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メディアグランプリ

信じられるだろうか、10日間玄米しか食べられないなんて


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ちゃんなな(ライティング・ゼミ5月開講通信限定コース)
 
 
ご存知だろうか。
世界中のあらゆる食べ物を、きっと今よりもっと美味しく食べられるようになる方法があることを。
輸入食品店にしかないような高価な調味料も、通信販売のカタログで見るような調理器具もいらない。
おうちに炊飯器があれば大丈夫。
そこにスーパーで玄米を買ってきて、毎日炊いて食べるのだ。
 
ただし、とても大切な条件がある。
その玄米を食べている間、
 
あなたは絶対に他の物を食べてはいけない。
 
2年前。オフィスで近くの席の同僚がフラフラやってきてこう言う。
「おい、ちゃんなな、いい健康法がある。七号食やるぞ」
ここで彼のことはKと呼ぶことにする。
Kは会社の創業メンバーの一人。私の所属していた事業部を担当する役員だ。つまりとても偉い人なのだが、なぜかあだ名で呼ばれている。
しかもあだ名を呼び捨てで。
 
Kは不思議なことばかり言うから、役員なのに全く威厳がない。
髭も髪も長く伸ばしているので、仙人のような風貌だ。
ビジネスマンというよりはマスコットキャラクターとして君臨していた。
そのKが唐突に勧めてくる健康法だ。怪しい。
「七号食はね、いろいろ体から悪いものが抜けるデトックスってやつです」
すごく怪しい。
ネバネバした黒い液体とか飲まされるんじゃないのか。
 
「どうやってやるんですか?」
「10日間玄米だけ食べる」
「え、玄米だけ!?」
Kは私のリアクションが嬉しいのかニヤニヤしている。
「そう、玄米だけ。もちろんお酒もコーヒーもダメ。でも玄米ならいくら食べてもいい」
「いや、それはちょっと過酷すぎませんか?やりません」
「ダメでーす。OさんもTさんもやるって言ってるから、ちゃんななもやりなさい」
無茶苦茶である。
 
でも私の食生活はお世辞にも健康的とは言えない。自炊はほとんどできてないし、コーヒーとお酒は毎日欠かさない。
Kは変な人だが健康そのものだ。中年男性とは思えないシュッとしたボディラインだし、休日に社員と登山に行くと20代男子がついていけないペースでホイホイ登るらしい。
そのKが言うなら、やってもいい気がしてきた。
誰でも2キロ程度は痩せるらしいし、玄米だけ食べるなら食費はかなり浮く。
私同様、Kに強引に巻き込まれた5名の同僚たちと「やれやれ大変なことになりましたね」と励まし合いながら頑張ることにした。
(※体調に不安のある方、持病のある方は無理に行わないでください)
 
Kから伝授された七号食のスケジュールはこうだ。
1~10日目:玄米だけを食べる。
11日目:玄米と出汁・具なしの味噌汁
12~14日目:玄米と味噌汁。少しずつ野菜の具やおかずを増やす
現代人の生活とは思えない。せめてもの救いとして、少量の胡麻塩と漬物は食べてもよい。水と白湯はもちろんOK。ノンカフェインのお茶も飲んで良いとのこと。
 
玄米にも種類があるそうだが、K曰く普通に通販で買えるものを白米と同じように(水分量だけ調整して)炊けば良いらしい。
とりあえず、玄米5キロをAmazonで調達。レンジ加熱で食べられる玄米ご飯パックも近所のスーパーで売られていることを確認。
 
未体験の食事制限に不安をぬぐいきれない参加者たちにKは繰り返す。
「肝心なことは、とにかく玄米だけ食べること。ネットを見たらいろいろ書いてあると思うけど、気にせんでよろしい」
こうして私たちの2週間の苦行は幕を開けた。
 
