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英会話は、まず聞くことから


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記事:難波美和(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「どうやって英語話せるようになったの?」
私がこれまで何度も聞かれた質問です。
「えーと、まずは海外ドラマを英語で見たり、CNNニュースを聞いたりして……」などと答え始めると、かなりの確率でこう遮られます。
「いやいや、リスニングじゃなくて、スピーキングの方」。
 
言いたいことはわかります。
「英語を話せるようになりたいんだよね〜」という声はよく聞くのに対し、「英語を聞けるようになりたいんだよね〜」という人にはあまり会ったことがありません。英会話教室でも、生徒ひとりひとりが長く話せる「マンツーマン」がウリになっていたりします。
 
でも、ちょっと待ってください。
「話す」ことを「ボールを蹴ること」にたとえると、「聞く」ことは「パスを受ける」ことに似ています。
「聞く」練習を疎かにして「話す」練習ばかり積もうとすることは、パスを受け取れないサッカープレイヤーが、ボールを蹴る練習だけを繰り返すようなものです。
まずは「その場の話題」というパスを受け止められなければ、どれだけ「ペラペラ」話せるようになっても、話すチャンス自体が巡ってきません。
相手の言っていることがわかれば、たどたどしくても何かしらの反応は返せるでしょう。思いをすべて伝えられなくても、その積極性は伝わるだろうし、親切な誰かが言葉を補ってくれて、ボキャブラリーがひとつ増えるかもしれない。
でも、会話のボールがいまどこを転がっているのか読めなければ、黙って突っ立っているしかなくなるのです。
 
22歳でアメリカの大学の門をくぐったとき、私はかなり英語力に自信がありました。1年間欠かさず練習したシャドーイングの成果はてきめんで、発音も褒められることが多かったし、留学前に受けたTOEICのスコアも800点以上。
フロリダ育ちのルームメイトともすぐに打ち解けました。彼女の英語が明瞭で聞き取りやすかったのもあり、二人で話している分には特に問題も感じませんでした。
その自信が最初に崩れたのは、彼女の親友であるエジプト人が部屋に顔を出した時。ルームメイトとその親友はともに2年生で、生活している寮も同じだったこともあり、夏季休暇から戻ってくるなり私たちの部屋に遊びにきたのです。
早速ルームメイトから紹介を受け、3人でおしゃべりを始めたものの、私はすぐに会話についていけなくなりました。
一対一の会話では、ある程度自分で話題をコントロールできます。相手が話す内容は、直前の自分の話と関係あるはずなので推測しやすい上、たとえわからなくても簡単に聞き返せます。
しかし3人になると話は別。「夏休み中のできごとを話しているんだな」というところまではわかったものの、途中で相手の言うことが理解できずつまずいてしまった私。そんな私を置いて、もう一人が会話をどんどん先に進めてしまいます。
さらに、アメリカ英語の教材などを通じて英語を学んできた私にとって、外国語訛りの洗礼を受けるのはそれが初めて。聞き慣れない発音に戸惑っているうちに、話の筋を見失って迷子になってしまったのです。
その子は頻繁に私たちの部屋に遊びにきたので、私も数ヶ月かけてその発音に慣れていきました。しかしその後も私の前には、「ロシア語訛り」に「中国語訛り」と、新たな強敵が次々とあらわれるのでした。
じゃあ「アメリカ英語」ならば問題なく聞き取れたのかというと、そんなことはありません。留学前に「アナウンサー風の明瞭な話し方」にはある程度耳を慣らしていた私ですが、実際に渡米してみると想定外の変化球パスに翻弄されっぱなし。「テキサス訛り」に「ニューヨーク訛り」、それから「若者の話し方」と、一口に「アメリカ英語」といっても色んなバリエーションがあることを思い知らされました。
授業中も、先生たちはハッキリ明瞭に話す人が多かったのですが、学生同士のディスカッションが曲者で。学生の英語は、早口だったり、若者特有のぼそぼそとしたイントネーションだったりと、まぁ理解できないことが多い、多い。
何か発言したくても、ひょっとしたら私が言いたいことは他の誰かが先に言ってしまったかも知れない。何なら、その意見を踏まえてディスカッションが先に進んでしまっているかも知れない。その流れをぶったぎるような発言をしてしまったら恥ずかしい……。そう思って言葉をのみこむこともしばしばでした。
 
「話すのが苦手」なら、「カタコトの英語で話す」だけですむけれど、「聞く」ことに失敗したら「トンチンカンな受け答え」をしてしまうことになる。
なまじ「きれいな発音でペラペラ話せ」るならなおさら「語学力の問題」とは受け取ってもらえず、「論理的に考えられない人なのかな?」「消極的な人なのかな?」などと判断されてしまいかねない。
「聞く力」を伴わない「話す力」はかえって足を引っ張ることもあるのだと、身をもって痛感した留学生活でした。
 
一年間のアメリカ生活を終えて帰国し、再度TOEICを受けた私は、拍子抜けしました。リスニングの試験では、同時にしゃべり出す人もいない、強い訛りもない、質問内容と関係ないことを延々と話し続ける人もいない。登場人物が一人残らず、聞かれたことに端的に的確に答えている……。
「うわー、普段の会話もこんなに親切だったらいいのに!」
そう思いながら回答を提出し、返ってきたスコアは満点でした。
じゃあもうリスニングは万全かというと、とんでもない。その後外資系企業に就職してからも、インド英語が理解できず、できるだけ会議を避けてチャットに誘導しようとしてみたり、質問の意図を理解せずに答えてしまってやんわりと訂正されてしまったり。
 
英語と付き合い続けて学んだのは、自分のレベルにあわせて調節できる「スピーキング」より、相手にあわせなければいけない「リスニング」の方がずっと、習得に時間がかかるということ。
「スピーキング」は文法が間違っていようが日本語訛りがあろうが通用するけれど、「リスニング」は試験で満点をとるレベルでも苦労するということ。
カリフォルニア英語に慣れてもテキサス訛りが、イギリス英語に慣れてもアイルランド訛りやオーストラリア訛りが、中国訛りに慣れてもインド訛りが、ロシア語訛りに慣れてもイタリア語訛りやスペイン語訛りが、待っているということ。
いま「英語が話せるようになりたい」と思っている方にぜひすすめたいのは、とにかく聞くことです。しかも、できるだけ色々な英語を。「アメリカ英語信仰」や「ネイティブ信仰」は捨て、「スペイン語英語」に「インド英語」、それから「中国語英語」を聞き取る練習をしてみてください。実践のフィールドに出た際に、そのスキルは間違いなく役に立つはずです。
 
 
 
 
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2020-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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