来る。世界中の様子がインターネットでみられる。旅行にいけなくても日本には、様々な国籍の料理のレストランも沢山ある。
一方で、せわしなく流れる日常の中で、テレビを見ながら、仕事をしながら、‘食する’という行為を意識しない日々も少なくないのではないだろうか。
アートを鑑賞する時のような心が踊る時間の中で、地球の恵みを味わい尽くす。
そんな体験はいかがだろうか?
 
 
 
 
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この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
 

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2020-08-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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