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いまこの瞬間を感じ、考え、行動していく。


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いまこの瞬間を感じ、考え、行動していく。
記事:白銀肇(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
「学校が自分のなかで合わなくなってきたみたい。辞めてもいい?」
昨年の1月に、次女がこんなことを切り出してきた。
 
海外で生活したい、という憧れを持つ彼女は英文系の短大に通っていた。
しかし、学校生活を送っているなかで、彼女のなかで少しずつ違和感が芽生えていったようだった。
授業の内容、学校の在り方、人間関係……。
どうも自分とイメージしていたことと違っていたという。
そんな違和感を過ごすのであれば、その時間を稼ぐほうにシフトさせるほうがまだマシだ、という思いが募っていったらしい。
稼ぐといってもバイトとかになるのであるが、それでも自分がやりたいことはそちらのほうだ、という。
明確な自己主張だ。
 
「自分の心が本当にそう思うのであれば、その通りやるのもありやし、好きなようにやってみたら?」
本人が意を決してそう言うのであれば、こちらも無理強いはできないし、したくない。
そもそも、この場合で無理強いをするって「親のエゴやんな」と思ってしまうのだ。
「無理強い」ということは、「押しつけ」だ。
親の気持ちや、概念をそのまま子供に押しつけるのか? となってしまう。
 
さて、この次女。
中学をほぼ3年間いってない。
中学に入ったその年の夏頃から急に学校に行きたくない、と言い出した。
いわゆる「不登校」になった。
 
3年上の長女は、同じ中学を卒業し、同時に地元の高校に通い出したところでもあったから、この出来事には正直とまどった。
 
さて、どうしたものか。
 
中学に行かなくなった理由を聞いても、本人は絶対言いたくないという。
というか、たしか「言えない」と言っていたと記憶している。
 
「言えない」というのは、ちょっと尋常ではない気がしたので、これは無理くりに理由を聞き出すような状況ではないな、と感じた。
そもそも、そんな状態で無理くりに理由を聞いたところで目覚ましい解決策が果たして見つかるのか、という思いがあった。
だから、本人が言いたくない、ということをまずは尊重するようにした。
そして、このことは同時に「学校へ行きたくない」という彼女の意思を認める、ということも意味する。
 
さぁ、ここからだ。
自分のなかでいろいろと葛藤が湧きおこる。
 
親の立場としては、学校に行ってもらいたい。
でも、本人は頑として「学校に行きたくない」という。
 
でも、ここでふと思った。
 
「親の立場として学校に行ってもらいたい」、とはどういうことだ? と。
 
親の立場ってそもそも何だ?
学校に行ってもらいたい、って何でそう考える?
 
自問がつづく。
 
そして、ひとつの答えに行き着いた。
 
かなり恥ずかしい話になるが、出てきたのは、ひとことで言えば「自分の世間体」というものだった。
「ウチの子が不登校になったと見られてしまうのは果たしてどうだろうか」という感情。
これが心の奥底に張りついていた。
娘のことよりも、ウチがどう見られるか、という世間体からくる思いが根底になっていたのだ。
これはつまり、娘のことではなく、自分の体裁や立場のことしか考えていない、ということだ。
 
何ということだ! 娘のことではなく自分のことやんか!
 
何とも情けない話だ。
 
そんなことに行き着いたことから、自分の思いははっきりした。
ここは次女の意思を尊重してみよう、と。
その結果どうなるか、それはやってみなければわからない。
とにかく、流れのままに身を委ねてみる、という選択をとった。
 
そして、このような思いには、さらに拍車をかける出来事がもうひとつあった。
 
それは、当時勤めていた会社のリストラの体験だった。
この、私の立場はリストラをする側だった。
このときは、不景気でもあり、特に大企業での不祥事、リストラが多かった時期でもあった。
この体験と当時の背景は、ひとつの会社で働き抜くことが「安定」だ、という自分の概念にヒビを入れた。
 
自分の世代は、いわゆる学歴社会時代。
学校の進路指導は、大学への進学、少しでも大手の企業の就職、これが「是」であり、自らもその流れに乗って社会に出ていったことは紛れもない事実だ。
ところが、世の中ではその流れそのものに誤差が生じてきているように思える現象が起こっている。
だとしたら、娘たちの時代は、こんな思いにとらわれることが逆に危うく、それよりも、自分の気持ちを尊重して、本当に自分のしたいことをする、ということを軸に進んでいく力を養うほうが、必要なのではないだろうか、というところに行き着いた。
 
そんなことから、「どうしても学校に通わなくてはならない」というこだわりは、自分のなかから次第に薄れていき、結果、彼女は中学校の3年間をほぼ行かなかった。
 
そんななか、高校は普通に進学していった。
地元の高校ではなかったが、不登校生徒などを対象とした公立の新設校が彼女の中学卒業の年に新設され、そこに通い出した。
新しい試みの学校でもあったことからか、先生も生徒もこれからの学校生活を創り出すという雰囲気が新鮮だったのか、中学とはうってかわって高校は最終学年までちゃんと通った。
アルバイトなんかも途中からしだし、なんだかんだと楽しそうに高校生活をかなり満喫していた。
自分の生活、リズムを自分で創り出していったように思う。
 
そうして、高校卒業、短大入学、自分の思いがあって短大を辞める。
 
「自分の思うようにしたらよいよ」
そういってからからの彼女の行動は、ホンマに速かった。
翌日には学校の事務局から退学届の書類を取りにいき、手続きをサッサと済ませていった。
 
いまとなっては、自分の好きなことをしつつ、「コレ」と思う仕事先を見つけては、自分のペースで飛び込んでいろんなことにチャレンジしつつ、自分のやりたいことも探っているように見える。
それでいいと思う。
自分で今この瞬間のことを感じ、考え、行動し、自走していく。
それこそが、これからの生きる原動力になると思うから。
 
これは何も娘たちに限った話ではない。
自分たち親世代だって同じことだ、と言い聞かせている自分がいる。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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