メディアグランプリ

「嫌われる勇気」よりも必要な「勇気」がある


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記事:高柳翔子(ライティング・ゼミ5月開講通信限定コース)
 
 
「嫌われる勇気」という本で取り上げられた事でアドラー心理学が話題になった。今も前ほどのブームはないが、その人気と需要は非常に高い。
アドラー心理学の提唱者であるアルフレッド・アドラー氏は、凄腕の殺し屋だ。トラウマのせいにして進むことが出来ずにいた人々をアドラー心理学という武器を用いて「抹殺」していった。私もその一人。
 
私がアドラー心理学を知ったのは、「嫌われる勇気」ではなくて、私が好きで読んでいたゆうきゆう先生原作の漫画「マンガでわかる心療内科」シリーズでアドラー心理学をテーマに取り上げていた事がきっかけだった。
漫画を読み始めるといきなり「トラウマなんて存在しない!」と出てきた。それは「トラウマなど色々な理由のせいにして行動しないのはやめよう。目的を達成するためにどうすればいいのかを考えよう」と言う事だったのだが、トラウマを否定された事に対して私は最初憤っていた。
私には一部の教師から人間性を否定されるような怒られ方をしてきたり、いじめに遭ったりしてきたと言う事等、たくさんのトラウマがあった。過去それに苦しんで悩んでイライラしたり、悲しくなったりして荒む日々を送っていた。特にそれがひどかったのは勤めていた会社をリストラされてから新しい仕事が決まるまでの半年間だ。面接で落ち続けて仕事が決まらず、「自分はなんて不幸な人間なんだろう」と過去のトラウマに引きずられて暗くなっていた。
ところが、新しい仕事を見つけて働き始めてしばらくすると過去のトラウマの事は一切考えなくなっていた。過去の事よりも自分が今いる世界でどうやってやっていくかを考えなければいけなかったからだ。そして、私は仕事が決まらないのを過去のトラウマのせいにして現実逃避していただけにすぎなかったと気づいた。
そう思ったら過去のトラウマの痛みはだいぶ小さくなった。心の傷があるから何かをしないというのはもうやめようと受け入れたのだ。
アドラー心理学を学んで考えを改めた事で、私の印象がだいぶ変わったと友人や当時付き合っていた恋人からも言われた。アドラー心理学を学んでよかったと思った。
 
しかし、アドラー心理学をある程度知った今も私は「嫌われる勇気」をまだ読んでいない。アドラー心理学の神髄を味わうなら「嫌われる勇気」を読むべきだと周りの人たちからは言われた。アドラー心理学に関する本の中で一番売れているベストセラー本。読んで人生が変わったと述べる人も多いからそう言われるのは仕方ないのだと思う。
確かに私にはアドラー心理学で学んだはずなのに、クリア出来ていなかったテーマが一つある。それを理解する為にも読んでおくべきなのかもしれないとも思う。
 
私が出来ていないテーマというのは「課題の分離」だ。
アドラー心理学で「自分の課題と他人の課題は別物。その人の人生はその人が生きていくべき物である。他人の人生を必要以上に抱え込んではいけない」と書いてあった。
実はこれ、私がとても苦手な事だ。自分の周りの人間が何かで躓いていたりするとつい心配になって、あれこれと口出ししたくなってしまったりその相手を必要以上に擁護したくなったりしてしまうのだ。
つい先日。私が大好きな芸人が「何人かの芸人と仮コンビを組んで、調子の良い感じだった人を誘ってM-1エントリーしようとしたけど、断られました。また新しい人を探します」と更新していた。その前にはYouTuberになろうとして人を誘ったら断られて計画が白紙になったり、付き合っていた彼女に振られて家を追い出されていたのを知っていた。
この彼がコンビを解散した2017年の秋から、私は彼の事をずっと心配している。彼が組んでいたコンビの事は結成当初からずっと応援していた。コンビのネタが面白かったのは勿論、ボケ役だった彼のいつも明るく元気。そして秋田育ちの純朴で素直なところが好きだった。彼にも私の存在は認知されていて、解散した時には「最初から応援してくれたのに、こんな結果になってごめんなさい。でも今まで応援してくれて本当にありがとうございます」という言葉をくれた。どうして彼はこんなに不幸な目にばかり合うんだろう。彼はとても優しくて芸人としても面白い人なのに! と本気で怒り、悲しくなった。
それ以外にも派遣先の会社の労働環境が自分には合わないのに腹をたてて「法律違反だ」と怒っては仕事を辞めている友人に「もう少し妥協しなきゃダメだよ」と口を出したくなったり、家族との諍いが絶えない友人を見ながら「この子を傷つけるなんて、ひどい親だ。こんな奴親の資格がない」などと友人の親を叩きのめしてやりたくなる時がある。
だけど私が出来ることは彼らの行末を見守る事だけ。彼らが抱えている課題は自分でどうやって解決するかを考えて、自分で乗り換えるべき課題なのだ。
これまで私は自分の幸せだけを追求するのが手一杯だった。アドラー心理学との出会いがきっかけで自分の道を探し出す事ができた。だけどそろそろ私は他人にも目を向けて、他人を幸せにする為に動くことを考えなければいけない。
友人たちも推しの芸人も、みんな私が生きていくのに無くてはならない存在だ。私は彼らのおかげで幸せに生きられている。だから彼らが不幸でいるのを見ていられない。助けてあげたい。幸せにしてあげたいと願ってしまうのだ。
 
だけど、私が理解できていない事を身に着けるのに「嫌われる勇気」を読む事は本当に役に立つのだろうか。今の時点での私の答えは「NO」だ。
私は自分が幸せになる為に自分の道を歩いている。これからはそれに加えて友人の幸せを願って、友人を静かに見守るという新たな実践に取り組まなければならない。私が今必要なのは「自分が嫌われる勇気」ではなくて「大切な人を突き放す勇気」だから。
 
あるいはいつか、時が来て「嫌われる勇気」という本を手に取る時が来るかもしれない。その日が来るまで、お願いだから「嫌われる勇気」を押し付けて干渉してくるのを待ってくれないだろうか。
 
 
 
 
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2020-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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