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旅という非日常がくれる2つの効能


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:アキ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
旅を、渇望している。
 
ステイホームとオンライン化。2020年、生活や仕事のスタイルが、これほどまでに急激に、そして世界規模で変わってしまうなんて、誰が想像しただろう。
打ち合わせはオンライン会議システムへ。買い物はネットショッピングへ。映画は動画配信サービスへ。これまで「働き方改革」と声高に叫ばれてもなかなか変わらなかった仕事様式でさえも、一気に変革を迫られた。今や、財布とスマホとマスクは、家を出る前にチェックする持ち物3点セットである。
 
そんな折の夏季休暇シーズン。いつもであれば、さて今年はどこへ行こうかと旅の目的地をワクワク妄想し、大抵、「またやってしまった……」と、直前に飛行機やら宿やら必要な荷物やらをバタバタと手配する。しかし今年はそれができない。向かいの席の後輩からは「ストリートビューで十分じゃないですか」なんて慰め半分、茶化し半分で言われる。いやいや違う。違うのだ。
 
私が旅に出る理由は2つある。
ひとつは、五感の開放だ。
 
それを存分に味わうには、一人旅がおすすめである。私の一人旅デビューは、おそらく高校3年生の時だ。第一志望校のオープンキャンパスという大義名分をふりかざし、ついでに他の志望校も見学してこようと、九州から東京へ、そして関西を経由して九州に戻ってくるという旅程を組んだ。東京でも関西でも親戚の家に泊まらせてもらう、という条件だったので厳密に言うと完全なる一人旅ではないかもしれないが、高揚感を胸に、荷物をバッグにぱんぱんに詰め込んで電車に乗った。今振り返ると、初めて青春18きっぷを使ったのが、まさにこの18歳の夏だった。
 
JR時刻表とにらめっこして組み立てた乗り換え計画を握りしめて乗り継いだ鈍行列車。一日中移動していると、お客さんたちの会話のアクセントが地域ごとに変わっていくのが面白い。関東から関西に移動する時には、馴染みのある西側のアクセントの要素が少しずつ現れてくるのが嬉しかった。各地で訪れた大学キャンパスでは、芝生の匂いやトイレの照明など、なんだか細かい記憶まである。一人だったからこそ、移動時間でさえ五感すべてが敏感で、自分を取り巻く空間が持つ情報を全身で受け取っていた。日々繰り返している日常生活では、それだけ盛大に五感を開放して、空間を味わうことはあまりないのではなかろうか。その体験が感覚として未だに鮮明に残っているせいか、私は未だにぷらりと一人で旅に出るのが好きである。
 
そして、旅に出る理由がもうひとつあることに気づいたのは、そんな初めての一人旅から更に何年も経ったあとだった。
 
大学時代、私は1年間だけイギリスへ交換留学していた。勉強の密度はしんどいなんてものではなく必死な日々だったが、休暇となると話は別だ。安い交通費で旅ができるうちにと、格安チケットを駆使して色々と旅をした。そんなある日、どこかの旅先から帰ってきた、ある夜のことだ。旅先すら忘れてしまったが、ロンドンの空港に着陸して、タラップを歩く時のその匂い、そして長距離バスに乗っていたら見えてきた見慣れた町のレンガ造りの建物とオレンジ色の街灯の風景、そんな色々に何故かほっとして、安心感を感じたのだ。「あぁ、帰ってきた」と。
 
何年も住み続けた町に久しぶりに戻ってきたわけではない。今でも大好きな町で、実は留学が終わってからも何度も足を運んでいる場所ではあるが、しばらく旅して戻ってきたその時に「帰ってきた」という感覚を覚えた自分自身にびっくりした。そして、気づいた。旅の非日常の刺激と緊張感が、自分をけっこう疲れさせていたことに。
 
知らない土地の、知らない道。初めて食べる料理や味付け。一期一会の人との会話。そこには、うっとりするような曲線美に目を奪われる素晴らしい建物や、今まで食べたことのなかった美味しい食材、初めて出会う価値観や文化など、たくさんの新しい出会いと刺激がある。しかし同時に、荷物には常に気を張っていたり、油を多用した料理が続いて少し胃が疲れてきたり、初対面の人との会話のために常に頭をフル回転させていたりと、非日常の連続に、どうやらある種のストレスも同時に感じていたようだ。だからこそ、旅から帰ってくる時に、楽しかったたくさんの思い出と共に、日常に戻ってきたという安心感の存在も同時に感じたのだろう。
 
そう、私にとって旅とは、五感を開放して非日常からたくさんの刺激を受ける機会であると共に、いつもの自分の生活も存外悪いものじゃないぞ、と感じることができる機会でもあるのだ。少しばかり日常に疲れたり、日々のストレスを感じている時などは、リゾートでゆっくりする逃避行も良いが、逆サイドに振り切って、ちょっと刺激を受けに行ってみる旅もなかなか良いものだ。
 
さて、ステイホームの日々を脱することができたら、次はどんな非日常の空間に飛び立とうか。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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