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メディアグランプリ

死を想うということ


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記事:宇野好美(ライティング・ゼミ5月開講通信限定コース)
 
 
「お願いだから、もう殺してください」
と、そんな言葉を何度いわれただろうか。
 
私は15年ほど医療に従事してきた。
人の生死に関わって仕事をした中で人生について考える貴重な経験をさせてもらえた。
 
冒頭は末期のがんになった患者さんが毎日のように訴えてきた言葉である。
手術も抗がん剤も可能な限り試していたがどれも効果はなく、日に日に衰弱していった。
そんな状態での言葉だった。
抗がん剤は、医師の説明のもと家族と本人の希望で行われていた。
抗がん剤を投与したらがんが治るという保証はどこにも無い。
この患者さんにしたら、効果がない事への不信感や、徐々に衰弱していく中で死に対する恐怖はとても大きかったと思う。
 
抗がん剤をやめるという選択肢もあるのだが、やめるというのは生きられる可能性を無くしてしまうことだと言う意見もある。
もしかしたら、次に使う薬が劇的に効くのではないかという希望もあるのだ。
その可能性は決してゼロではない。
そばで見ていて、自分だったらどうだろうかとよく考える。
状況によっても変わると思うのだが、自分であれば、何度か試した上で効き目が薄いのなら最期の時間は穏やかに過ごしたいとそんなふうにも思うのだ。
抗がん剤で全ての体力を奪われる前にやり残したことがあればそれをしたいと思う。
何例も症例を見ているのだが、たしかに抗がん剤で寛解に持っていけることもある。
しかし、治すことができないこともはるかに多いのだ。
例えば、医療で90%位の確率と言われた場合、ほぼ大丈夫という意味ではない。約10%は確実に別の結果が出るという意味なので、大丈夫であるということではないと医師より説明されることが多い。
どういう選択をするのかは、それぞれの死生観によるし、命の問題なので、本人が出した結論であれば医療者はそれをサポートする。
ただ、末期の患者さんへの抗癌剤は見ていてとても苦しそうでいたたまれないのだ。
その人にとっては、抗癌剤が生きる希望である場合もあるので、やめる選択肢についても安易には言えない。
 
最近、合法でない安楽死による事件が報道されていた。
安楽死に関する記事を目にする度に、このことを思い出すのだ。
スイスでは安楽死は合法で認められているが日本では認められていない。
死に対する恐怖や痛み、苦しみ、自分らしくなくなることに耐えられないということで、安楽死を求める人もいるし、あらゆることを尽くした上でその選択肢がその人にとって最良という場合もあると理解している。
 
ただ、死を望む人について考える時にもう一つ思い出すことがある。
学生の頃に、「死にたい」と訴える人が本当に死を望んではいないのだということを教わったのだ。確か精神科の授業で担当の先生が言っていたように記憶している。
 
どういうことかというと、
自分のかかえている悩みや問題、不安が全て取り除かれれば「生きたい」のである。
「死にたい」というのは、本当は「生きたい」なのである。
苦しいから助けてほしいというメッセージなのである。
だから、どうしたら死にたい思えることの原因を取り除いたり、緩和できたりするのかを一緒に考える。そんな視点を忘れないでほしいと、その先生が言っていた。
 
日本の病院では、「死にたい」ということに手を貸すことは自殺幇助という犯罪になるので希望が叶えられることはない。
医療スタッフとして、毎日のケアの中で生きていることが嬉しいような、穏やかであるようなそんな気持ちになることができように関わることが理想である。
 
しかし、理想と現実は一致しないことのほうが多い。
抗癌剤などの治療を行う場合、一般の病院で行うのである。
大抵、スタッフは足りていないので忙しい。
緩和ケア専門の医療施設でもないと患者さん一人と関われる時間が圧倒的に少ないという現状なのである。
 
苦しみを取り除いてあげたいが、ゆっくりと関わっている時間がほとんど持てなのである。体の方のケアはできても精神的なケアをするまでの時間が十分にもてない。
結局一番大切な部分が家族任せになってしまうケースも多かった。
サポート体制が不十分なのだ。
 
安楽死に関して注目されている。
現状の心のケアが十分にできない中ではどうだろうか?
 
冒頭の患者さんの言葉は、本当に殺してほしいという意味ではなかったと思う。
治療がうまくいかないことへの絶望感から救って欲しくてあの言葉が出たのではないだろうか。
あの患者さんへの精神的ケアは十分にはできてはいなかったと思う。
もっと、時間が取れたら違っていたかもしれないが、冒頭の言葉を言う頃には錯乱といっても過言ではない状態だったのだ。
 
死にたいという言葉自体は受け止めても、それは本当に死を望んでいるのだろうかと考える必要はないだろうか。
他の選択肢や精神的なケア、サポート体制、それが充実しないことには判断はできないのではないかと思う。
間近な死が避けられないものだとしたら、少しでも受け止めることができるような精神的な介入も必要ではないだろうか。
 
自分や家族も同じような状況になる可能性もあるのだ。
決して人ごとではないのだ。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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