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名前の裏側


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記事:やまさきあきこ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
私の名前は「やまさきあきこ」
同姓同名がたくさんいそうな、一般的でごく平凡な名前である。
もちろん、あきこの「こ」は「子」。昭和生まれの象徴とも言われる。そう、私は昭和50年生まれ。昭和の時代が3分の2を過ぎた頃に生まれた。
 
両親は美容師。私が生まれる前の年に二人で独立して美容室を営み始めた。
母は着付もできるため、週末は婚礼着付に出かけていた。
 
大人になって聞いた話であるが、私がまだ母のお腹の中にいる時も、母は大きなお腹を抱えて臨月ギリギリまで婚礼着付に出かけていたらしく、父は、「帯を結ぶ時にギュッと踏ん張って力を入れた瞬間、お腹から赤ちゃんがポロッと出てくるんじゃないか」と、心配でたまらなかったらしい。
 
父の心配をよそに、無事に近所の産婦人科で生まれた私は「あきこ」と名付けられた。
 
人それぞれ、自分の名前には「なぜこの名前になったのか」という由来がある。お寺のお坊さんにつけてもらった、両親や祖父母など家族が一生懸命考えた、字画の本を読んで画数の良い名を選んだ、専門の命名士に相談した、など、さまざまな名付け方がある。
 
では、私の「あきこ」という名前の由来は何か。小学校何年生の頃か忘れてしまったが、「自分の名前の由来を親に聞く」という宿題が出された。仕事を終えて帰ってきた両親に「あきこ」の由来を聞くと、父から意外な答えが返ってきた。
 
「あんたが生まれた時、ちょうどテレビでやってたドラマの主人公の女の人が“あきこ”っちゆう(と言う)名前でね、その名前にしたとよ」
 
なんと、ドラマの主人公の名前だったとは。予想外の答えに私がポカーンとしていたのか、母が必死でフォローするかのように答えた。
 
「その主人公のあきこさんって人が、美人で明るくて気立ての優しい人の役でね、そういう人に育ってほしいと思って、そのまま“あきこ”にしたとよ」
 
「へぇー。そうやったんやねぇ」
 
一応、親の願いは込められているようである。
果たして、その時のドラマの主人公のように、美人で明るくて気立ての優しい人間に育っているのか。
 
「明るい」は達成していると思う。
 
「美人」はどうだろうか。
舞台に立っていた頃、監督に「特別美人でもないし、かといってブスでもない。どこにでもいそうな顔」と言われていたので「普通」というところだろう。
 
「優しい」は自己判断が難しい。
優しいと思ってもらえる時もあれば、そうでない時もあると思うので、第三者の判断を仰ぎたい。
 
さて、名前の話には続きがある。漢字である。私の「あきこ」は「亜紀子」という漢字で付けられた。子供の頃からよく「亜希子」と間違われる。たしかに、一般的に「希」の漢字を使う「亜希子」の方が多い気がする。
 
だが、問題は「き」の漢字ではなく「あ」の漢字であることが、大人になって判明したのである。
 
ある日、母が名前の専門家に自分の名前の画数を見てもらった時のこと。ついでに私の名前の画数も見てもらったらしい。すると、こんなことを言われたそうだ。
 
「この名前は、全体的に非常に良い画数なんだけどね。ただひとつだけ、健康運だけがあまり良くないね。それ以外は全部良いんだけどね」
 
これを聞いて、母は思い当たる節がたくさんあり、驚いたようだ。私も、この話を母から聞いて、
 
「当たってるよね!」
 
と言ったほどだ。
私は子供の頃から病気が非常に多かった。
まだ赤ちゃんの頃、突然高熱を出して死にそうな目にあった(らしい)。
 
小学生の頃は、毎年太ももが左右一年交代で腫れ、どこの病院に行っても原因不明と言われた。夏休み中は6年間、歯科、耳鼻科、眼科のオンパレード。
 
余談だが、高熱を出して寝込んでいた時に、父が「栄養をつけた方がいい」とステーキ肉を買ってきたことは笑い話である。さすがに食欲がなく、お粥にしてもらった。
 
さらに、小学校・中学校時代は、毎朝のように大量の鼻血が出て、こちらも原因不明。寝ている間にも気づかないうちに鼻血が出ていて、朝起きたら、顔も首も枕も真っ赤だったこともある。
 
大人になってからも、気管支炎、肺炎、子宮ポリープ、さらには心臓病の不整脈で医者に「いつ倒れてもおかしくない状態だ」と言われ、親が病院に呼び出されたこともある。
 
そんなこんなで健康面で思い当たることが次々に出てくるので、名前の漢字が非常に気になり出し、漢字一文字ずつの意味を調べてみた。
 
すると、一文字目の「亜」で答えが出た。
「亜」というのは亜熱帯や亜寒帯などにも使われているように「二番目・次」という意味があるほか、「中国では“貴族のお墓”という意味があり、この漢字を使った名前は健康に恵まれない人が多い」とも書かれていた。「亜」を使った名前の人が全員健康に恵まれない訳ではなく「そういう人が多い」ということで、私は「亜」を使った人間の中から、ある意味「選ばれた」わけである。
 
「これはいかん(ダメだ)!」
 
ということで、命名の専門家であるT先生に相談した。先生から、
 
「人によっては、漢字も読みも全く違うものにしなければ総合して良い名前にならない人もいるんだけど、あきこさんの場合、今の読み方をそのままで、漢字を変えるだけで、申し分のない、全てが非常に良い名前になります。その漢字は「聡子」と書いて「あきこ」。「聡」は「あき」と読みます。あきこさんがこれで嫌じゃなければ、この漢字が一番オススメです。これ以上のものはない、最高のものです」
 
と言われ、私は迷わず、
 
「嫌じゃないです! それでお願いします!」
 
と答えた。
 
「これからは、“聡子”という漢字をどんどん使ってください。多くの人の目にふれるものは“聡子”にして使うといいですよ」
 
戸籍は「亜紀子」のままなので、仕事でもプライベートでも身分証明書が必要ない差し支えのないものはすべて「聡子」を使うことにした。ビジネスネームみたいなものである。
 
そのおかげか、今ではすっかり「病気の問屋」から脱出した。たまに風邪をひくことくらいはあるが、寝込むほどではない軽いものである。それも一年に一回あるかないか。まさに子供の頃から憧れだった「健康優良児」だ。
 
名前とは不思議なものである。名前の由来や漢字の意味を知ることは非常に面白いと思った。死ぬまで一生付き合っていくものなので大切にしたい。
 
ちなみに、弟の名前は「ともかず」
弟が生まれた時、俳優の三浦友和さんが大ブレイク中だったそうで。
もうお分かりであろう。そう、三浦友和さんの「ともかず」から付けられた名前だ。なんともミーハーな両親である。
 
 
 
 
 
***
 
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2020-08-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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