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メディアグランプリ

書くことは生きることである


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:谷津智里(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
私にはALS(筋委縮性側索硬化症)の友人がいる。
ALSとは、運動をつかさどる神経が障害を受け、徐々に全身の筋肉が動かなくなり、最終的には呼吸も停止して死に至る原因不明の難病である。
 
私が彼女に出会ったのは3年前、東日本大震災の被災地を撮ったドキュメンタリー映画の上映会だった。
その映画の監督の出身地が、私が現在住んでいるのと同じ地域だったので、縁あって、各地での上映会をお手伝いした。その後新作ができて、地元でお披露目の上映会をするというので手伝いに行ったら、映画のプロデューサーとしてそこにいたのが彼女だった。
 
彼女はその時杖を持っていて、歩くのが少し不自由そうだった。
映画の上映中に、この映画のプロデューサーをやることになったいきさつを聴いたりしていろいろと話をしているうち身体の話にもなり、手足がだんだん動かなくなる難病なのだという。そんな重たい話を、彼女はニコニコと話していて、「そのうち死んじゃいますね」とサラリと言った。
彼女は震災の直後から各地に精力的にボランティアとして出かけており、地元の池袋で被災地のことを紹介するような活動もしていた。発病したのは、そんなさなかのことだったという。
 
私が話した彼女はとても活き活きとしていて笑顔が素敵だった。
自分も市民活動が好きで、震災の支援にもさまざまに関わり、被災地域の人びとを丁寧に記録するその映画監督の姿勢にもとても共感していたので、同じ場所に関わることになった彼女に初対面ながら親近感を覚えていた。病気のことよりも、そういう人に出会えたことが単純に嬉しかったのだけれど、別れた後に病気のことはやっぱりズシンと心を引っ張り、「ぜひともまた彼女に会わなくては」と強く思った。
 
それから何度お会いしたのかちゃんと数えてはいないけれど、私が東京に行った時や、彼女が監督と一緒に地元に来た時など、お会いして、いろいろなお話をした。
彼女の病気の進行は比較的ゆっくりらしく、私はそのことをそんなに気にせず、会える度、前向きで行動的な彼女に共感し、笑い合い、楽しい時間を過ごさせてもらうことができている。
 
それでも、病気はゆっくりと進行していたらしい。
その感覚は、本人が一番、というより、本人にしか、リアリティを持って理解することはできないのかもしれない。
そう思うと、本当に悲しいのだけれど。
 
今年の8月になって、彼女がブログを始めた。
それまでFacebookで時折、自分に見える景色を発信してくれていたのだけれど、もうSNSはやめて、ブログに書き綴ることにしたとのことだった。
残された時間をよりよく生きるために、書くことに希望を繋ごうとした、と彼女は言う。
私は彼女の言葉をこれからそこで読めることを嬉しいと思った。「大切に読みます」と私は彼女に言った。
以来、私が読み切れなくなるような頻度で、彼女のグログは更新されている。
そこには、彼女の力いっぱいの生が、綴られている。
 
一方、私は7月から、天狼院書店の「ライティング・ゼミ」を受講していた。
曲がりなりにも書くことや編集することでお金をいただいている私だけれど、夫がいなくても食べていけるかと言われると心許ないレベルだし、公的財源の仕事ばかりなので、市場でも通用する術を身につけたいと思ってのことだった。
 
慣れない自分ネタ、WEB向け記事を毎週書かねばならなくなり、最初だいぶ苦戦したが、それでも「やっぱり書くのは楽しいな」と実感できたし、とにもかくにも「毎週書く」という環境を与えられたことが一番の福音だと感じていた。人間、得意なことであっても、他者からの期待や締め切りなしにコンスタントに行動し続けることは、なかなか難しいものである。
 
そうして1週間に1度、2000字の記事を書くだけでも充分に「書いている」感じがしていた私なのに、彼女のブログが始まって、訪れる度、その熱量に圧倒される。
そこには、打算も、小手先の表現も承認欲求も微塵も無い、生の文章が溢れている。
刺激される、などと安易には言えない。
素晴らしい、と褒めるのもまた違う。
そこにあるのは、彼女という、今、生きているひとりの人間の姿そのものだから。
ただ、ああ、彼女が今日もここに、間違いなく生きていると、その実感を得ることが、私に力をくれる気がした。
彼女が今日、生きている。私も今日、生きている。
 
ライティング・ゼミはプロを育てるためのゼミだから、無料のコンテンツが溢れる今の世の中でどうすれば人に読んでもらえる文章を書けるのか、その技術を再現性高く身につけるための講座設計がされていた。その伝達方法の一つとして、ある日の講義で「書くことはサービスである」という言葉が伝えられた。それは当然のことだと思うし、「読まれる文章」とはどんなものか知ることが私がライティング・ゼミに参加した動機だったし、そこに疑問を持ちはしなかった。ただ、教えてもらったことを自分のライティングに取り入れようと日々試みる一方で、文章ってそれだけではないよな、と思う自分もいた。読む人にきちんと届く文章を書くための技術や方法論はもちろん必要だし有効。でも最終的に人の心を動かすのは、そこではないよな、と。
 
10月中旬、ライティング・ゼミの最終講で、こんな話があった。
「ここで教えたことを、忘れたい時には忘れていい。時には全部忘れて、自分の好きなように文章を書いてみてほしい」。
その言葉で、全ての答え合わせができた気がした。
 
私は今日も文章を書いている。
彼女も今日も文章を書いている。
目的はそれぞれ、自分のためでも、読んでくれるかもしれない多くの誰かのためでも、あるいはたった一人の誰かのためでもいい。
書くことは、生きることだ。
だから私は、これからも文章を書いていようと思うし、彼女の文章を読んでいたいと思う。
生きているから、書き続けることができる。
生きているから、誰かに何かを伝えることができる。
 
彼女のブログは日々更新されている。
タイトルは、「書くこと。生きること。」という。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2020-10-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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