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電材屋はスマートフォンに成り得るのか


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:森本 雄大(ライティング・ゼミ 日曜コース)
 
 
「ねじ1本でもお持ちします!」
僕の働く電材業界では、そんな言葉は日常茶飯事だ。
コンセント、電線、配管から照明まで。工事に使う材料を販売する専門商社。
そこで働く営業マンを人は電材屋と呼ぶ。
 
お客様は工事のプロである電気職人様で、昔ながらの職人気質な方も多い。
FAX、電話など未だにアナログな側面も多いのが現状だ。
 
現代はネットやスマートフォンが発展し、人々は大概のサービスを簡単に享受できるようになった。
しかし、そんな中でも、電材屋はお客様に選ばれ続けている。
そう、電材屋の働きは、スマホにも匹敵する便利さを誇るのだ。
 
早速説明したいところだが……
おっと、今日もまた仕事が始まってしまった。
多忙で申し訳ないが、電材屋の一日を少し覗いてもらうことにしよう。
 
人が入り乱れる事務所で、早速電話が鳴り響いた。
「ありがとうございます!森本です!」
お客様からの電話だ。
「こうねじで止めて、こんな風に使うやつ。大至急ね。よろしく」
正直言うと何を言っているのかわからない。脳内に「?」が浮かぶ。
しかし、立ち止まってはいられない。ここで探す速さも、腕の見せ所なのだ。
すかさずカタログを広げ、メーカーと連絡を取り、お客様にレスポンス。
その結果として注文を獲得した。
ベテラン電材屋になれば、電話口で即答できることもあり、ネットよりも早い。
さながら音声検索機能のようだ。あいまい検索もばっちりな高性能モデルである。
一つ注文をさばき、外回りへ向かう。
 
10分後、また電話は止まらない。
「ケーブル1束、明日現場持ってきてくれるか」
「かしこまりました!何時がよろしいですか?」
お客様の要望に、柔軟に対応できる配送体制の強さ。これも電材屋の強みだ。
UverEatsやAmazonに勝るとも劣らない。
これを人対人のやりとりでやってのけるのが、僕たち電材屋の強みであり、存在意義でもある。
その他にも、お客様に合わせた価格の調整、支払いのリマインダー機能など、便利な要素が満載だ。お客様にとっては至れり尽くせり、便利な存在であることだろう。
しかし、それだけで本当に、今後もネットに代わって電材屋は選ばれ続けるのか。
ネットより電材屋が便利だから、選ばれているのだろうか。
僕はそうではないと思っている。
本当の意味で、電材屋が選ばれ続ける理由。
それはアナログ面の良さがあってこそではないかと思う。
 
人が本当に必要なものを買いたいとき、どこから買いたいと思うだろう。
値段が同じなら、それはやはり信頼している先から買いたいはずだ。
直接客先に足を運び、顔を合わせて話をし、お互いを知る。
一見雑に思える問合せも、信頼の裏返しだと言える。それらに対応し、信頼を勝ち得ていくことで電材屋のビジネスモデルは成り立っているのだ。
 
現代では、ネットサービスの向上で、「好きな時に、好きなものを、好きな場所で」
手に入れることは容易になった。情報の検索も、スマホ入力で一発だ。
人々は兼ねてから進化を待ち望み、技術者はそれを叶えようと奮闘したのだと思う。
現代の当たり前は、まさしく努力の結晶なのだろう。
 
ある意味で、そのようなお客様の要望を「アナログな形で」叶えようとしたのが電材屋だ。技術革新が不可能だった時代からそれを求められ、たどり着いた答えだった。
対面販売の良さ、人対人のつながり。そういったものが希薄になっている現代で、異彩を放つ存在かもしれない。
ライバルは競合他社だけではなく、これからの時代でもあるという状況に置かれ、勝ち続けられるか不安も否めない。
しかし、世間が忘れつつある「人として大切なこと」に関して一石を投じることができる存在なのではないだろうか。
 
便利だが希薄な世の中と、多少不便でも暖かさに溢れた世の中。どちらが良いだろう。
今日もカタログをめくりながら、僕はふと考える。
おっとまた電話だ。
思考は途切れ、仕事に戻らなくてはいけなくなってしまった。
カタログをめくり、お客様に電話をかける。
 
人として大切なことを見失ってはいけない。
この業界で働いていると、そんな気持ちが湧いてくる。
僕らが目指すべきは、「iphoneよりも高性能な、アナログスマートフォン」なのだ。
そんな難題を抱えながら、今日もまた奔走する。
 
皆さんがもし、デジタル社会に寂しさや疑問を感じたら、ふと道路を見渡してみてほしい。
よく見ると、小汚いトラックに乗った電材屋が走り回っているのが見えるはずだ。
ライバルはスマホなんて無謀かもしれない。しかし、大切なことを忘れないための、心のつかえになっていることも確かだ。
そう思うと、今日もまた走れるような気がしてきた。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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