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あなたの顔にも目は2つある


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:石田ゆかり(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
休日の遅く起きた朝に鏡を見ながら伸びきった眉毛を整える。いくらカットしてもまたすぐに生えてくるこの毛に、いい加減毛の方でも学習して生えることをやめるという選択肢はないものかと不思議に思う。
 
わたしが初めてメイクをしたのは大学に入学した頃。ほんの1ヶ月前まで高校生だったわたしの顔は
「中学生でも通じるよ」
と友達からからかわれるような童顔だった。大人っぽい女性に憧れて大学生になってすぐに始めたメイクはそれは下手くそなもので、卒業生として高校の部活の練習に参加したときに顧問の先生から
「お前の眉毛、濃すぎないか?」
と言われて真っ赤な顔になった、というのがわたしのトラウマだ。
 
あの頃から毎朝のように自分の顔を見ては描いてきた眉毛。うまく描けなかった日には出かけるのをやめようとさえ思うし、その時最高に好きな人の前に立っても恥ずかしくて相手の顔を直視できないこともあった。
たかが眉毛。だけど、こんな眉毛では心から可愛くなんて笑えない。
 
そもそも人より出っ張った眉骨が大嫌いなのだ。薄く小さな唇も女らしさに欠ける。
写真を撮っても目元はくっきりと影になるしこの骨張った骨格では男前すぎて、もう少し可愛げのある優しい顔に生まれたかったなと思う。
そんなわたしがメイクの仕事を始めて沢山の人の顔に触れるにつれ、人の顔の作りは本当に十人十色で全くう違うことにとても驚いた。
「え?こんなに眉毛が生えない人なんているの?」
とか
「鼻筋がこんなに尖っていたら少しぶつけてもすぐ折れてしまいそう」
という具合に何から何まで新鮮であり衝撃だった。
自分の顔でしかメイクをしたことがなかったわたしが、全く作りの違う人様の顔にどんなふうにメイクをしていいのかはじめは本当に難しかった。
それに加えてメイクレッスンをするようになってからは、みんなが自分の顔を一通り嫌いになっているということにも驚いた。誰もが羨むような素材を持っていても、本人にとってはそれがコンプレクスだと悩んでいることも多いのだ。
無い物ねだりとはよく言うけれど、顔に関してはどうやらそれは漢字のドリル的なものなんだと思い至った。
小さな頃に経験したことがある人も多いと思うが漢字の練習で延々と同じ漢字を書き続けていくと、途中から
「あれ? この漢字こんなカタチしてた?」
となんだか歪に見えてくる現象。
 
「ゲシュタルト崩壊」というのだそうだ。
全体性を持ったまとまりのある構造から全体性が失われてしまうことで、個々の構成にバラバラに切り離して認識し直されてしまう現象と言われている。
要するに全体で一つの意味をなしている形が作りのパーツに意識が向くため、一つの塊として認識できなくなってしまうのだそうだ。
これはまさしくメイクにも当てはまる現象だな、と思う。
 
眉毛をどう描こう? アイラインをどうひこう? とパーツごとの自分の特徴を処理していくうちに、自分という全体の顔がもたらす印象がわからなくなってしまうのだ。
そのままメイクを続ければ、そりゃあチグハグな顔が完成するのは避けられるはずもない。
 
もう何が正しくて何がふさわしいのか、自分ってどんな顔なのかを見失った多くの女性が私のもとへ駆け込んでくる。わたしと同じように20歳くらいの時におぼろげに集めたメイクの知識のまま(もうとっくに自分はあれから20年も経って土台が変わっているというのに!)はまらなくなったパズルを抱えてどうしていいのかわからなくなってしまっているのだ。
 
まず私は必ずこう伝える。
「自分の顔は漢字の練習帳とおなじなの」
ものごとは細部まで見すぎると全体が見えなくなるのだ。
ちゃんとメイクをするというと下地から各パーツのメイクまで全てのテクニックを駆使しなければならないと思っている。
「いったんシンプルに最小限に考えてみて」
「5分しかなかったら。最低限どこをメイクしたい?
だってあなたの顔には目も口も鼻も、そして眉毛や睫毛も書かなくてももともと付いているでしょう?」
そうやって最低限のシンプルに帰っていく時、メイクがその人の持つ輝きを上手に引き出していく瞬間を体験してもらうのだ。お休みの日にはファンデーションなんて塗らなくてもほんの数ミリの線で劇的に綺麗な輝きが生まれる瞬間があることを。漢字の練習もメイクアップも、真剣に筆圧マックスでやればいいってもんじゃあない。
書き直した鉛筆の筆圧があちこちに残ったりしていたら最悪なのだから、力を抜いてやりすぎないことも大切なのだ。
 
映画のターザンを見て一番お気に入りのシーンがある。
他のゴリラの兄弟たちと明らかに容姿が違うことに悩むターザンに、ゴリラの育てのお母さんが心を痛めながらもターザンに語りかけるシーンだ。
 
「あなたには目が二つ
鼻が一つ
口も一つ
わたしとおんなじね」
 
本当だ。みんなおなじように作られている。眉毛があって目が二つ。鼻に唇。そんな風にシンプルに顔を見れば。自分の顔の魅力も浮かび上がってくるのではないかと思っている。
 
 
 
 
***
 
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2020-09-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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