開始直後の感覚は「意外といける」である。
玄米にはえぐみがあるが、胡麻塩を振ればそれほど気にならない。
朝にたっぷり1.5合炊いて、朝食として茶碗一杯分食べる。大きめのタッパーにぎっしり詰め、会社でランチとして持参。残った茶碗一杯分を夕食としていただく。
 
ところがこれを3回ほど繰り返したあたりから、皆様子がおかしくなってくる。
私の場合、コーヒーが禁止はかなりこたえた。カフェインの効果はもちろん、気分転換の手段を断たれてしまうと毎日とても退屈だった。
一緒に参加していた横の席のOさんはもっと大きな敵と戦っていた。断れない会食への出席である。聞けば他の人たちが美味しそうにしゃぶしゃぶを食べる中、ひたすらコーン茶(ノンカフェイン)を飲んで気を紛らわしていたらしい。
生き地獄とは、まさしくこのことだ。
5日目が終了する。待ちに待った週末だ。
ところが全然うれしくないのだ。
誰とどこに出かけても食べられるのは持参した玄米おにぎりだけだから。
街には誘惑が多すぎる。
土曜日、「ならば巣篭もりだ」と腹を決めるも、映画を見てもゲームをしても漫画や小説を読んでも、とにかく食事のシーンはついてまわる。
「ラーメン、食べたい……」「フライドポテト食べたい……」
それならビジネス書を、と思い家に積んであったものを開くとなぜかその章にカップ焼きそばのエピソードが出てくるではないか。
脳と口の中が完全に、あのソースの香りに支配される。とんでもない量の唾液。
ベッドの上で少し暴れて、その日はすぐ寝た。
日曜日はリラックス効果の強いカモミールティー(ノンカフェイン)を飲んで、やっぱりほとんど寝て過ごした。
それからも幾多の飯テロを乗り越えて、なんとか10日間完走する頃の私たちは干からびていた。
オフィスで顔を合わせると、
「塩おにぎり食べたいですねぇ」
「素うどんがいいなぁ」
などと、つつましやかな願望が口をついて出る。
玄米以外の食べ物から離れて10日も経つと、味の濃い物を食べたい気持ちは薄れてくる。
普段通りの日常に戻るのが嬉しい一方、恐ろしくもあった。
 
下山前の修行僧もこうだったんだろうか。神妙な気持ちで迎えた11日目の朝。
ようやく解禁された回復食の味噌汁(出汁・具なし)。
台所で鍋から一口味見する。
「味噌汁、うま〜〜〜〜!」
思わず叫んでしまった。
三十年近く生きていて、ただ味噌をお湯に溶いたものがこんなに美味しいなんて、知らなかった!
 
それからしばらくは、毎日が大発見だった。
醤油をかけずに頬張る豆腐の豆の風味。
ドレッシングを何もつけないトマトの旨味。
コンビニで買った、ただの茹で卵一つさえ輝いて見えた。
飲み屋でつまみを頼もうなら、毎回大袈裟なリアクション。
「シメサバ、うま〜!」
「お漬物最高!!!」
友人に変な顔をされた。
この状況で複雑な味覚のエスニック料理を食べていたら、泡を吹いて気絶していたに違いない。
 
現代の日本は飽食の時代だ。
生まれてから毎日あれこれたくさん食べてきたけれど、味付けや調理方法以前の食材の美味しさと向き合う機会があっただろうか。
しかも体重はちゃんと2キロ落ちて、身体も軽くなった。
Kの勧めを怪しげに思ったことを、申し訳なく思うほどの効果である。
 
……ここまで読みながら、あなたも思っただろう。
「ちょっと怪しい」と。
もちろん無理強いはしない。相当の覚悟が必要だ。
一度始めたら最後、あなたはもう10日間玄米しか食べられない。
だがその長く苦しい旅路の先に極楽がある。
世界中の食べ物を美味しく食べられる、無上の幸せが知りたい人はぜひチャレンジしてみてほしい。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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