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おせっかいブックレビュー

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:柄澤 雅子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「この本、お勧めしたいんですけど……」
うちの会社で会員向けに発行している季刊誌のコーナー「知らないことと出会えるページ Book Review」に本のレビューを投稿するようになったのはつい1年前のことだ。季刊誌なので、まだ通算4回目の新人だ。
 
もともと自分の仕事に「文章を書くこと」は自分の業務にはなかった。会員誌の記事も、外部委託している編集部のライターの人が、取材・インタビューから記事起こしまで全てやってくれていた。
 
記事を書くのに携わるようになったのは、編集部に取材先の候補を挙げて欲しいと頼まれ、取材のポイントや会員の特長などをライターにお伝えしているうちに、会員のことを一番知っている人が取材し、文章にまとめてもらうのが一番いいんじゃないか、という成り行きからだった。
 
確かにやってみると、取材時の質問ポイントも、関心ポイントもライターに依頼するより的確だし、何より、記事を書いてくれた、紹介してくれた、と喜んでもらえて、取材以降、お互いの信頼感が増し、コミュニケーションが取りやすくなった。
 
それが最近では、そんな記事のほかに、別に頼まれたわけでもないのに、全く関係ないコーナーのブックレビューに毎回1冊の本を紹介し、原稿まで書くことになったのだ。
 
文字数は200文字前後。はじめてみてわかったのは、200文字でお勧めポイントをまとめることがこんなに難しいとは! ということだった。
 
まずは個人の興味と関心からランダムに何冊かピックアップして、普通に読む。
 
一読目でこれはいい! となると、ブックレビュー用の候補にしておく。
 
次に、編集会議までにその候補から1冊を絞り込む。絞り込みの条件はただ一つ、「ねえねえ、これ読んでみて!」。
 
ただ、おすすめの文体までが「ねえねえ、これ読んでみて!」調では逆効果だということが程なくしてわかった。あくまでも冷静に、客観的に、それでいておすすめの情熱を文章の裏側に込めて。
 
二読目は、200文字に込めるキーワードを抜き出すため。心に引っかかっていくキーワードをつなげ、言葉として紡いでいく。
 
三読目はおさらい。自分が書いたブックレビューの内容と照らし合わせて、本当にお勧めしたいことが書かれているかをもう一度見直す。
 
次号のために書いた私のおすすめブックレビューがこれだ。
 
2020年6月30日にまたここで会おう − 瀧本哲史伝説の東大講義 −
瀧本 哲史(星海社)
 
2012年、この本のタイトルの言葉で講義を締めくくった瀧本さんは、2019年に47歳の若さで病のため亡くなりました。誰かカリスマが現れて時代を変えてくれるのではなく、自分が仲間を探し同じ目的でつながっていくと社会はきっと変わる、と会場の20代の若者たちに檄を飛ばし、「日本の未来に期待したい」ために、8年後にここで会う時までの「宿題」を投げかけます。今、コロナと戦い新しい未来に向かう私たちに瀧本さんから軽やかで熱いメッセージがたくさん詰まっています。「よき航海を(bon voyage)」の声とともに。
 
今年の新型コロナウイルスの世界の混沌をまるで見据えていた予言書のようでもあり、さらに、天国から今の日本をやさしく、けれども熱い眼差しで見つめてくれているような瀧本さんのこの本を多くの人に読んで欲しいと心から思ったからだ。
 
もちろん、このブックレビューの報酬は1円もない。
 
私がブックレビューを書くのは、近所のお見合いおばさんと似ている。
 
別に勧めても何の得もないのに、「私の知り合いの娘さんに、とっても素敵な方がいてね。小さい時から知っているコウイチ君になんか合うんじゃないかって思って。別に顔がいいとか、家柄がいいとかじゃないのよ。話をしてみて、価値観っていうの?そういうおばさんの勘だけなのよ。よかったら会ってみない?」
 
そうやって勧めてセッティングしたお見合いが、いつしか「実は結婚することになりまして……」という報告を聞く時、まさにこのおせっかいおばさんの喜びとなる。ましてや「実は子どもができまして……」の報告に至っては、何にも替えがたいものだろう。
 
数年前、たまたま取材の帰りにはじめて訪問した会員の店舗に、私がブックレビューでおすすめした本が待合の場所に置いてあった。「これ、会員誌で見ていいなあと思って。」冷静を装いながらも、私の心は、嬉しさでぴょんぴょん跳ね上がっていた。
 
ただ、この時はまだ本を編集部に勧めただけで自分で原稿は書いていなかった。
 
私のブックレビューを読んだ人が、お勧めしたその本を読み、その人の考えや行動に何かしらの種がまかれ、その種から新しい芽が出るようになったら……。
 
おせっかいブックレビューはそれを醍醐味に、これからも続けていく。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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